プロフ用完成B

OnePhotoProjectのご紹介(後編)

(つづき) 前編はこちら

虚空を見つめる少年の話

ここで、僕の中で一番印象に残っているエピソードを紹介します。

ネパールでのトレッキング中、ガンドゥルックという、僕らと同じモンゴロイド系の人々がいる村に寄った時のことです。 この村は、トレッキングルートの一つになってるため、宿やレストランがあり、現金収入が比較的多い村です。 しかしそれは、村の中でも宿やレストランという資本を持っている一部の人に限られます。 そのため、村内での貧富の格差を感じた村でもありました。

その村の道端で、ある少年を見かけました。 その少年は、なんでもない道端でぼーっと、虚空を見つめるように立ちすくんでいます。 外国人の僕が近くにいても見向きもせず、表情がない。 格好や顔を見ると、汚れていて、他の子供達とは明らかに違う雰囲気がありました。

僕はその少年のことがどうしても気になって、声をかけました。 しかし、こちらを向いても不審そうにするだけで、あまり表情を変えません。

僕の手は自然とチェキに伸びました。余計な言葉はいらないと思い、ただ笑顔だけは絶やさず、シャッターを切りました。 このオレンジのパーカーを着ている子がその少年です。

チェキの写真では、笑っちゃうくらい眉間にしわを寄せています。
それがもう1枚のチェキを渡した後の写真では、子供らしい表情で、はにかんでいます。

僕はただ、声をかけてチェキで写真を撮っただけです。
1枚高くて100円。

それだけで、たったそれだけで、きっと僕なんかには想像できないような、いろんな苦しい事情があって立ちすくんでいた少年が、一時でも子供らしい表情を戻した。

この写真は彼のモノです。他の人には大して価値のない、誰かに奪われることのない、彼だけに価値のあるモノです。
そして、自分だけの、自分の写真はいつでもなんどでも、見返すことができます。

1ドル札を渡すより、チョコレートを渡すより、彼に写真を1枚渡して良かったと僕は自信を持って言えます。
もちろん、全てが印象的な事ばかりではないですが、やっていればこういうことも起こるのです。
10回に1回でも、100回に1回でもこういうことを起こせるのであれば、続ける価値のあることなんだと僕は思っています。


参加者が受け取る報告とは?

参加者は未使用のフイルムを旅人に預け、旅人からの報告を待ちます。実際にどのような形で報告をしているのか、僕が作成したものを一例としてノートに載せていますので、リンクからご覧ください。

こちら

預かるフイルムは、できるだけ多くの人に参加してもらいたいという思いから、基本的に一人につきフイルム1箱(10枚入。1,000円くらい)を預かっています。そのため、10枚分のフイルムが誰の元に渡ったのか報告を受けることになります。

渡すフイルムには、日付、そのフイルムを預けた参加者の名前、日本の国旗を書くようにしています。

日付は、後で見返したときでもいつの写真かわかるように。名前は、誰がくれたモノなのかを記録するために。国旗は、日本からのプレゼントだということを簡潔に伝えるために書いています。(旅に出ると、自分が日本人であることを強く自覚させられますし、相手も名前を覚えるより先に国名を覚えるので、書くようにしています)


この活動の今後について

現在のところ、プロジェクトと言いつつ、旅人は僕、参加者は僕の知り合いという小さい関係性の中で始めています。

僕は、遠い国の人々に共感すること、彼らへ想像力を働かせることが、もっと当たり前なことになれば、もっと豊かで面白い世界になるんじゃないかと思っています。「参加者」や「旅人」になってみることは、その端緒としての意味も持つはずです。

今は、まずはこの活動を知ってもらうことを目的としていますが、反応を見ながら、より大きな活動に変えていくことも考えています。そのため、ご感想や励ましをいただけると幸いです。

これまでの旅の記録や、OnePhotoProjectで撮った写真は、随時アップしていきますので、参考にしてください。

以上、OnePhotoProjectのご紹介でした!

たくさんの応援ありがとうございます。