貿易風

この島には、一年中風が吹く。貿易風=trade windと呼ばれる風。

名前の由来は、貿易のために帆船がこの風を利用して海を渡ったと噂されているけど、本当の由来は、trdadeという言葉はもともと「経路」を意味してて、「決まった経路を吹く風」という意味だったらしい。

日差しは、肌が焼けるほど強いけれど、この貿易風のお陰で、木陰に入ると鳥肌が立つほど寒く感じることがあり、窓を開け放して寝ると、うっかり風邪を引くことがある。

「え~、南国にも風邪ってあるの?」と聞かれる。インフルエンザもあるし、コロナにもやられているこの頃だ。

貿易商が、その帆に風をいっぱい受けて海を渡り歩いて、この島にも衣服が持ち込まれ、身体を包むことを教わったけれど、たくさんの病気も持ち込まれた。

貿易が防疫とはならなかったことは仕方ないとして、この風に吹かれると、遠い昔のことばかり考えてしまう。

私へと託されたメッセージが聞こえる気がする。