希見 誠

ノゾミ マコトと申します。小説を書いています。 こちらでは童話を中心に載せていきます…

希見 誠

ノゾミ マコトと申します。小説を書いています。 こちらでは童話を中心に載せていきます。 「エブリスタ」「カクヨム」で全ての小説が読めます。

マガジン

  • あやかし妖喜利物語

    落語、大喜利を題材にしたコメディ小説です。 笑点万歳!

  • 東海道五拾三次OLスキー珍道中

    ハチャメチャにワチャワチャしたエンタメ小説。近未来にバブル風OL二人がスキーで東海道五拾三次を旅するドタバタ劇。

  • コトバムシ

    言葉とは何かを問いかけるファンタジー童話

  • 希望の街のおまじない屋

    戦争で壊れた街からの復興を目指す人々の感動巨編

  • 童話

    童話をひとまとめにしています。素敵なイラストを使わせてもらってありがとうございます。

最近の記事

【落語小説】あやかし妖喜利物語 第一席 寄席沈没

寄席沈没 えー、毎度馬鹿馬鹿しいお笑いを一席。  なんていう出だしから始まる落語は、最近ではとんと見られなくなったようだが、この噺の冒頭にはいかにもピッタリだ。  この噺はいわゆる異世界転生ものである。だから、長ったらしい枕は抜きにして、とっととこの噺の主人公に現実世界から退場してもらわねばならぬ。  それでは早速、彼に登場してもらうとしよう。どんな人物かというと、特に詳しい描写を必要としない。単なるダメ男である。どうしようもないダメ男である。  何がダメって、ダメ男の

    • 【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中②〜江戸・日本橋〜

       お江戸日本橋七つ立ち。  七つとは、現代の時間にしておよそ午前四時。  古《いにしえ》の時代、旅人たちは、この朝も明けきらない時間から、旅を始めたものだった。  移動手段は、徒歩。  早朝に出発し、日暮れ前には宿に入る。  日本橋から京都の三条大橋まで、約二週間の健脚であった。  それから幾星霜ののち。  すっかり体のなまった近未来人は、既に日は高々と昇り、会社勤めの人たちが出勤を終えた頃になって、ようやくモソモソと旅を始める。  ここに、日本橋のたもとに佇む旅人が二

      • 【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中①〜プロローグの巻〜

         東京から京都まで旅をする。  と言ったら、皆さんなら何を思い浮かべるだろうか。  オーソドックスに新幹線。青春18切符でゆっくりと各駅停車。または自動車でドライブときた。  中には京都までくらいなら自転車で平気だという強者も。  あるいはいにしえの弥次さん喜多さんのように、東海道を徒歩でテクテクと、なんていうのもオツである。  でも、近未来では、スキーで旅をするのですよ。  この二人みたいに。

        • 希望の街のおまじない屋 第一話

          ミミルはパンが好き だいじょうぶ  だいじょうぶ  そう口の中で何度も呟きながら、一人の少女が今日眠るところを探して、壊れた街を歩いていました。  歳の頃は10歳くらい、でも、もっと小さくも見えます。  身なりはボロボロ。とても幸せそうとは言えません。ところどころかぎさきのできた赤いワンピースは、薄汚れて灰色に近くなっています。肩からかけたポーチは、細い紐が切れそう。こんなになるまで着なくても、とっくに新しいものをママかパパにねだったって、バチは当たらないのにね。  少

        【落語小説】あやかし妖喜利物語 第一席 寄席沈没

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        • あやかし妖喜利物語
          1本
        • 東海道五拾三次OLスキー珍道中
          2本
        • コトバムシ
          5本
        • 希望の街のおまじない屋
          1本
        • 童話
          14本

        記事

          コトバムシ その1

           昔々。神の血をひく王さまが、この地を治めていました。  王さまは大変徳の高い人で、人々から尊敬されていました。  人々の間で何か争いごとがあると、王さまが出ていって、それがいけないことを教えさとします。人々は王さまの言うことをよく聞いて、従いました。  それというのも、王さまには、神から授かった力があるからです。  ですが人々の間には、争いごとが絶えませんでした。彼らはすぐに汚いコトバを使いたがったからです。 「ばか」「嫌い」「汚い」「気持ち悪い」「最低」「あっちに

          コトバムシ その1

          コトバムシ その2

           森は爽やか 星は瞬き  火は暖かく 心を照らす  ぼくらはみんな友達だ  生きているって美しい  街道に沿って置かれたコトバイシが、歌を再生していた。 「これも君の歌かい」 「いや、これはぼくじゃないな。歌っているのはぼくだけど。作ったやつが風邪をひいてて、代わりにぼくが歌うことになったんだ」  ぼくらは馬で街道を下っていた。お城を出てから約一ヵ月。もううんざりするほど、似たような歌ばかり聞かされてきた。自分で言うのもなんだけど。 「たしかに、こんな歌ばかり聞かされ

          コトバムシ その2

          コトバムシ その3

           翌朝早く、ぼくらは馬にまたがって調査に出かけた。  イーディ隊長が警備の兵をつけようかと申し出てくれたけど、ヤヤはそれを断った。研究者のフィールドワークに普通の人が付き合いきれるものではないとか言って。 「ねえ、ヤヤ。そろそろ休憩しようよ」  もう太陽がぼくらの真上にあった。城を出てからずっと、ヤヤは働きっぱなしだった。  一匹一匹、コトバムシをつかまえて、足にリボンを結んでいく。いろんなコトバを投げかけて、反応を見る。コトバムシの羽にマジックで記号を書き込む。  ノー

          コトバムシ その3

          コトバムシ その4

           その日の調査を終えて、ぼくらはワルド城に帰った。また歌うために引き回されるかと思ったけど、もう誰もぼくの歌を聞きたがる人はいなかった。  それはそれで寂しい気がする。もっと人々が聞きたがる歌を作らなくてならないんじゃないだろうか。  コトバムシのエサにするための歌ではなく、もっとこう、ぼくたち人間の栄養になる歌を。  調査で疲れていたこともあり、ぼくらは早めに就寝した。が、熟睡というわけにはいかなかったのだ。 「ヤヤ殿!ヤヤ殿!」  ドンドンドンと、激しく扉を叩く音

          コトバムシ その4

          コトバムシ その5

           すぐに落下の衝撃に身構える。だが、それはいつまでたっても襲ってこなかった。 「あ、あれ?飛んでる!?」  はるか下に、無数の赤い星が見えた。なんと、ぼくはリーダーの乗った大きなコトバムシに吊り上げられて、城の上空を飛んでいたのだ。  コトバムシの上から手が伸びてきて、首根っこをつかまれた。ぐいっと、ものすごい力で引き上げられる。  コトバムシの背には、例の金髪の女の人がいた。近くで見ると、どことなく高貴な顔立ちだった。 「偽りのコトバばかり歌うウタイビトよ。おまえた

          コトバムシ その5

          【童話】ししおどし(8437字)

           あれはわたしが小学三年生かそこらのときだったと思います。  当時、学校が夏休みになると、毎年母に連れられて、田舎のおばあちゃんの家に二週間ほど泊まりにいっていました。  最初の日こそ、母も一緒に泊まってくれますが、翌日には都会に帰っていきます。  小学校が夏休みの間も、父は会社がありますから、これはいたしかたのないことでした。  今思えば、その間だけでも夏休みの子どものお守りから解放されたいという、両親の考えがあったのでしょう。  娘を預けて、自分たちは羽を伸ばしたい

          【童話】ししおどし(8437字)

          【童話】不思議なレストラン(2467字)

           算数の嫌いな男の子がいましたとさ。  わがままばかりの男の子がいましたとさ。  いつも好き嫌いばかりで、にんじん、きのこにたけのこも、みんな嫌いの大嫌い。  ある日その子のお母さん、知恵を絞って一工夫。  にんじん、きのこにたけのこも、細かく刻んで春巻きに。  けれど一口食べてみて、中身が出てきた大騒ぎ。  慌ててその子は逃げ出した。  逃げた先は公園だ。  不思議なテントを見つけたよ。  おっかなびっくり入ってみれば、そこは不思議なレストラン。  世界で一つしか

          【童話】不思議なレストラン(2467字)

          【童話】なくしたもの美術館(8376字)

           ようこそ、当美術館へ!  古今東西、津々浦々、四方八方、前後左右、天が下からコガネムシの背中の上まで、あらゆるところを探したって見つからない、珍品、希少品、滅多にお目にかかれないレアものばかりを展示しております。  お客さまは、初めてのご来館ですね。ほう、こんなところがあるとは知らなかった。最近できたのかって?  いえいえ、当館、お客さまがこの世にオギャーと誕生したときから、あるにはありました。  はい、あるにはあったんです。その頃、展示品はまだ一つもありませんでした

          【童話】なくしたもの美術館(8376字)

          【童話】小さな星の約束(3190字)

           寒い冬の日。  澄み切った夜空に、星が瞬いています。  さちこさんは、コートをはおり、手袋とマフラーをして、ベランダから夜空のお星さまを見上げていました。 「お星さまが流れているときに願い事をいうと、叶うのよ」  お母さんが、そういっていたからです。  さちこさんには、どうしても叶えたい願いがありました。  だから、早くお星さまが流れてこないかと、寒いのを我慢して、さっきからずっとお空を見上げているのでした。  そんなさちこさんを、空から一つのお星さまが見ていました

          【童話】小さな星の約束(3190字)

          【童話】砂漠のてるてるぼうし(2794字)

           砂漠にてるてるぼうしが住んでいました。  これは、暑いのと、よく乾いたのが好きでしたので、砂漠に住むにはうってつけでした。  いつもひとところにじっとして、小さな虫などを取って生きていました。  友達といえば、背の高い、おじいさんのサボテンの木があるばかりでした。  てるてるぼうしがいると、辺りが乾いてしまうので、他に誰も彼に近づくものはありませんでした。  サボテンは無口で、ほとんど話をすることもありません。  ときどき、サボテンを登って、てっぺんから見渡してみると

          【童話】砂漠のてるてるぼうし(2794字)

          【童話】あめふらしのなみだ(5523字)

          「もう、このへんでええじゃろ」  あめふらしのおじいさんがそういうと、それまでシトシトと降っていた雨がだんだん小雨になり、やがて止みました。 「もっとジャンジャカ降らせばいいのよ。こんなんできのこ、生えてくる?」  小さな孫娘のウーアは、水たまりにピシャンと飛び込むと、長靴で水を蹴り上げました。 「あんまり降らせすぎてもいけない。この森には、このくらいがちょうどいいんじゃ」 「わたし、前の森の方がよかったな」  ウーアは、すねたようにいいました。二人は今まで別の森にいた

          【童話】あめふらしのなみだ(5523字)

          【童話】こむらねこ(1736字)

           こむらねこは大得意でした。お母さんにおむすびを握ってもらったのです。  生まれて初めて食べたおむすびは、塩味がきいて、とてもとてもおいしいものでした。 「これはうまいじょ。母ちゃん、今度の遠足にはおむすびがほしいじょ。大きいのを3つ握ってけろ」 「はいはい、竹の皮に包んであげますからね」  みんな羨ましがるに違いない、とこむらねこは思いました。  当日、お友達みんなで山にハイキングにいきました。ところが、いざカバンからおむすびを取り出そうとして、こむらねこは恥ずかし

          【童話】こむらねこ(1736字)