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LIGHT&DISHES ラボ・ディナー 会vol.5「本質を考えオリジナルの光を届ける」レポート

2月13日(火)に〈LIGHT & DISHES Lab. ラボディナー会 Vol.5〉を開催しました。この事業は、月に1度さまざまな分野で活躍するゲストスピーカーを迎え、共に食卓を囲みながらそれぞれの世界観を学び合う会です。
今回は「本質を考えオリジナルの光を届ける」をテーマに、
アンビエンテック代表の久野義憲さんをお迎えしました。

水中照明で市場を開拓し、そしてさらにインテリア向けの照明に着手した理由


久野さんはカメラに関わる仕事から、水中撮影向けに開発した照明のブランド「RGBlue」を1999年に立ち上げ、アンビエンテックの母体となるエー・オー・アイジャパンを設立します。市場は確かにあったものの、「水中照明器具のマーケットは、ダイバー、または水中での撮影を目的にしたメディアに限られ決して大きくはない。この技術(防水、リチウムイオンバッテリー、LED制御)をほかに活かせないか」と考え、ライフスタイル向けの照明をつくろうという思いに辿り着きました。カメラ業界を経験したことから、家電カテゴリーだと商品のライフサイクルが短く、使い捨てのようなサイクルになり好ましくないと考え、長く使ってもらえることを目指したインテリア向けの照明ブランド、アンビエンテックを創設します。 


世界中を市場に見定め活動していく

久野さんは初めて訪れたミラノサローネで、大きな衝撃を受けたことがその後の転機となっていきます。そこには自分がほしいもの、好きなものを作りビジネスにしている人たちが多くいたことに驚くのです。自分が作りたいと思うものが、年間数千個ぐらいでも成り立つマーケットであればビジネスは可能だということを久野さんは考えました。海外のほうが自分が求める方向に近い人が多くいる印象も感じたとも言います

ポータブル照明の技術と照明市場について


「スマートフォンの登場で照明も変わると思った」と久野さんは言います。
カメラ業界と水中照明の経験から、リチウムイオン電池でLEDを制御する技術はすでに持っている。当時の国内の照明業界では、バッテリー電源で機能する照明が無いことも市場を見出せたポイントだと思ったそうです。さらに商品のデザインは、世界で活躍するデザイナーたちに依頼するという選択をしていきます。イタリアを拠点にする照明ブランドたちを見て、デザインは認知の高い巨匠デザイナーたちのものが、名作としてずっと愛され続けていることも影響にあると言います。2015年から毎年ミラノで精力的に発表を続けていき、少しずつアンビエンテック製品の評価が高まっていくのを直に感じていきます。それが、2023年正式開催されたミラノサローネ国際家具見本市/国際照明見本市(エウロルーチェ)に出展するというところに繋がっていったのです。


 海外市場と日本との温度・反応・マーケットの違い 


展示会などにおいて、海外と日本とでは反応が真逆であると久野さんは言います。今では大人気製品となったTURN(ターン)に対し日本では「どうやって使うのか?」「いくらなのか?」ということに視点がいきがちだと。ミラノやパリの展示会では、見る人自身が手にとって使い方を探り、それぞれの答えを見つけていくそうです。また海外では製品に対して反応と評価が直接伝わってくるのだと。日本では売れたフォーマットをフォローし、ユーザーもそこに追随し、オリジナルが重要視されない傾向を感じるそうです。一方海外では誰がはじめたものなのか?そして唯一無二であることが重要視され、明らかな違いがそこにあると言います。

アンビエンテックブランドの目指す方向は


「まずグローバルブランドになること」と久野さんは強く言います。手にした製品が、その人のライフスタイル、生き方にも良い影響を与えられる、そういう感覚を共有できるブランドでありたいと言います。照明だけど”照明器具”ではない、オブジェのような美しさを持ちながら持ち運べる、ポータブルライトならではの存在感を目指したいと。アンビエンテックの姿勢に共感してもらえる方々に、オリジナルの光を届けていきたいと言います。

編集後記


久野さんは、初めて会った2017年からこれまで印象が全く変わりません。いつも冷静に時代に流されることなく自分が目指す未来をブレず持っています。もちろん最新の技術、デザインに対して当然のように敏感です。独自の視点で誰しも考えないエッセンスを製品に注入していっていると感じるのは、彼自身が他の誰とも違う「志」があるからなのだと思います。その志を持ち続けられるのは、マーケットはグローバルだということ。私が海外の照明の技術をメインにした見本市に行くときは必ず「一緒に周りたい」とリクエストされます。その情報収集への探究心にはいつも驚くのですが、そこには、一心にオリジナルな良い製品をつくりたいというシンプルな情熱があるだけ。そこにいつも尊敬の念が止まないのです。
LIGHT & DISHES 代表 : 谷田 宏江


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