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オフコース全曲分析みたいなもの(?) 別れの情景(1)

楽曲について

個人的インプレッションみたいなもの

この曲を『SELECTION 1973-78』で初めて聴いた時は、非常に綺麗な曲だなと思いましたが、同時にサビ部分でのハンパない違和感を感じました。

当時は音楽的知識もほとんど無く、転調という言葉は知っていたものの、それまでに聴いたことのある転調とは全く異質で、まるで別の曲になってしまったかのような変動にしばし戸惑ったものです。

後にギターを始め、楽譜を買って見たときに、一瞬でお手上げとなりました。今でもちゃんと弾ける自信はありません。

そういう面倒な部分を抜きにした純粋な感想としては、掛け値なしの名曲だと思います。

(1)となっているので当然(2)以降があるのですが、その(2)となっているのが先行シングルだった『もう歌は作れない』です。この曲ももちろん良い曲なのですが、正直言ってちゃんと纏まり過ぎていて「毒」が無く、シングルとしてはインパクトに欠ける感じです。

その点では『別れの情景(1)』の方がサビのメロディもキャッチーで、一度聴いたら忘れないインパクトがあると思います。

ここからは完全な想像ですが、おそらくメンバーは(1)の方をシングルとして推していたのではと。ですがおそらくレコード会社サイドはこの難解な曲よりも、わかりやすい(2)を推して、結局押し切られたのではと思われます。

それゆえにその後、ライブアルバムでも両方演奏されたにも関わらず(1)だけが収録されたり、ベスト盤でもシングルだった(2)を差し置いて(1)が収録されたりと、数奇な運命の2曲になってしまいました…

まあ妄想は置いといて、それだけ良い曲だということで、ここは強引に締めようと思いますw

基本スペックみたいなもの

アルバム1974年5月5日リリース
『この道をゆけば/オフ・コース・ラウンド 2』A面5曲目に収録
『秋ゆく街で/オフ・コース・ライブ・イン・コンサート』B面5曲目に収録(ライブバージョン)
『SELECTION 1973-78』A面7曲目に収録

作者クレジットみたいなもの

小田和正/作詞・作曲・編曲・ストリングス編曲

※初出となる『この道をゆけば/オフ・コース・ラウンド 2』では、2人でアレンジを詰める時間が取れなかったこともあって、編曲は作曲者自身が行なったということです。

参加ミュージシャンみたいなもの

小田和正  Lead Vocal, Chorus, Acoustic Piano
鈴木康博  Vocal, Chorus
大村憲治  Electlic Guitar
高水健司  Electric Bass
村上秀一  Drums

※クレジットは『この道をゆけば/オフ・コース・ラウンド 2』の裏ジャケットにあるトラックシートより抜粋。鈴木はボーカル、コーラスのみで、バックトラックの演奏には参加していません。

曲の全体構成みたいなもの

エレキギターソロのイントロフェイドイン(Cm) → Aメロ1(Cに転調) → A'メロ1 → サビ1(B♭mに転調) → 間奏 → A'メロ2(Cに転調) → サビ2(B♭mに転調) → サビのリフレイン → サビの伴奏を繰り返しながらフェイドアウト

イントロはストリングスだけをバックにした、エレキギターソロがフェイドインしてくるという趣向です。

アウトロのフェイドアウト部分は、サビの伴奏を繰り返しつつ、新規のボーカル「〜ひとりにしてひとりに」やギターソロが入りながらフェイドアウトしていきます。

リズムみたいなもの

テンポはBPM=80ぐらい。最初は8分音符中心のゆったりした印象ですが、中盤から16部音符を絡めてスピード感をアップ、サビへの盛り上がりに繋いでいます。

調みたいなもの

キーはイントロ部分はCマイナーまたはE♭メジャー、歌に入るところでCメジャーに転調します。ここはイントロがCマイナーだとすれば、同主調なのでさほど無理はありません。イントロやサビは長調か短調か定義しにくいコード進行ですが、おそらく短調と解釈した方がすんなり理解できる感じです。

簡単なキーになってひと安心、と思ったらサビでかなり強引にB♭マイナーまたはD♭メジャーに転調します。このキーはフラットが5つも付く、なかなか演奏難度高めのキーで、前後のCメジャーともかなり関係性が遠い、というか強いて言うなら半音上のキーということになります。

同じメロディを繰り返す中で半音上がるならよくありますが、サビで全く新規のメロディがいきなり半音上げからスタート、と言うのはあまり例を見ません。

間奏が終わってCメジャーに戻る時も、半音キーを落とすという、あまり見かけない系統の転調なので、なかなかに強引に繋いでいる感じがします。

歌詞みたいなもの

ある意味小田らしい、優しい言葉を並べつつも相手を一方的に「振って」しまう歌詞ですw

「互い」に気持ちが離れてしまったと言いつつも、「こんなに疲れるなんて」とか「安らぎが欲しい」とか、なんだかんだでもう相手に見切りをつけている感じで、半ば一方的に嫌っている節も見えます。

その一方で出会った頃は良かった、また「始めから出来るなら」とか言ってはいますが、ぶっちゃけ言い訳っぽい感じが、そこかしこに滲み出ています。

でもそれで良いのです!小田の歌詞はこうでなくちゃとも思います。未練タラタラなものより、クールな感じが小田和正、ひいてはオフコースの曲だと思います。

とは言え、言葉選びについてはさすがと言う気がします。特にサビの「〜季節はめぐり色あせた日々よ」と言うフレーズは耳に残り、この曲を大きく印象付けています。

各パート

トラックシート

01. El.Guit(ケン坊)
02. Bass(高水)
03. B.D.(ポンタ)
04. B.G.Voices
05. Dr.Snare
06. Vocal solo(和正)
07. Dr.(上)
08. B.G.Voices
09. B.G.Voices
10. Vocal solo(和正)
11. El.Guit solo(ケン坊)
12. El.Guit solo(ケン坊)
13. Strings
14. Strings
15. Piano(和正)
16. Piano(和正)
※和正=小田和正/ケン坊=大村憲治/高水=高水健司/ポンタ=村上秀一

なお7トラック目の「Dr.(上)」というのはドラムの上モノ(うわもの)の意味かと。主にハイハット、ライド、クラッシュなどのシンバル系を指すことが多いです。この曲の場合、他のトラックで独立しているのはバスドラとスネアのみなので、タム系も含まれているかと思われます。

リードボーカル(小田和正)

基本的に特に加工の入っていない、ナチュラルな感じの柔らかいボーカルです。好みは分かれると思いますが、小田のボーカルについては、私は初期の柔らかい感じが好みです。

Aメロの「〜始めからできるなら」のあたりはダブリング処理っぽいですが、ここのボーカルはサビの頭フレーズと被っています。もしかするとあとで重ねたのかもしれません。

コーラス(小田和正/鈴木康博)

1番AメロとA’メロの繋ぎ部分に入っているスキャットと、2番A’メロの「〜さようなら」の追っかけならぬ先取りフレーズ以外は、ほぼボーカルへのハーモニーパートになっています。

ここでのハーモニーは下に重ねたボイシングになっていて、リードボーカルと連動せずに上下します。そのため一音ごとにインターバルが変わって、複雑に響きが変動します。

一番下のパートはボーカルの最高音「〜季節はめぐり」の「つ」の部分で、リードボーカルのオクターブ下になります。そのためパート数以上に厚みのあるコーラスに聴こえます。

アコースティックピアノ(小田和正)

ギターとストリングスのイントロが終わり、転調するあたりから入ってきて、Aメロ前半部分まで単独で歌の伴奏になります。

このピアノは左チャンネルに入っていますが、歌が入って冒頭の3小節だけ、なぜか右チャンネルにもピアノが重なっていて、4小節目の頭で不自然に切れて、その後出てきません。

おそらくこれはAメロの冒頭は情緒的なアルペジオになっているのですが、他のパートが入らない中ではリズムが弱すぎると言うことで、補強のために重ねたのかもです。

エレクトリックギター(大村憲治)

リードギターはイントロからオクターブ奏法で、サビのフレーズ(キーは違いますが)を演奏しています。音質は細め固めで、歪みはさほど強くない感じかと。

そのあとはセンターチャンネルで、かなり自由にフレーズを奏で、間奏では短いながらも味のあるソロを弾いています。

アウトロでは再びオクターブ奏法で、なかなかに印象的なリフを入れています。

サイドギターは右チャンネルで、カッティング中心のコードプレイ。ストイックに弾いているように見せかけて、カッティングの長さを変えて見たり、こっそりオカズを入れてみたりとさりげなく遊んでいます。

エレクトリックベース(高水健司)

この曲のリズム変化はAメロ前半は静、後半は動、サビは中という感じで、ドラムとベースのコンビネーションで形作られています。ベース、ドラム共にAメロ後半の「〜こんなに疲れるなんて」のあと、リズムが変化する部分から入ります。

Aメロ後半のベースはけっこう音数の多いプレイで、リズム変化後のスピード感を強調しています。A’メロに入ると音数は控えめ、後半でまた細かく動き、サビでは若干落ち着く感じです。

2番のA’メロからサビへの繋ぎはかなり派手に動いていて、そのままサビに傾れ込んで、細かい動きのままフェイドアウトになります。

ドラムス(村上秀一)

ベース同様、Aメロ後半のリズムが変化する部分から入ります。ここではバスドラが細かい動きで入っていて、スピード感を強調しています。

1番のサビではリズムキープが16分刻みのライドシンバル、アクセントがハイハットという、ちょっと変則的な組み合わせでプレイしています。

間奏からはアクセントはリムショットになり、2番サビでもリムショットになっているので、1番サビだけ静か目の効果を狙ったと思われます。

その他

ストリングスはイントロから、ギターのバックとして入ってきますが、ここのストリングスは軽くフェイズシフト効果がかかっているように聞こえます。

A’メロ部分では短く控えめに入り、サビでは全面に入っているようです。ただサビはかなり音量控えめな上、主旋律と同じ譜割りのようなので、集中して聴いても、かろうじて断片的に聴き取れるかどうか程度です。

歌が終わると音量が上がり、サビの主旋律を奏でます。ただ主旋律を奏でているだけですが、分厚いコーラスのあとなので、かえって情緒的に聞こえます。

別バージョン

『秋ゆく街で』ライブバージョン(1974年10月26日・中野サンプラザ)

小田和正  Lead Vocal
鈴木康博  Vocal
大村憲治  Electlic Guitar
羽田健太郎 Acoustic Piano
森理    Electric Bass
村上秀一  Drums
(演奏者クレジットをもとに推定)

基本はスタジオ版準拠ですが、間奏が若干短くなっています。バックはライブ映えを狙ってか、だいぶ派手なプレイになっていて、ドラムもサビのアクセントはスネア、ギターもフィルインをガンガン入れています。

ですが何より遊んでるのはピアノで、1番Aメロまではおとなしいのですが、A’’メロ以降はアドリブ入れまくりで「荒ぶるハネケン」の様相ですw

ライブにも関わらずフェイドアウトしていますが、セットリストを見ると、この後に『もう歌は作れない』が演奏されていたようなので、おそらくメドレー的に繋がれていて、切りどころが無かったので、やむを得ずかと推測しています。

非公式ライブバージョン(1974年5月7日・日本青年館)

これは1974年5月7日、サンプラザより前の音源ですね。2人だけで演奏しているバージョンです。私が「お手上げ」と言ったものを見事に演奏していますw

イントロのオクターブ奏法も、アコギでしっかり演奏していて、さすがとしか言いようがありません。

締めみたいなもの

これでやっと『SELECTION 1973-78』のA面が終わりました…当初目論見より遥かに労力を使う感じで、ぶっちゃけ挫けそうです…まあ自分で始めたことですので、ペースは落ちると思いますが、なんとか区切りの良いとこまでは続けようかと。

こんなグダグダではありますが、よろしかったら今後もお付き合いいただけると嬉しいです。

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