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“神がかり”を引き寄せた、むっくん×仲間隼斗コンビの成熟 (vs.ヴァンフォーレ甲府の会報 2019-7/27)




 今節は6位と7位の直接対決。かたや負傷選手の復帰によって怒濤の連勝を重ねる岡山。かたや負傷選手の続出によって勝ちきれない試合が続く甲府。お互いに自動昇格圏をとらえるために勝利が必要な大一番。

 編集部も一路甲府へと飛びました。台風も一路東海地方に飛んできており、おっかなびっくりの参戦。



試合情報


スタジアムでもらった団扇が可愛すぎる件について編集部は皆さんと共有したい。ただし、試合は熱くなってほしいけども気温は勘弁してくれまじで...



甲府1-2岡山;曽根田(32分)、イヨンジェ(83分、90+2分)


メンバー

交代
甲府:14横谷→25森(68分)、2湯澤→8新井(74分)、9ピーターウタカ→17金園(81分)
岡山:24赤嶺→7中野(62分)、2廣木→11三村(78分)、19仲間→30武田拓(84分)






ピーターウタカさんとかいう、ほとんど違法行為


鳥もつ、焼き鳥と鳥方面にうまいモノの多い中銀スタジアムですが、今季から新しく入ったという信玄唐揚げも素晴らしい。パックからはみ出る生命力あふるる質感、アクセントのネギと塩だれが酒欲のツボをグリグリ押してくる。味付けはピリ辛醤油たれなど5種類ほど選べます


 岡山の狙いは前節山形戦同様のもので、両SHを中央、相手のCH寄りに配置することによって、

①空中戦の人口密度を上げてイヨンジェにめがけて蹴っても低リスクでボールを保持する(極論すると中央で甲府CH2人に対し岡山はCH+SH+関戸さんのマムシ的しつこい球際補正で実質5人になります)

②CHの片方(主に喜山)を下げ、SBをサイドに張らせることで相手の中盤の守備を迷わせる

 という優位を取りにいきました。しかし、これに対する甲府の対策が非常に機能しており、前半は苦しいゲームとなっていました。

 ①の優位を得ることには成功したものの、②を狙いに行くとすかさずCHが喜山を塞ぎにいきますし、それならばとSBからボールを進めようにも、そこに繋ぐしかない状況なので読まれてしまって、相手のシャドウとWBの寄せがジャストで来ており、チームで(もしかしたらリーグでもかもしれない)抜群の突破力を誇る仲間隼斗ですら囲まれてしまい非常に難儀していました。

 甲府が特に巧みだったのが、こういうときはバックパスでやり直し、動き直した隙をついて上田康太に預けて打開を図ってきた、というこれまでの勝因となってきた岡山の約束事こそを狙ってきたところにあります。特に上田へのパスを防ぐ役割を担ったピーター・ウタカのプレッシャーの的確さと献身性は特筆に値します。

 バックパスを狙われることによって、ボールを運べる範囲が狭まり窮屈なプレイを余儀なくされる岡山。ここでは、廣木のボールの受け方と次のプレイを狙う判断の遅さ、トラップやダイレクトパスの精度の低さが目立ってしまいました。

 甲府が良かったのもあるのですが、岡山が押していた後半もそうであったので、「試合に入れていない」状態になってしまいましたね...走る・ぶつかるといった部分では優れている廣木の良さが活きるためにもここは頑張ってほしい...

 右サイドからほとんど攻められなかったのは、仲間を使うことを選んだということもあるでしょうが、廣木のところからうまくつなげなかったからという事情もあるでしょう。

 DFラインの誰よりもパスのうまいGK一森もボールを預かることでボール自体は失わずに済んではいたものの、ボールを失ってもすぐ奪い返せる岡山DFラインの高さを狙った甲府の早め裏狙いに手を焼くことになります。

 ここでもピーターウタカが活躍していて、SBが守備に出る裏を狙う曽根田と横谷にボールが渡るや否や、今度はFWの本領発揮とCBの視野から消えて一瞬で裏をとるのがまあ鮮やかで、先制点の他にも二度ほど心臓が止まった...w

 甲府の先制点も同じような形で、セカンドボールを狙って圧縮を試みる岡山DFの裏に蹴りだしたボールをピーターウタカが抜け目なく狙い、遅れて対応したチェジョンウォンがはね飛ばされてしまったことで守備が足りなくなってしまって、むっくんが辛くもスライド対応するも横谷の冷静なヒールで勝負あり。ワントップツーシャドウ速攻のお手本のようなゴール。

 岡山としては上記の攻めかたをする以上はここはCBが一対一になるけどがんばれという守りかたになってるので、ぶち抜かれたらしょうがない。濱田の不在は悔やまれますが、岡山対策をやりきった甲府を褒めた方が生産的です。まあ後半もチェジョンウォンぶち抜かれてたので、昇格を狙いたいというレベルで戦うには厳しそうではあります。

 2点目未遂となったシーンは後方のポゼッションからの加速ですが、SBを引き出した瞬間に加速というのは同様で、やはり優れた訓練の賜物と見受けられます。この試合前半で終わってても全くおかしくはなかった...

 ほんま、こんなに守備もできて、駆け引きでDFラインにストレスをかけ続けて、自分で突破もできちゃうとか。。。ピーターウタカさんほとんど違法行為ですよ勘弁してください。。。これが大一番の難しさかと編集部もざわつく前半でした。



むっくん×仲間コンビによる対抗策


エンドチェンジが行われたため後半でゴールを背にする形に。むっくんがよく見えたので編集部としては願ったり叶ったり。台風による雨も少しぱらついた程度だったので良かった。


 後半は一転、岡山の打開策が目を引く内容。前半と同じく仲間が攻める!ではあるのですが、徐々に甲府の守備が追い付かなくなります。これにはむっくんと組む左サイドの役割変更という地味ながらデカイ隠し味がありました。むっくん×仲間コンビはいいぞ。

 甲府が成功した要因は、上記した①・②の岡山の約束ごと...仲間は中央にいてむっくんはサイドにいる...に合わせた守備網を敷いたことにありました。それならば、ということでしょうか、後半は仲間隼斗がサイドに開いて甲府WB湯澤との勝負を挑むことで、甲府の守備方法に変更を迫っていきます。

 仲間隼斗をサイドでタイマンを張らせたことは、単なる「アイデア」ではなく用意されたものであると思われます。というのも、岡山はチーム全体でその援護をしていたからです。

①SBのむっくんはサイドに張りすぎず、少し内側でボールを受けることで甲府のシャドウを引き付けて、仲間隼斗への守備の増援を許さない状態で仲間隼斗へとボールを届ける

②右サイドから攻撃を始めて選手を集め、左サイドの人員を手薄にすると共に、甲府の守備網から離れる軌道となる左足でのサイドチェンジ(上田も喜山も蹴れるというのがポイントでしょう)で逆サイドの大外で張る仲間隼斗やその近くにいるむっくんに繋げる


 この2つのプレイが機能したことで仲間隼斗への守備の集中が緩和されました。そこを仲間が要求通りに湯澤を突破してくれたおかげで、甲府は下がりながらの対応が増えていき、前半のような高い位置でプレイが困難となってしまいました。

 ラインが下がってくると喜山と上田へのプレッシャーも少なくなり、左サイドからの横パスや右サイドをCBの田中裕介が持ち上がることで、サイドだけでなく中央から直接ゴールに迫る攻撃も増えていきます。

 岡山としては会心の修正によって主導権を奪い返したわけですが、甲府の5バックが最後の最後まで粘りこみ、崩しきってフリーでシュートを打てるシーンは全然ありませんでした。

 むっくんも仲間とのコンビネーションを効果的に作ってゴールに繋がる抜け出しや密集したブロックを揺さぶる大外へのクロスと工夫に満ちた攻撃を見せていて、編集部としてはヒジョーに胸がときめいたのですが、これもまた決死の守備に跳ね返されてしまいます。

 さらには、湯澤と横谷が入れ替わることによるSB裏急襲であったり、前半同様のピーターウタカ理不尽突破によって甲府の2点目のチャンスがあったので、岡山が鮮やかにひっくり返した、だとか、甲府が悪かったといえるほどでもなかったと思います。難しい試合だという状況は終盤まで続きます。湯澤がふかしたりイッチがウタカの決定機止めたりがなかったら2-0で負けてた試合でしたな...



“神がかり”を引き寄せた、采配の妙と諸々の運


メインスタンドでも喜びをを分かち合ってくれましたが、むっくんが帰るの早すぎてシュールな画になってしまったの図。


 なかなかゴールにはならぬ、ということで岡山は是が非でも一点という決意をもった交代カードが切っていきます。

 赤嶺→中野誠也はオープン展開を見越した定石ですが、撤退する甲府に苦しみました。細かいコンビネーションを結構狙えてはいたのはやや意外ですが、やはり赤嶺はんは年期が違うでという部分であり、そういうゴールはもうちょい待つ必要がありそうですね。

 とはいえ、守備面ではよく効いていて、SBが引っ張られることによる穴を彼が下がって防ぐことで甲府の攻撃はカウンター以外のほとんどを防ぐことができました。

 甲府の横谷→森も似た感じの交代に見えました。森は自分でドリブルを仕掛けることに自負ないしは役割がありそうで、後半の甲府の攻撃の多くは森が間で受けてのドリブル攻撃だったように思います。

 ただ、そこからDFラインを突破するという部分はもうちょっと。逆にいえば、岡山の守備陣がよく我慢できてました。また、仲間にサイドをえぐられてるのが諸悪の根元ということで湯澤→新井の交代でリベロの小出をWBに置いて仲間を止めに行くテコ入れも図っています。

 これを受けての岡山の廣木→三村が妙手。てっきり三村は仲間と同じくらい高い位置でドリブルを狙ってこじ開けに行くのかなと思ったのですが、左SBとしての、むっくんがやってたのとほとんど同じ役割でした。

 仕掛けが控えめだったので、スタジアムで見てたときにはこの交代はスカなのかと思われたのですが、よくよく見ればむっくんが右サイドに移ったこととの合わせ技。上田康太も高い位置に上げて、右むっくんから縦につなげられるようになったことで、右サイドからも深く攻めこめるようになり、甲府の対応はより難しくなっていました。

 こ、これは...懐かしの右サイド火付け役むっくんだ...!

 右サイドを深くえぐったこぼれ球から仲間が神がかり的な突破でPKゲットとバッチリ結果に結びつくのですから恐ろしい。しかしこの攻勢はリスクを伴ったもので、人数バランスが前に偏りすぎて勝利だけを求める甲府の頑張りをモロに受ける格好にもなりました。あとやはり三村のSBは単純に守備が辛かった...w

 自陣でボールを奪われ(今節の審判は五分であれば激しい当たりでもまあ全然ファウルとらなかったので球際に負ける方が悪いという話になります)、二度ほど決定機をつくられてしまいます。どっちか入ってたらまた終わってた...前後半合わせて5回ほど決定機逸に助けられてますね...w

 ただ、この勝ちたい甲府もサイドチェンジのパスに特にミスが多く、焦りを感じるシーンも少なくありませんでした。決定機逸もそのあたりに要因がありそうです。じゃあどう解決すんねんと言われると、結果を出すことに慣れるまで続けるしかないのだとしか言えませんが。。。

 中野誠也が投入後唯一活きたカウンターが最後の最後に信じがたいパスミスから出てしかもそれがゴールになるのですから、勝負はわからないというか、“神がかり”という表現を使わざるをえません。終盤になるにつれて逆に輝く関戸さんの体力石油王っぷりには編集部も苦笑い。

 とりあえず言えるのは、岡山が個人でも組織でもやれることをやれたことで、その運を引き寄せるだけの試合をすることができたということでしょう。それは今までどれだけ求めてもつかめなかった、クラブ史上初のJリーグ4連勝に繋がる最後のピースだったのかもしれません。

 


未来へ


石和温泉駅にて、笛吹(ふえふき)の地名の由来となったと言われる笛吹権三郎の像。今節は笛吹市のホームタウンゲームでしたね。コイン式ワイン試飲機が駅に併設されていたり、道一面のブドウ畑で芳香が良すぎて危険なレベルであったり、源泉かけながしの足湯でかき氷が食べられたり、「日本一桃源郷」のスローガンに恥じない恐ろしい場所でした。


 昇格戦線に入るには、1-0の試合運びだけではなく、0-0や0-1の時間が長く続いたときのやり方も機能させる必要がある、という話をしたのは2試合前の琉球戦でした。逃げ切りに課題を残すチームがそれをばっちり解決したので、もっと上に行けるかも...という願望を込めて書いてたのですが、果たして、自動昇格圏の山形を0-0からのサッカーで退け、甲府とのこの大一番をも0-1から見事に勝ちきってしまいました。

 ちょっとこの爆速っぷりには脳みそお花畑の編集部といえども流石に驚きが隠せませんし、むっくんが左に右に大活躍の末のクラブ史上初の偉業というのは、なんというか...一言でいえば「ゲッヘへ、アッシはこんなに幸せでいいんでゲスかね...」という感じですね...

 今度は4バックとなってからとうとう本領を発揮しつつある柏レイソルが相手。今度は0-2からのサッカーだな!とはならなくても良いので、甲府戦で少し見えてしまった甘さを突かれないようにがんばってくれれば。

 今は外れてしまっているものの力はある廣木や久保田和音に武田将、それに仲間に負けない突破を見せた武田拓も楽しみになっていて、個人の底上げの余地も見込めそうです。

 むっくんと仲間のコンビが当たるのは小池とクリスチャーノですかね..こわ...けれども負けないところを見せられれば。そこから先は神のみぞ知る...


 

それでは!