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【1周年】ボツ原稿

先々週、この1年間でウケのよかった記事を挙げたので、今週は、反対にボツになった原稿のベスト3を記しましょう。一種の「水子供養」のようですが、ボツといってもただの未完、この先、修正や改稿の甲斐があれば陽の目を見る可能性はあります。

作者にとって重要なのは、実は公に作品化された記事よりも懐胎中のアイデア草稿だったりします。ただし、この扱いは非常にナーバスで、懐胎したまま長く放っておくと自家中毒に襲われます。だからといって、ボツとして完全に捨て去るのは忍びない。このバランスをうまくとるために、一定期間を置いて自己言及 (ボツ原稿をそれとメタ認識) するのは、経験上&精神衛生上とても有効なのだろう、と思います。


ボツ原稿ベスト3


その1「VDGG 20」

ぼくが note を始めるとき、まず「自作プレイリスト解説」を書こう、と思い立ったそのいちばんの動機は VDGG です。ぼくのプログレ四天王よりも、ことテキスト化して描くとなると、VDGG あるいは Peter Hammill ほど魅惑的なアーティストはいません。それほど音楽性が文学的であるのは言わずもがな、その歌詞/世界観も実に奥深く、内省的で、物書きの創作意欲をくすぐるのですね。しかし、これが「ミイラ取りのミイラ」。

まあ、小難しい話は措くとして、幾度となくこの一年「VDGG 20」に挑みましたが、まだ脱稿には程遠く、それどころか下書原稿が12000文字を超えてなお増え続けています。理由は主に三つ。まず、VDGG の活動区分が非常に細かい点。78年の解散までに限っても、それこそクリムゾン以上に細分化され、しかも各々が簡単にやり過ごせないため、紙数を削ることができないのです。次に、VDGG の活動がロック史全般とはズレている点。彼らがいかに無頓着だったか、唯我独尊だったか。普通ならロック史に含めて語れるようなブームなりシーンなりが、VDGGにはいちいち断りが必要なのです。そして最後にして最大の理由、それはもちろん Peter Hammill の歌詞に触れざるをえないからですね。

有名な「Still Life」の歌詞を紹介するだけで、英語、対訳、合わせると簡単に800文字を超えます。それなら歌詞を割愛するか、いや、それでは元も子もない、この繰り返しで見えない解決策。最近のアーティストなら YouTube 動画に対訳つきの音源がありますが、50年前のVDGGの動画はどんどん少なくなっています。というより、ほぼ絶滅危惧種の運命、かえって記事を完成させなければ、といった焦りに鞭打たれます。


その2「ぼくの歴代歌姫」

これはサブ企画から派生した記事。「GBに聴く曲 5選」「USに聴く曲 5選」など、歌唱力のある女性ヴォーカルをあれこれ考えるうちに、ぼくの人生で出会った歌姫/Divaを全員召喚するような記事を書こう、と思ったのがそもそもの間違いですね。Janis Joplin、Joni Mitchell、あたりの60年代から始めて「ロック史に輝く名曲」みたいにまるっと年代別に進めたのですが、途中ジャンルの概念が混ざって収集がつかなくなっています。歌が巧い、となるとジャズを無視するわけにはいかず、そこにワールドミュージックがクロスオーバーして、もう選考基準が無効化まっしぐら。

評論の基本に関わることですが、畢竟、好きなアーティストの好きたる所以は「好きだから」に尽きます。まあ、それだけではただの告白に過ぎないので、一応の、仮初の、理由というか、万人が納得できる説明というか、そういった選考基準が必要なのですね。優れた評論は、必ず反対意見を提示しつつ、それを止揚するだけの論拠 (=選考基準)を示すもの。で、ちょっと考えれば分かりますが、「歌が巧い」基準って、簡単なようでメチャクチャ難しいのですよ。「好き」を抜きにして、例えば Diana Krall と Lila Downs のどちらが巧いか、ぼくには判定不能です。もはや、ジャンルも年代も無差別の総合格闘技みたい。したがって、この草稿はボツ確定……。むしろネタ帳として今後のソースになれば……。


その3「名無のジュリアン」

最後が、イギリスの留学記事です。ジュリアンというのは、ホストファミリーのファーストネームで、滞在中いちばん世話になった恩人。ただ、ちょっとした事件があり、これはミステリー仕立ての記事にできそう、と取り掛かったところ、途中、あれこれおもいでが押し寄せてきてボリューム超過になっています。パート3に入っても収まりそうになく、正味ここからまとめるのは無理だろう、と思っています。とはいえ、プロットには未練たっぷりなので、いつかはその要点を活かして改稿するつもり。残りの贅肉部分は、スピンオフ形式で小出しにすればいいでしょう。過去にアップした「ズルレイのピラミッド」「1983年の英国ライブ」も、言わばそういった産物です。イギリス留学ネタは、ひとまずストックとして貯めておきますね。

さて、ボツ原稿にはボツなりの良さがあり、反面教師として役立てることも可能です。それらを取り込んだうえで、次年度からスタイルを少し変更しよう、と考えています。以下、腹案のマイナーチェンジ骨子です。変わらぬ御贔屓、引き続きよろしくお願いします。

マイナーチェンジ骨子

最初のご報告、note のマガジン機能をアウトプット専用で始めています。お馴染みの「プレイリスト解説」「XXに聴く曲 5選」「その他の終活雑記」をそれぞれ三種類のマガジンに分けているので、気に入ったカテゴリーのみをフォローしたい方々には、是非ご活用いただければ、と思います。個人的には、ヘッダー写真が気に入っています (覗いてください)。ずっと憧れていたのでちょっと嬉しいかも、あざーす。

それに伴い、給水ポイントで行ってきたリファレンス管理を止めます。リファレンスといっても、中身は Spotify の自作プレイリストの紐づけ。この 1年で分かったことのひとつが、記事は読んでくれてもプレイリストまで聴くことはない。note に貼るプレイリストはせいぜいが紹介用で、それ以上でも以下でもないのですね。ぼく個人で管理すればいいだけの話なので、もし「あの曲はどの記事?」とか「あのプレイリストはどこに貼ってある?」とか質問があれば、その都度コメント欄でお訊きいただければ、と思います。充分それで事足りるでしょう。

もっとも重要なのは、記事の文字数についての変更です。これまでのぼくのプロパー記事は、概ね4000~5000文字が平均。分かり易い四章立ての構成ですから、一章につき1000文字という単位で書いてきたわけです。今後「プレイリスト解説」に関しては、これを思いきって半分にするつもりです。これまではオールタイム・ベストを基本としてきたので、どうしても紙数が多くなりました。対象アーティストを網羅的に書きたい、という欲望が優っていました。しかし、今後は 1記事=1テーマ、もしくは 1記事=1イシュー、に絞って書きます。マックスでも2500文字前後。

プロパー記事を現行の半分 (2000〜2500文字) にすることで、「その他の終活雑記」に付けていたイントロ・タグも、必然的に不要になるでしょう。なので、今後は章立てのある目次つき記事、文字数でいうと4000〜6000文字ぐらいのボリュームのあるものに限って、イントロ・タグを施します。読み応えのあるドッシリした内容の記事も、これまでどおり投稿する気は満々ですよ。ただ、ちょっと頻度は落ちるかもしれません。

それから、「プレイリスト解説」のラストに付けていたアルバム・ベスト5あれも卒業します。今後は質的にオールタイムのパースペクティブでは扱わないので、全作品から5枚を選ぶのは土台、無理な話です。それに、比較的あたらしいバンドは、5枚もアルバムをリリースすることなく解散/活動停止というパターンも多いですから。なにより、あのアルバム採点、ぼく的にはものすごいプレッシャーだったのです。自分のなかではきちんと整合性をとったつもりですが、はっきり言ってもう限界でしたね (同じ俎板ではこれ以上の料理は不可能です)。

以上が、ざっと浮かぶマイナーチェンジの内容です。なんだ、大して変わらないじゃん、と思っていただけるなら、こちらとしては気が楽です。なるほど大勢には影響がないかもしれませんが、底流部分ではけっこうなバトルが繰り広げられそうで……。ええ、note を続けるかどうかの……。

先々週も軽く触れたように、もし note の更新が滞るようなことになれば、そのときは静かに退場します。ずっと守ってきた週 1ペースの投稿も、残念ながらお約束できないかもしれません。あるいは、3本立てのローテーションにも偏りが出て、例えば4回連続「XXに聴く曲5選」ばかりになる、ってことも起こり得るでしょう。現時点で下書ストックが20本ぐらいあるので、おそらく半年は大丈夫だ (現行ペースを保てる) と思いますが。

それでも最後まで諦めず、なんとか継続するために精一杯がんばるつもりでいます。寛大なるお付き合い、どうぞよろしくお願いします。


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