【読書】中村高寛「ヨコハマメリー:かつて白化粧の老娼婦がいた」

「ヨコハマメリー:かつて白化粧の老娼婦がいた」という本を読んだ。タイトルにもある通り、ヨコハマメリーというのは白化粧の年老いた娼婦で横浜の路上にいたらしい。そういう見た目の人間は珍しいので横浜のアイコン的な存在であった一方、直接彼女と関わった人は少なくいくつもの噂が飛び交うだけで一体彼女が何者であるかは分からない。本書はヨコハマメリーの関わった人物への取材を通して、彼らが彼女とどのような関係性であったのかという側面から彼女を描く試みである。歴史についての記述が分厚すぎるのでは…と思う節があったが、ドキュメンタリー的な本として面白い1冊だった。

全く関係ない話だが、自分の住む街にもお昼間イタリアンの決まった席でパスタを食べている男性がいる。私は毎日そこを通るので毎日会うこととなる。そのうちに、彼はどんな人なんだろう…と気になる。しかし、私は彼の話を他者と交わすことはない。なぜなら、自分以外に彼の存在に着目している人はあまりいないと思っているからである。

その点、メリーさんは違う。見た目が目立つということもあり、自分だけではなく他の人も知っているという共通理解が生まれている。街のアイコンになるためには各々がその存在を知っていることに加えて、他の人もその人を知っているだろうという認識が大事なんだろうと思えた。

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