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むっくんだいすきクラブ シーズン3第一話:雌伏、リモート応援



シーズン2までのあらすじ


かつての恩師長澤徹監督にファジアーノ岡山悲願のJ1昇格を託され大都会岡山の地に降り立ったむっくんこと椋原健太選手。期待通りのタフネス&安定感を見せチームは上昇気流に乗るが、無念の負傷離脱によって昇格の機会を逃してしまう。
捲土重来を期した2年目、新監督有馬賢二が掲げたのはそれまでの質実剛健なサッカーからの転換であった。モダンなビルドアップとプレッシングに順応し青年監督の成功が現実味を帯びてきたのもつかの間、再び負傷禍が岡山を襲う。ギリギリのやりくりで昇格に一縷の望みを残すも、またしてもあと一歩のところで昇格への扉は閉ざされてしまったのであった…



長かった…本当に長かった…。

ご無沙汰しております。ようやくむっくんの2020シーズンが開幕したよ。3シーズン目の観戦行為をはじめていきます。

むっくん岡山3年目のシーズンは、SB大補強祭りから始まりコロナウイルスショックで物理的に見られんくなるわで、立ち上がりからわりと絶望アンド絶望であったのですが、再開2戦目でスタメン復帰とあいなりました。

シーズン3制作決定(契約更新)からだいぶ満を持してしまったので、観戦の心がけを完全に忘れてしまい、少し気を緩めると五臓六腑を吐きだしそうなメンタルで拝見しましたが、今節のむっくんは非常にええ仕事ができたのではないかと思います。

何より、この試合はああだったこうだったとガヤガヤできる嬉しみを思い出すことができたのがちょっとロボットが初めて流す涙くらい暖かかった。

今季も始まった。しみじみ嬉しいです。改めてよろしくお願いします。



試合概要


(Jリーグ公式サイトから引用)


ジュビロ磐田 1-1 ファジアーノ岡山


スターティング

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ゴール
13分:清水慎太郎
70分:上原力也

交代
磐田
 60分:山田→大森
 80分:松本→ルリーニャ
 86分:ルキアン→藤川
岡山
 51分:清水→関戸
 70分:上門→後藤
 88分:松木→野口、上田→山本、イヨンジェ→斉藤






試合内容について


新シーズンの良さが詰まったスーパーゴール


ジュビロ磐田とのアウェイゲームは互いを牽制するようなロングボールの打ち合いから始まりました。両者ともに積極的に前線から奪いにいけるので、そこで勢いに乗らせないぞということでしょうか。ポゼッションに自信を深めるチーム同士なのに、古き良きJ2みたいな立ち上がりになってるのが面白かったです。

さて、そこでまず岡山がイヨンジェの強さによって手番を取るということになりました。岡山の特長は白井と上門の二人の新しいSHが広範囲に動いていけることにありそうです。これは昨シーズンを踏襲していますが、昨季はほぼ仲間隼斗が単独でやっていたのに比べ、両サイドで二人ともできるぞという主張がありそうですね。今節ではこの二人が活躍する猶予をFWイヨンジェとGKポープの二つの起点によって生み出すことに成功していました。ポープさんのフィードめちゃめちゃうまい。新戦力強すぎない?

また、ここにむっくんが加わるタイミングが絶妙に良かったところで、制作班としては早口になってきます。松木が先発していたので右SBでの先発は意外でしたが、上門の突破で生まれるスペースにピッタリ。ナイスオーバーラップむっくんのさわやかでキレのある喉ごしはこの季節にぴったりですね。

むっくん突破が決まれば続いて中にヨンジェ・清水のFWに加えて白井も入り込む4枚の切れ目ない攻撃につながっており、チームとして練習してきたんやという美味しさがありました。上門は仲間隼斗の役割をさせるには荷が重いのではと思ってたのですが、普通にやれちゃいそうですね。すごい選手がぼんぼこ出てくるなJ2は。





先制点もこの形から。ポープの絶妙フィードが右サイドに流れたイヨンジェ・上門・むっくんの密集地をとらえ、こぼれ球を上門がキープした二次攻撃からはじまっています。磐田イレブンに急いで奪いに行くよう指示が出たところを濱田・ポープ・パウリーニョで一人ずつはがして上門がちぎったところで勝負あり。

このときむっくんはゴールキックの流れのまま下がる時間もなく(上門が下がっちゃったから)前に残っており、上門に奪いに行った磐田SB石田の後ろの、誰もいないスペースを満喫していました。ゴール前を二度も確認する余裕をもらったので、中に走りこんだ白井をとらえるのは余裕。あまりにもピッタリなクロスなので白井もスルーする余裕があり、smsnが丁寧に流し込みました。あなや!

ボールを回すのはシュートの余裕を作るため、という教科書通りの素晴らしいゴールだったと思います。むっくん復帰早々の美麗アシストにパソコンもフリーズしてしまった。美しすぎてしんだ。このむっくんのどフリーはいかなる狡知か!と感動して映像を巻き戻したのですが、ただのハプニングだったというオチもつきました。まあ運を引き寄せるのが実力なんでな。ガハハ。



磐田の真価と岡山の経験不足


イヨンジェと上門の強さ、ポープさんの正確すぎるフィード、そこに加勢するむっくんと右サイドで優位を築いた岡山でしたが、それもだんだんと鳴りを潜めてしまいます。磐田の懐の深いポゼッションについていけず、しのぐのに手いっぱいとなってしまったからです。

磐田のビルドアップは、本当のボランチである上原・山本に加えて、後ろに大型ボランチだからCBもやろうかという伊藤と前線の山田・松本昌と実質5人がボランチできますみたいな状況になっていました。彼らが気ままに足元にもらいに来てくれれば狙い打ってカウンターのチャンスになるのですが、まあうまく岡山の守備の隙間で連動するので難しかった。

彼らがFWとSHの守備をかいくぐるとすぐさまサイドチェンジを行い、守備の標的をリセットしていきます。取りに来なければ伊藤が一気にフィードして小川・ルキアンを直通していくことで揺さぶりをかけていましたが、時間と共に上原が下がって山本が中央に残り両SHと合わせて3バック・3センターのような形に落ち着きました。これは岡山の4-4-2の守備陣の合間合間にすっぽり選手が配置される感じで、どの選手も絶妙に遠く、岡山としては守備の号令がかかりにくくなりました。

岡山はおそらくこれほど速く・正確で・選択肢の多いパスワークに相対することはあまりなかったんじゃないかと思います。チームの守備のベクトルが合ってないと守備陣に穴が開いてしまうのですが、その先鞭をつけるべきFWは、どのボランチにいけばいいのか(常に3択以上ある)わからなくなっていたので、どこかで遅れたり、注意が向いてないということが起こってしまい、そこから五月雨式にゴール前まで後手後手の対応が続く形になってしまいました。

特に松木・白井・smsnのところが難しかったですね。みんな新メンバーやからかな。上門とむっくんは結構奮闘していましたが、サイドチェンジは基本右足で左サイドに振られるので、そんなに多くポジションの取り直しを求められないことが助かっていたという部分もあるでしょう。それは後半に明らかとなりますので後述。

ギリギリでかき出すむっくんもこれよこれという味わいがあり良かったですが、あまりチームとしては歓迎できないですね。このあたりは岡山の経験不足と磐田の洗練とが不幸に噛み合ってしまった感じか。彼我の差を受け入れて、縦パスだけは防いでサイドバックやSHに振られたら全力で寄せる、というある種の開き直りが必要だったかと思いますが、FWからプレスをはめるのが岡山のスタイル、という呪縛に苦しんでしまった感じ。受難の松木君。左にサイドチェンジされすぎてむっくんがほとんど映らなくなってしまったので、制作班にとっても受難でした‥w



交代策も実らず万事休す


このジュビロの「抑え込み策」は後半さらにパワーアップすることになります。巻き返したかった岡山でしたが、出鼻をへし折られた感じ。

まずビルドアップ隊=かわるがわるボランチ部隊に、CB藤田も追加されます。単純に縦に進むだけですが、FWの脇を使われて受けが難しい。そこから右サイドのパウリーニョの脇へのサイドチェンジが多く観測されるようになります。これで前半は推しこんでいた上門・むっくんコンビが今度は守勢に。岡山の強みが完全に消され、岡山SHも最終ラインに吸収されてしまって、ただただボールを蹴り出すしかないというふうにますます戦況が悪化していきました。

そのため有馬監督は急いで関戸さんを投入。右サイドにテコ入れを図りつつ、一人プレスで負けていなかった上門を前線に配置してなんとか奪いきりたいという交代だったと思います。

この交代は一部うまくいきまして、65分のイヨンジェアタックから少し上門・関戸・むっくんが加わり盛り返すことができました。これで少しオープンなやり合いになったのですが、ここの球際でことごとくファウルで磐田ボールに。流れを引き寄せることができませんでした。こういうちょっとしたところで勝負のアヤが磐田に傾いてしまった感じですね。磐田のほうが優勢だったのでしょうがないのですが。

そのうえ、前半の意趣返しのようなGKフィードのこぼれ球からの美麗攻撃で小川が抜け出し田中が決定機阻止で退場。ここで試合が決まってしまいました。交代投入の大森が、それまでの磐田の攻撃のリズムと異なるワンタッチパスを繰り出したのが技あり。欲を言えばむっくん寄せたかったですけどね~…口惜しや…。まあほぼカウンターのような攻撃の貰い方でしたからね。それも岡山が決めたゴールとおあいこのような展開でしたし。

一人少なくなった岡山は、ボールサイドのSHがDFラインに降りて開き直る5バック気味の守備で徹底防戦。スクランブル投入の後藤圭太とむっくん&関戸さんがマムシのようにいやらしくハーフスペース侵入選手を離さない蛇蝎のごとき粘りで簡単に土俵を割りません。その甲斐あってか、ルリーニャが奇跡のような逸機をしてくれたりポープさんが5点くらい止めたりで魔力を発揮し、なんとか勝ち点1を持ち帰るということになりました。



未来へ


岡山としては首尾よく先行したものの、磐田の多彩な攻撃に対応が間に合わず、先取点というスコアの優位とイヨンジェ・上門の個の優位を生かした試合展開にすることができなくなってしまいました。上門とむっくんのコンビで無双できるやん!とウキウキしていたのですが、形勢は制作班の思う以上に悪かったみたいですね。

その理由にはチーム全体の、後方の数的優位局面を多用するチームへの対応経験が浅そうだな、というところがまずあります。中央に絞ってくるSHへのパスを制限しつつ、サイドチェンジをしてくれるならそこを叩くぞ、という形にあまり組めなかったですね。

まあ、これは守備のタスクとしてはあまりに高度ですし、磐田に中盤のうまい選手が居すぎるのが良くないと思うので、ある程度しょうがなかったと思います。松木君には気の毒でしたね。しかし肝いりの補強であった増谷も徳元も離脱しているようで、開幕早々SBだけオークに焼かれた村になっているのな。前世でエルフだったの?

とはいえ、完全に負け試合になっていたところを勝ち点1を拾うことができました。これは誇れることです。むっくんもよくふんばりました。関戸さんと蛇蝎のごとくハーフスペース侵入選手にまとわりつく右サイド守備はこれはこれで面白かった。かわいい顔してMAMUSHIのコンビいいよね。

上門とのコンビのイケイケっぷりも嬉しかったです。仲間隼斗とも相性良かったのですが、ハーフスペース暴れん坊将軍がいるとサイドでフリーになりやすいのがいいんでしょうね。戦況があまりにもアレでしょうがなかったのですが、このコンビもっと見たかったな。

とりあえず、新戦力を中心とした個の力には楽しみな部分が多そうですが、磐田の上手さを差し引いても結構隣同士の選手ですらバラバラだな、と気になるシーンが散見されました。チームとしての意思統一、組織力に関してはまだまだというところになりそうです。

まあ、前2シーズンが順調すぎたので焦らず熟達していけばよいでしょう。ちょっとメンバー構成がリスキーな感じがするのでむっくんの出番になるといいですが、どうでしょうね。リスキー大好きおじさんの予感してきてるんよな今季。


それでは。