【読書】佐倉統「科学とはなにか 新しい科学論、いま必要な三つの視点」

「科学とはなにか」という本を読んだ。大それたタイトルをよくつけることができるなと思いつつ、科学とはこれであるという定義が明示的には描かれてはいなかった。

興味深かったのは下記の2点。

1点目は科学の原則の1つである共有性である。得られた知見を自分だけのものへと独り占めせずに、みんなに共有していこうという原理原則である。他の人の知見をベースに科学が進歩していく以上、この原則は当然であると思う。誰もが得られた知を独占すれば、科学の進展も遅くなってしまうだろう。しかし翻って現在の事情を見れば、一部の出版社が科学雑誌の購読料を高く設定しているが故、科学的知見に簡単にアクセスすることができない。この状態は、科学の原理原則からしてあまり望ましくないのではないかと思った。

2点目は、科学知と日常知の違いである。いわゆる事故物件に住んだらこの身に何か良からぬことが降りかかるというのは科学的ではない判断であるが、実感としてはそういう物件には住みたくないと考えてしまう。科学的知見がそのまま日常知へと移行するわけではないという点をわかりやすく理解できてよかった。ワクチン接種忌避についても、忌避する人のなかで何らかの日常知が形成されているのだろうか。

総じて読みやすかったが、俯瞰的でこの部分についての知識が具体的に得られたという感覚はない。この点は著者によるあとがきにも書かれていたが、三つ子の魂百まで的な感じがして面白かった。

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