ダグラスが来る

今、この島に迫っているハリケーンの名前のこと。

ハリケーンの名前は、長いこと女性名だったけど、調べてみたら1979年から男性名も使われるようになった。男女平等のアメリカらしいけど、元々は女性名だったということから、女性には、低気圧とかヒステリックなイメージがあるのだろうか。
キキ―ッとなって、テーブルの上の物を払いのけるとか、恋人のシャツを引き破るとか、そんなイメージだろうか。髪には、もちろんカーラーを巻いて。

この島に来た頃、風の強い日はよく停電になった。木々が倒れたり、波が電線に被るほど海が大荒れするからだと聞いた。その度に、懐中電灯と蝋燭を駆使してシャワーを浴びたりした。

あれから33年経った今も、停電の頻度はあまり変わらない。日本から移住して来た人たちに停電の話しをすると「今の時代にまさか!」と笑う。私は調子を合わせて「そうよね~」と言って、無事を祈るけど、そういう日に限って停電になるので、ちょっと意地悪な私は心の中でほくそ笑む。そして、用意してある蝋燭に火を灯し、ワインなど飲んでやるのだ。

今回のダグラスは、中々大きいらしい。島の人たちは、電池を買い占め、バーベキュー用の炭やガスの卓上グリルを用意して、停電に備える。氷も買い占めて、ビールやらチップスまで買い込んでいる。
ちょっとしたイベント気分。でも、不謹慎だから、みな真面目顔で無事を祈り合う。

でもやっぱりダグラスには荒れ狂って欲しくない。荒れ狂っていいのは、バーバラとかエレノアとか絶対に女性名が似合うと思う。