コーヒー

そしてダグラスは去った。

雨はそれほど降らずに、風も強くならなかった。停電は、ダグラスが去ってからの朝、20分間ほどあった。20分とは言え、やっぱり停電という痕を残して行った。

家中のあちこちの電化製品についている時計をセットし直して歩く。ストーブと呼ばれる電気調理器には、オーブンがあって、それの時計機能も。
誰かに言われたわけでもないのに、この時刻を合わせなければならない。時刻とは、世界の人と共有しているわけだけど、急いで合わせなくても構わないだろうに。

時刻という「キマリ」がなかったらどんな弊害が起きる?朝陽と共に起きて、影が小さくなればお昼ごはんを食べて、鳥が静まれば、寝ればいいだけ。いや、もっと自由だろうな。

無人島に漂流したトム・ハンクスが「キャスト・アウェイ」で過ごしたように、時の無いこの島に辿り着いたと思えば、日付だって判らなくても、さして問題にはならない気がする。

そんなことを思いながら、コーヒーメーカーのタイマーモードが切れていることに気付いた。