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【映画】PSYCO-PASS PROVIDENCE

PSYCHO-PASSって1期が始まったのは2012年なので、もう10年以上前なんですよね。で、こういうシリーズ物の傾向として「1期が最高、2期がその勢いをキープ、あとは衰退の一途」というイメージがあったのですが、この作品は違いました。10年も経過したのに、こんなに最高でハイパーな作品をここで出すのか…!という嬉しい誤算。

シリーズの作品に触れたことがある人、好きだった人は是非是非観てほしいです。色んな事が繋がるうえに、物語の根幹の部分である「シビュラシステム」に関する重要な展開があります。

世界観

サイバーパンクな舞台、ディストピアな物語、スタイリッシュな映像、暴走する犯罪者、そして群像劇。1期を手掛けているのは、アニメ畑ではなくドラマ畑の本広克行(代表作「踊る大捜査線」)でした。脚本は虚淵玄…。ああ、これだけで「やばい作品だな、誰かマミられるんだろうな」と。

現在の社会は「既に起きた犯罪」に対して警察が動きます。対症療法的な動きですけど、実際「何も起こしていない人」を捕らえる事は出来ないですよね。が、この作品の世界では「犯罪予知システム」で「将来犯罪を起こすであろう人」を判定できるシステムが構築されています。トム・クルーズ主演の「マイノリティ・リポート」みたいですね。

サイバーパンクというとウィリアム・ギブスンの「ニューロマンサー」を想起する方も多いと思いますが、どちらかというとフィリップ・K・ディックのディストピア感に近いんじゃないかな。実際、ディックには「シビュラの目」という作品がありますし。パノプティコンな世界、現実になっていますしね。

パノプティコン(一望監視施設)

用語基礎知識

まあ、作品を観たら自然と覚えますが、念のため頻出ワードを。

◆シビュラシステム
 人間の心理状態を数値化し、管理する監視ネットワークシステム。
犯罪係数
 シビュラシステムが計測した、犯罪者になる危険性を示した数値。
◆免罪体質者
 犯罪係数が計測されない(ドミネーターが反応しない)者。
◆潜在犯
 犯罪係数が規定値をこえている者。排除や隔離、治療の対象となる。
◆色相(しきそう)
 人間の心理状態を色で表す。色がクリアであるほど精神状態は健康。
 メンタルが悪化すると色相は濁ってくる。
◆ドミネーター
 監視官と執行官が使用する、犯罪者を裁く銃。主な執行モードは
 パラライザー(麻酔銃)
 エリミネーター(殺人銃。対象の肉体を内部から破裂させる)
 デコンポーザー(人間以外の対象物を完全に排除する)
 ※犯罪係数が規定値を超えていない場合はトリガーがロックされる。
◆執行官(しっこうかん)
 厚生省公安局刑事課に所属しているが、高い犯罪係数を持っている。
 犯人を捕まえる実動部隊となる。
◆監視官(かんしかん)
 厚生省公安局刑事課に所属し、執行官を監視・指揮する刑事たち。
 犯罪者や執行官と関わるため、色相悪化、犯罪係数上昇の危険性がある。
 監視官から執行官となった者もいる。

作品の時系列

これ、公開順に観るのもいいかもですが、作中の時系列で観るのもいいかもですね。今藍のPROVIDENCEは3期の直前です。ああ、3期の常守朱ちゃんのあのシーンは、この流れがあったからなのか!ってのがわかります。

物語(ネタバレ少々)

1期と2期で主人公だった常守朱が3期では「囚人として囚われている」という「なんでそうなってんの?」のミッシングリンクが描かれています。

テーマはAIと法、罪を裁くのはいったい誰なのか?ってなところかなと。人々はAIを信じ切っている。常守朱は「そのシステムの裏側」を知っている。法そのものの在り方が揺らいでいる時に、システムに全面的に世界を委ねてはならないとする常守朱は「シビュラシステムは完璧ではない」を世界に提示するべく、とある行動をとるのです。

以下、公式から引用。

2118年1月。公安局統括監視官として会議に出席していた常守朱のもとへ、外国船舶で事件が起きたと一報が入った。同じ会議に出席していた厚生省統計本部長・慎導篤志とともに現場に急行する朱だったが、なぜか捜査権は外務省海外調整局行動課に委ねられていた。
船からは、篤志が会議のゲストとして呼んだミリシア・ストロンスカヤ博士が遺体となって発見される。事件の背後には、行動課がずっと追っていた「ピースブレイカー」の存在があった。博士が確立した研究…通称ストロンスカヤ文書を狙い、ピースブレイカーの起こした事件だと知った刑事課一係は、行動課との共同捜査としてチームを編成する。そこには、かつて公安局から逃亡した、狡噛慎也の姿があった――。博士が最後に通信した雑賀譲二の協力を得て、文書を手に入れるべく出島へ向かった一係だったが…。

〈ストロンスカヤ文書〉を巡り、予想を超えた大きな事件に立ち向かっていくこととなる朱と狡噛。その先には、日本政府、そしてシビュラシステムをも揺るがす、ある真実が隠されていた。ミッシングリンクをつなぐ〈語られなかった物語〉が、ついに明らかになる――。

劇場版PSYCHO-PASS PROVIDENCE公式Webより

感想

サイバーパンクな世界観、魅力的なキャラ、群像劇スタイル、伏線の散りばめ方、スタイリッシュな銃火器、散りばめられた名作の引用とニヤニヤしちゃう要素が多い作品なんですが、実はシリーズ通して一貫して描かれているのは「罪を裁くのは誰なのか?人の心の在り方とは?」という、昔から普遍的に描かれていたテーマなんですよね。

心の中の善悪度を色相や犯罪係数という形でビジュアライズ / 定量化・数値化という描き方はSF作品でないと出来ないでしょうけど。

そして、この終わり方は間違いなく「次がある」です。今から楽しみで仕方ない。期待してますよ、Production I.G.さん!


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