20150926_06バンセン

ベトナム・ホイアンの夜をめぐる

初日、いよいよ出発の日

午前のみ出勤して、職場から成田へ向かう。こっそりバックパックを担いで来ても暖かく送り出してくれる環境に感謝。

スカイライナーを待つホームでも、今からベトナムに行くという実感はまだなかったが、空港に着くと、ぐんっと半ば強制的に海外の気分になる。見送りで来たときでもそんな気分になってしまうから、空港は不思議な場所。

フライトは成田15:25発、ダナン18:55着(現地時間)。少し居眠りすれば、あっという間に着く距離だ。

予定通り出発、到着し、1カ国目のベトナム、ダナンに入った。
飛行機から出ると、むゎっ!とした湿気が体を襲って、前の旅の記憶が引っ張り出される。いよいよ始まったんだなぁと、不安と期待でワクワク。

税関を抜けると、自分の名前が書かれた紙を持った若いベトナム人青年を見つけた。

どうしても今日中にホイアンの市街をめぐりたかったので、今回は事前に宿(ホイアン)&空港からのピックアップを予約していた。
そもそも空港からホイアン市街までの移動手段が少ないという理由もある。バスもあることはあるが時間が読めないらしく、タクシーよりはピックアップの方が安い。


サフンってどこ?

ダナンはベトナム中部の中心都市で、高層ビルも多くあり、かなり発展していた。ダナン空港から車で40分のところに初日の目的地ホイアンがある。

ピックアップしてくれた青年の名前はガオといって、車中でいろいろ話をしてくれた。年齢は28歳、大学生の彼女がいる。

「じゃあ彼女が卒業したら結婚するんだ?」と聞くと、 「それがさ、いろいろ難しいんだよ。彼女もせっかく大学に行ったから、働きたいって言ってる。だから早くて数年後かなぁ。でもそれまで続いてるかどうか・・・。あぁ、やんなっちゃうよ。」と日本で聞く話と同じようなことを言ってるのが面白い。

他にも今回の旅の計画やくだらない話をしていると、「いつか日本に行ってみたいなぁ」と言う。

「日本は本当にいい国だと思うよ。都会的だし、美しいところばかりだ。本当に。あぁ、ただあれだ、火山が多いよね。4年前だったかな、あの大きな地震は。津波で多くの人が亡くなってしまった。地震が多いところ以外は、本当にいい国だ」と続けた。

彼は東北の震災のことを心配してくれていた。その話し方は、彼が「同じアジアの国」に対して共感してくれているような気がした。自分はどうだろうか。スマトラ沖地震やネパール地震がいつ起こったかなんて、すらっと言えるかな。

車は高速を通って、時間通りホイアンの宿に着いた。

到着するとフロントのスタッフが迎えてくれたが、スタッフ同士でなぜか僕を見て爆笑している。

よく分からず愛想笑いをしていたが、女性のスタッフが「あのね、はじめあなたがベトナム人だと思って声かけちゃったの」と笑いながら英語で教えてくれた。 確かに濃いめなのは分かるけど、さすがに間違えないでしょ・・・ !

まぁとにかく明るいスタッフだったので、その後は親切にチェックインを進めてくれた。

ホイアンの街中をめぐる前に、明日の移動先を決めてバスのチケットを買おうと思った。
自由気ままな旅だけど、行きたいところへ行くためには事前にリサーチしておくことも、意外と大事なのだ。

目的のカンボジアとの国境を越えるためには、とりあえず南下しなければならない。
比較的大きめなクィニョンか、その少し手前の、国道沿いにあるサフンという小さな海辺の町に行きたいと思っていた。

スタッフに聞いてみるとクィニョン行きはあるが、遅い時間の出発になってしまうらしく、宿の確保に不安が残る。

サフンはどう?と聞いてみると、首を傾げ、「サフン?どこ?わからないわ」と言われてしまった。
ベトナム人もわからないようなところなのかぁ…と一瞬不安になったが、なんとなく諦めがつかず、文明の利器GoogleMapを使って場所を見せてみた。
すると、「あぁ、Sa Hyunhね」と分かってはもらえた。

どうやら、「サ(フ)アン」(アにアクセント)という感じに発音するらしい。ただ、彼女もサフンがどんな街か分からず、そんなところに何しに行くの?という感じだった。
それでも、バスを見つけるため、いろいろなところに何度も電話を掛けてくれた。とても親切だ。

しばらく待っていると、サフン行きのバスが見つかったらしい。明日の昼12時発で3時間くらいかかるとのこと。
僕のワクワクセンサーはサフンに即決。12万ドンを追加で支払い、部屋に荷物を置いた。

息を整え、改めて旅モードに切り替えて、ホイアンの街中に出発した。


ランタンの街 ホイアン

ホイアンはチャンパ王国からの古い港町で、その後は国際貿易港として栄えた。中国人街を中心に古い建築物が残っており、その街並みは世界遺産に登録され、人気の観光地となっている。最近は日本人の観光客も多いらしい。

今日中にホイアンを回りたかったのは、翌日の移動時間が不明なこともあるが、夜のホイアンを見たかったから。 ホイアン名物の一つがランタンで、夜には風情ある街並みに、たくさんのランタンが灯る。

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10分ほどで中心地についた。
大きな通りや水辺の広場にはランタンとともに多くの出店が並んでいて、小物や土産を売っている。
観光客は出店で土産を買ったり、オープンカフェでビールを飲んだり、水辺のベンチでゆったりとランタンの灯る街並みを眺めていたりする。

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ひととおり歩き、そろそろ宿に戻ろうかというころ、「どこから来たの?」と英語で声を掛けられた。
声をかけてきたのは民家の前にいた50代くらいの女性で、とりあえず隣の椅子に座って休んでいきなさい、と言う。

きっと、何か物を買っていかないか、という話になるんだろうと思った。でも、そうなれば断れば良いし、話し方がとても穏やかそうな人だったので、少し付き合ってみることにした。

街にあふれるランタンの光が反射する水辺を眺めながら、ベトナム人のおばちゃんと話をする。
彼女は縫製の仕事をしていることや家族のことなど話してくれて、たまにこうして旅行者に話しかけるのが好きなのだという。そうやって英語を覚えていったらしい。

しばらく話しをしていると、私が作ったものを見ていきなさいと言い、自分で作ったというおもちゃや雑貨などを出してきた。なかなかよくできている。でも、「これから先荷物になるから、まだ土産はいらないよ」と伝えた。
少し寂しそうにしたが、「そろそろ出店が終わるから、気をつけて帰るのよ」と言ってくれた。

優しい人だなぁと、この時は呑気に思っていた。じゃあねと別れを言って、宿へと向かった。


めぐる、めぐる

帰り始めると、先ほどまで沢山の人で賑わっていた通りは全ての店が閉まっていて人通りもまばらになっていた。

悠長に、『千と千尋の神隠し』で山のような食料であふれて賑わっていた街が、ほんの一瞬で様変わりしてしまったシーンみたいだなと思いながら、宿でもらった地図をもう一度見て、行きに通った道を辿った。

しばらくすっかり暗くなってしまった道を進んでいると、なんだかおかしい。地図には書いてある道がない。

しまった!

店が全て閉まり前面に木の板が掛けられ、行きで通った道の景色がわからなくなっていたので、どこかで道を間違えたらしい。
方向音痴な自分を恨むしかない・・・。

道に迷ったと分かると、余計に薄暗く感じ、道端の野犬に目が行くようになる。
海外を旅していると、日が落ちたとたんに野犬が凶暴化することがよくある。普段動物に好かれても、夜の野犬は本当に見境がない。

一気に不安になりながら、かなり簡略化された(雑な)地図をもう一度よく見て、歩いた。
戻ってみたり、進んでみたり。

結局1時間くらいさまよっただろうか。
ようやく出店が並んでいた水辺の広場に戻り、そこからもう一度道を確かめて、やっと宿に戻ることができた。

すっかり宿の電気は消え、入り口のハンモックではスタッフが寝ていた。
「こんな時間に帰ってきたのか」と言うかのように、チラッと確認の一瞥をされながら、空いていたドアから中に入った。(よくよく考えると、ドアが開いていて本当によかった)

部屋に入ると、安心感と疲労からすぐに眠りに落ちてしまった。

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