近所のおじいさん


同じ団地に住むおじいさんが亡くなった。


つい最近まで自転車に乗って出かけていくのをよく見かけていたのに。


挨拶するくらいで深い親交があったわけでは無いが、なんとなくお人柄は伝わってくるものがあった。


団地の共有部分にツバメが巣を作り、それがまた巣作りが下手なツバメで(笑)、巣が落ちそうになった事があった。そのおじいさんが巣落ちないようにそっと下から支えを付けていた。ツバメは人の手が入るのを嫌がるんじゃないかと心配したが、おじいさんの助けを受け入れたようだった。もしかして、私が引っ越して来る前から、何代にも渡っておじいさんに助けてもらっていたのだろうか?下に落ちるツバメたちの糞もおじいさんが綺麗に掃除してくれていた。

ご高齢であったが人のために働く活動もされていた。自治会費を取りまとめる係もして下さっていて、手元に残った集金袋のおじいさんのハンコを見てしんみりした。

一人で住んでいたおじいさんは、亡くなられた後、業者が後片付けに来ていた。
業者が去った後、荷物を運び出した際のゴミが通路に散乱していた。
そして、そのおじいさんの家の匂いであろう匂い がムンムンしていた。

なんだか悲しかった。


ご本人がいたら、綺麗に掃除するだろう。


もしかしたらご遺族が気がついて掃除するかもしれないな、それを奪ってはいけないかな、と思い、また  私もすぐに掃除する気にもなれず、しばらく放っておいた。



通るたびに「おじいさんこの状態は嫌だろうな。」と気がかりだった。匂いはずっと残っていた。




一週間過ぎた頃だろうか、ある日、「あ、今、掃除しよう」と思い立ち、ホコリや小さいゴミが散乱した通路を掃いた。

おじいさん、業者さんにゴミだらけのままにされちゃったの、嫌だろうな。


ご本人はもう体が無いから、掃除したくてもできないんだし。


気にしてるだろうなあ、とか考えていてハッと気がついた。


私がこうやって、散らかされて嫌だな〜と思ってるのを、気にしているかもしれない!誰も気にしなければ、おじいさんも気にならないんじゃなかなかろうか。

そう気がついて、

おじいさん、ごめんなさい!落ち着かなくさせているのは私でしたね!


今まで色々ありがとうございました。


お疲れ様でした。


ゆっくり休んでください。



そう思いながらゆっくり掃除した。




最後に会話ができたような気持ちになった。

きれいになった通路からは、匂いが消えていた。

おじいさんとの別れ。




おじいさんの長い人生の最後のほんの数年、近所の人であっただけ  だけれど。

ありがとうございました。

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