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図書館で読める。子どものためのファンタジー小説5選


「娯楽の溢れる世の中だけれど、何とかして子どもに本を手に取ってもらいたい」 

 本の知育効果が明らかになっている今、このように思っている親御さんは多いのではないだろうか。

 今回は学校の図書室にもある児童書の中から、本当に面白いファンタジー小説を紹介したい。小学校低学年向けから高学年向けまで、また大人も楽しめるものを選んでみた。どれか一つでも読み始めれば、すっかり本の楽しさに気付くことができるはずだ。ぜひ本選びの参考にして頂きたい。


1. J.K.ローリング『ハリー・ポッターと賢者の石』さあ、ハリーと共に魔法学校へ。

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あらすじ

「ハリー、おまえさんは魔法使いだ」。
その一言が、ありふれた日常を、宿命に操られる波乱の人生へと変えた。ホグワーツ魔法魔術学校で新たな生活を始めたハリーを次々と襲う闇の恐怖――。
壮大な構想のもと、個性的な登場人物が織りなす感動長編の序章。勇気と信頼と友情の物語は、ここから始まる。(「BOOK」データベースより)

ポイント 

 言わずと知れた名作児童文学である。全作映画化もされているため説明は不要だろうが、個人的にはぜひ小説で読んで頂きたい作品である。友情あり冒険ありの学園ものなので、内容は非常に親しみやすい。また彼らは私たちと同じように授業を受け勉強し、スポーツも楽しむ。そんな彼らの学生生活を彩るユニークな魔法の小道具や世界は、読者の想像力をより豊かにしてくれるだろう。


2. 上橋菜穂子『精霊の守り人』食べ、寝て、戦い……そしてこの世界に生きる

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あらすじ

 老練な女用心棒バルサは、新ヨゴ皇国の二ノ妃から皇子チャグムを託される。精霊の卵を宿した息子を疎み、父帝が差し向けてくる刺客や、異界の魔物から幼いチャグムを守るため、バルサは身体を張って戦い続ける。建国神話の秘密、先住民の伝承など文化人類学者らしい緻密な世界構築が評判を呼び、数多くの受賞歴を誇るロングセラーがついに文庫化。痛快で新しい冒険シリーズが今始まる。(「BOOK」データベースより)


ポイント

 ドラマ化もされた本作は主人公が女用心棒とあって少し驚くかもしれない。けれども登場人物が比較的少なく、文章はわかりやすく簡潔であるので、本を読み慣れていない人におすすめできる作品である。架空の世界を舞台に物語は進むが、読者は皇子チャグムの弱さに共感し、彼の成長とともに徐々に世界に入り込んでいく。個人的には文化人類学者である著者の描く、人々の食べる描写が特に好きだ。


3. たつみや章『月神の統べる森で』日本人の心、原点に向かうものがたり

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あらすじ

 はるか太古の昔。山も、川も、木々も、獣も…みな、心をもった存在だった。人もまた、月神の統べる森の恵みを受け取って生きていた。ある時、海からきたヒメカの民は、土地をかこってクニとし、敵意をむき出してムラに襲いかかった。そして、ムラの若き長アテルイと、美貌の巫者シクイルケは、流亡の旅の途中、翡翠色の目をもつ少年ポイシュマと運命的な出会いをするのだった…。(「BOOK」データベースより)

ポイント

 古代日本の縄文時代を舞台にした作品ゆえに、物語の中では神道に通じるアニミズム信仰が根付いている。自然や生き物、人々へ感謝を捧げて生きる登場人物たちの姿を通して、私たちは日本人であることに感謝するに違いない。
 全四巻+外伝一巻、どれも美しい挿し絵がありイメージを膨らませてくれる。ふりがなもしっかり振ってあるので、小学校低学年からおすすめである。


4. ラルフ・イーザウ『ネシャン・サーガ』杖に導かれ、仲間と共に世界を行く

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あらすじ

 ネシャン北域の森で、少年は謎めいた杖を発見する。青い光を発する杖を握ると、五感はとぎすまされ、記憶や感情を伝える力まで強まるようだ。これは涙の地ネシャンを解き放つ伝説の杖ハシェベトなのか?エンデが見いだした本格ファンタジー作家が放つ少年たちの地の果てへの旅。「BOOK」データベースより)

ポイント

 これぞファンタジー。突然使命を負った少年が世界を旅するというストーリーである。杖を初めとするさまざまな道具が旅を支え、さまざまな種族の仲間と共に冒険をしていくこの物語は、本自体の分厚さを感じさせないほどに読者を魅了する。

 中でも特に地図がいい。何より本当に地図中の至る所を冒険するので、ファンタジー好きにはたまらない。私の「地図帳好き」はおそらくこの本に起因している。


5. アーシュラ・K. ル=グウィン『影との戦い―ゲド戦記〈1〉』敵は自分の心の中に

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あらすじ

 アースシーのゴント島に生まれた少年ゲドは、自分に並はずれた力がそなわっているのを知り、真の魔法を学ぶためロークの学院に入る。進歩は早かった。得意になったゲドは、禁じられた魔法で、自らの“影”を呼び出してしまう。「BOOK」データベースより)

ポイント

 先に紹介した4冊とこの本の間には大きな違いがあり、それがこの物語の圧倒的な凄さである。結論を言うと、何とファンタジーであたり前に存在する倒すべき敵が存在しないのだ。それゆえ読者は拍子抜けするかもしれない。魔法を当たり前に使う世界なのに、戦う相手はいないのだから。しかし読んでいるうちに読者は気づくのだ。私たちの生きる世界で、私たちが戦うものは一体何なのかと。
 シリーズ全作大人も楽しめる深い本である。映画では表現されなかった自然や文化のすばらしい描写も、ぜひ楽しんでいただきたい。


最後に

 今回紹介した作品はどれも1巻で終わらない長編のシリーズものである。これらの本を通して、本に没入する感覚を知って楽しんでもらえればと思う。

「続きが気になってしょうがない」

「一冊読んで止まらなくなった」

 無意識のうちにこのように思うようになった頃には、どんなに厚い本でも読むことへの抵抗がなくなっているに違いない。

 とにかく楽しむこと。

 それこそがすべての行動の始まりである。


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