【読書】 イアン・ゲートリー「通勤の社会史」

「通勤の社会史」という本を読んだ。やや面白かった。通勤と聞くと満員電車の中に詰め込まれる絵が浮かんで、よくあんな電車に乗ってまで出勤しようとするなあと、徒歩出勤裁量労働制男の私は思ってしまうわけですが、この本を読むと出勤というのは人々を生まれ育った町から解放する素晴らしいものとしてかつて捉えられていたということを知る。自分の故郷を振り返ると個人商店といくつかのちょっと大きな会社があるぐらいで、もし電車や自動車といった交通がなければそこに勤める以外の選択肢がなかっただろう。通勤というのは非常に有難いものであることを実感させられる。加藤浩次から「当たり前じゃねえんだぞ」と叱られてしまいそうである。

現在を見るとコロナ禍。テレワーク時代。この本はコロナ前に書かれた本であるが、テレワークについてしっかり書かれている。曰く、テレワークという手段は対面でのコミュニケーションとは異なるので、通勤圏内以外の人にも仕事を頼める。しかし、それ故にライバルが多いとのことである。東京にある会社に勤めている人の多くは埼玉・東京・神奈川・千葉あたりから出勤しているだろうけど、もしテレワークがOKならば通勤圏内は日本中に広がる。日本中と書いたのは日本語話者の多くが日本に住んでいるからであるが、もしそれがアメリカであれば、インドで生まれ育って英語を話せるインド人がインドにいながらアメリカに勤めることも可能である。テレワークではライバルとの争いが激しいので、それを回避するためにも対面・出勤する人は一定数いるだろうという本書の読み。どうなることやら。

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