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私のためにリンゴの枝が低く垂れている…レイフ・ヴォーン=ウィリアムズ ”歌曲「リンデの草原に」”






物憂い雨なのでしっとりとした歌曲。例によって(笑)ヴォーンウィリアムズの、ドーセットという地方の民謡から採られた歌曲です。1901年と初期の作品で民謡採集時代ですかね、シンプルな旋律とピアノ伴奏のみとなっていますが、逆にこれだけ素朴だからこそ歌詞がしみてくるところもあります。

詩はウィリアム・バーンズによるもので、ドーセットの方言(ドイツ語っぽい感じなんでしょうか)で書かれていますが、この曲はRVWが英語のアクセントに書き換えた形で歌われています。故郷の色づく秋を想う、という内容は方言のほうが響く感じはあります。




私が持っているのはトマス・アレンによるバリトン独唱で、これがおっさんの濃厚な味が出ているのですが、この記事用に検索してたら出てきた上記動画のナタリー・マーチャント(なんか有名なバンドのボーカルだったらしい)の学生時代の動画も都会に出てきた若い女性の哀愁を歌う感じがあり、あはれが深い。歌曲、良いですね。



Ithin the woodlands,flow'ry gleäded,
By the woak tree's mossy moot,
The sheenèn grass-bleädes,timber-sheäded,
Now do quiver under voot;
An' birds do whissle auver head,
An' water's bubblèn in its bed,
An' there vor me the apple tree
Do leän down low in Linden Lea.
森の中、花咲く広場
カシの木の苔むした切株のそば
きらめく草の葉と、木の影が
今は足元で揺れてるんだ
鳥たちは頭の上でさえずってるし
川の流れは水底で泡立っている
そしてあそこには私のために リンゴの木が
低く枝を垂れているんだ このリンデの草原に
When leaves that leätely wer a-springèn
Now do feäde 'ithin the copse,
An' painted birds do hush ther zingèn
Up upon the timber's tops;
An' brown-leav'd fruit's a-turnèn red,
In cloudless zunsheen,auver head,
Wi' fruit vor me,the apple tree
Do leän down low in Linden Lea.
ついこの間芽吹いたはずの木の葉も
今やこの林の中で色あせ
色鮮やかな鳥たちも歌うのをやめてしまった
あの木の上では
そして茶色の葉の下のこの果実は赤く色付く
雲ひとつない日の光の下で
私のためのこの果実で リンゴの木は
低く枝を垂れているんだ このリンデの草原に
Let other vo'k meäke money vaster
In the aïr o' dark-room'd towns,
I don't dread a peevish meäster;
Though noo man do heed my frowns,
I be free to goo abrode,
Or teäke ageän my hwomeward road
To where,vor me,the apple tree
Do leän down low in Linden Lea.
世の中のやつらには金儲けさせておけばいいさ
薄汚れた都会の空の下で
私は気難しい親方も怖くはないし
私のしかめっ面を気にする人もいないだろう
異国に行くのも構わないだろうし
また故郷に帰る道を選んだっていい
そこには 私のためにリンゴの木が
低く枝を垂れているんだ このリンデの草原に

※歌詞及び訳出はこちらのサイトから引用しています