【パクさんをおいかけたい】vs.大分トリニータ:"行方不明"【110試合目】


酷暑のゲームで岡山らしい勝ち方を出来た(岡山らしさのことをよく知りませんがマガジンでいってたからそうなのだ。わかったか。)前節から続く上位との対決。今回はこちらとしても思い入れの深い片野坂監督と山岸智さんの大分トリニータとの試合。

片野坂監督の415は広島のイメージをまんまやってるので切なさ満載・・・という話は置いておいて、これまでボトムチェンジになかなか為す術を持ち合わせていなかった岡山が引き続き酷暑を味方につけることができるかというところを注目していました。



◆メンバー



パクさん別メニュー調整というニュースを聞いてわりと心配したのですが、しっかりスタメンでリーグ戦は110試合目になりました。連携の良かった塚川君が負傷してしまい代わりはこれまたルーキーの武田君に。彼もパサーのようです。

大分の山岸智はパクさんのルーキーイヤーで広島の左ウイングの第一線であった選手です。広島では戦力外になったと思われますが、J3、J2と自らの力を証明して上がってきたのは嬉しい。また、右ウイングの岸田は昨季長崎でパクさんと両翼を務めた中で、スピードというよりは駆け引きで秀逸なカットインやクロス、そしてフィニッシュで存在感を発揮していました。今節もそうなりましたね。



◆試合内容について








・球際互角もカウンター返しで主導権を明け渡した岡山



試合の立ち上がりはお互いにロングボールをきっかけにしたハイプレッシャーの球際勝負で互角の内容に見えていましたが、大分が岡山からボールをかっさらうカウンターのチャンスをいくつも生み出し、試合を主導権を握ることになりました。

岡山もボールを奪ってカウンターのチャンス、というシーンを作れていたのですが、そこで味方のサポートよりも早く強かなプレスを受けてボールを失ってしまい、伊佐や後藤の独走を許すシーンを作られてしまいました。後藤の献身と圧力は特筆に値しました。

武田君のロストが目立ってしまいましたが、大分の守備の統率がより上だった、もしくは岡山の攻撃の統率がより低かった、ということだったと思います。大分が引くときは523の形で、3トップは切り替えの際もボランチへの警戒を強めていましたし、岡山もそれを外す工夫をすることができませんでした。ボールを奪って鈴木淳のサイドチェンジから山岸のアーリークロスに伊佐が飛び込みますが惜しくも触れず。さとるさん、流石のクロスや…。

これはいかんと石毛が下りてきて左サイドで繋ぐ余地が生まれましたが、サイドチェンジや縦への展開を作ることは困難で、豊川が孤立して前が向けない状態が長くなりました。武田君には申し訳ないのですが塚川君の不在を感じさせた内容。ただこれは後半変わってきます。

それでも"事故"のようにこぼれだまやセカンドチャンスでボールを収めて決定機を生み出してしまうあたり豊川は凄いのですが…w前半でワンチャン先制することも無きにしも非ずでしたが、やはり戦術的に勝っていたのは大分だったでしょう。




・片野坂監督の415(帰ってきて)



切り替えの優位から岡山に撤退を促した大分は(たぶん)いつもの415変換で自分たちの時間帯を作っていきました。25分あたりには大分の試合だとほぼ決まっていったでしょうか。

5トップでロングボール、外からの繋ぎ、中央でのワンタッチプレーと複数の選択肢をにおわせることで守備ブロックのほころびを作ろうとするというやつです。広島は青山敏弘を中央に固定することで守備を引き付け塩谷司とウイングの突破で突き崩すという形で一時代を築き、その後前線連動の消失によるウイングマーク増と高齢化や対策の深化による相対的な強度低下に手が打たれぬままズルズルときて今に至っているわけですが(おっとこれは汗…そう、汗です)、大分が面白かったのは川西がほぼフリーマンとしてボールを運んでいたこと。

大分のシャドウは常に岡山のシャドウとボランチを引き付け、大分の後ろの5枚に対して守備を行えるのはほぼ豊川しかいないという状況であったので人数をかけやすかったというのもあるでしょう。自ら運んでボールを進めていました。

ならばと豊川と渡邊で挟んで川西がチェックされればシャドウが下りてくるとうまく連動してマークが空いた選手を使っていく形が出せていました。前半終盤にはワンタッチプレーがばんばん出始めています。

岡山もこれではいけないと、ゴールキックなどでリセットした際に前線プレスに向かったり、渡邊がサイド飛び出してボールを奪いにいったりというリスクを冒す守備をみせますが、大分に冷静にかわされ、決定機に繋がっていきます。特に渡邊をかわして鈴木宜→岸田の折り返しに國分のミドルは完ぺきでしたが、一森がビッグセーブ。

岡山にかわされる恐怖を植え付けて守備の行き所を無くした大分は前半終了間際に鈴木淳→後藤→伊佐→鈴木宜→岸田とつないで速い折り返しを川西が飛び込むという素晴らしいチャンスを作りました。これはブロックされますが、その後も2対1の勝利した岸田のクロスがゴールを襲い、続くCKのこぼれ球からミドルシュートを放ちますが岡山の決死のブロックが続きスコアはならず前半を折り返しました。



・会心の415返しと川西翔太の逆襲




後半になると一転して岡山が大分の守備を困らせていきます。関戸がボランチに下がり、武田がシャドウへ。

渡邊と関戸は縦関係になり、特に前半初めは415のような形になります(徹底してそういう感じではなくわりと流動的だったので、大分の守備のテンションに合わせていたと思われます)





これで大分の前3人と後ろとの距離感が開きを生じさせ、その間で関戸健二が躍動していくことになります。渡邊、加地とのパス交換で右サイドでボールをためると加地の虚を突いたアーリークロスに武田が反応して豊川の前を横切り、豊川の絶妙なフリックで抜け出すと左足一閃。会心のコンビネーションアタックで先制点を挙げます。



守備では大分の4枚のビルドアップの縦を前線3人+ボランチで塞ぎ、横パスに呼応したプレスとクサビには最終ラインが受け止めボランチやシャドウが刈り取りに行くリズムが作られていきます。渡邊さんがマムシ的な強さを見せており、岡山がボールを支配していきます。大分の取り返そうというプレスもパクさんと喜山さんがかわして関戸のドリブルから石毛のシュートと前半の大分とは真逆の立場となるチャンスを創出。

縦パスがうまくいかない大分は國分→三平で拠点を作りにいきますが、大分のパスのリズムに順応した岡山はボール奪取を増やしていき、間延びしつつあるライン間をパワフルに貫通する関戸さんとしっとりと待ち受けパスを放つ武田君のダブル王子が動かしていきました。






しかしそれで黙っていない大分。ハイプレッシャーに苦しみ続けた川西が最終ラインに下がり岡山の迷いを誘うとそのまま岡山の左サイドをドリブルでつっきり、密集を作ると右に展開、伊佐と久木田の1on1となりこれを振り切った伊佐が一森のニアを破る豪快ゴールで同点。正しい継続は力になる…眩しい…。



・酷暑で輝くかたやませんしゅと三村のパワープレイ

岡山の交代は太ももにアクシデントの加地→片山。かたやませんしゅは久々の復帰になりました。おそらくアクシデントで右サイドとなりましたが、豊川しかいなかった空中戦要員を引き受け岡山の新たな攻撃のスイッチとなっていきます。久木田のオーバーラップが増え、豊川がよりゴール前で勝負ができるように。

さらに武田→三村で大分が415でボールが奪われた際に生まれるスペースをドリブルでほじくる作戦がハマっていきます。

大分の状況打開策は縦がダメならより早く縦だ、という形で、岡山も二点目のチャンスだと応じて後半はカウンター合戦、ミス合戦となっていきます。大分のポストプレーを封じ続ける篠原さんはかっこよかったですね。クサビ競り勝ちからパクさん→三村とつないで三村のPA侵入までつながりました。篠原さんは伊佐→林で伊佐を試合から追い出すことに成功していました。まあ一発喰らってしまったけど。

85分ごろまではカウンターマシン三村が決定機を作り続け2点目の機運が高まっていましたが、何分PAで人数がそろっていてもフリーなフィニッシュに繋がらない問題(これは前節もその前もあったし今季の課題の一つでしょう…)があり加点できず…パクさんも80分過ぎからようやく敵陣にフリーランが出来てきたのでここでうまく使ってほしかったですね…

ATになると大分も最後の力を振り絞って攻め込みますが一森が抜群の反応を見せてシャットアウト。試合は痛み分けとなりました。



◆かんそう

・片野坂監督帰ってきて

片野坂監督の大分トリニータの良さを堪能できた試合でした。的確な守備のスイッチ、球際の厭わなさ、前線の駆け引きとそれをスイッチにした小気味よい攻め上がり、切り替えでの献身と取って返すカウンター…クサビに拘泥してしまい流れを変えられなかったのはご愛嬌というか、哲学の一側面でしょう。

ロングボールワンチャンスが作られてしまいそうなところやうまくいかないと前へ前へとなっていき間延びしてしまい試合が岡山の望むカオス状態に陥ったしまったあたりはノスタルジックな脆さがありましたが、裏打ちのあるリスクの冒し方をした気持ちのよいサッカーをしていると思います。帰ってきてくれの一言。

ガンバでのACLタイトル、広島でのリーグタイトル、ガンバに復帰して即三冠、監督デビューでJ3優勝とおそらく日本で一番多い種類のタイトルを持っている人だと思いますので、J2もとってぜひコンプリートしてほしい。そしてスクラップした広島の若いチームを率いて...未来へ...



・行方不明だったパクさんと酷暑をチャンスにしたい岡山

パクさん的には大外に張っている岸田の対処とシャドウの追われっぱなしの90分となり、敵陣に上がっても中を向いて右足で持つしかない状況でボールを受けることが多く消されてしまった試合でした。80分以降は三村が牽引したところに攻めあがることが出来、チャンスになったのですが、フリーで抜け出してもボールが来なかったり、セカンドボールでうまく連動できなかったりと、いままでもそうでしたがなかなか早い展開の試合に入れませんでした。

1on1で岸田に後れを取ってしまってあぶなかったのですが、ボールのない時のポジションは悪くなく、大分のサイドチェンジを幾度もカットして岡山の攻勢につなげたのはポジティブ。前半では大分のプレッシャーの避難場所としてもちょいちょい助けていました。

やはりフリーになってクロス放ってなんぼなので物足りなかったですが、劣勢なりに試合を壊さなかったのは良かったです。耐えた分最後の時間帯でビッグチャンスも来たのでそういうシーンで仕事が出来ればまた印象も変わりましたね。もう一歩。

111試合目はテンポの速さと長身に当てていけというサッカーの千葉なので今回の学びを活かしてくれれば。

チームとしては酷暑を味方につけた形を作ることができ勝利に値するゲームを2試合続けることができたと思います。ただ、修正は前半のうちにできとく必要はあるでしょう....いかに勝負は後半(ハーフタイムコメントのブレなさが凄い)と言えどですね....w

経験則ですが酷暑を制するものがリーグを制してるので、この調子で勝ち点を繋げていければ。より走って制してるあたりは凄い。続けばの話ですが。次の千葉戦も不得手な長身✕ハイラインですがいかに処しますでしょうか。おそらく赤嶺の復帰をここに合わせて千葉のハイラインに対抗するのではないかと思われるので、パクさんとのマリアージュに期待...未来へ...

では。