花たより

「花たより」として送ったものが、会誌掲載時には「花だより」と、濁点が施されていた。書き損じたと思われたのだろうか。「花だより」としたかったら、最初から「花便り」としていたところだ。私にとっては、花を「頼り」にしているという意味だったのだが、印刷されてしまったので、仕方ない。


「花だより」 シンタニ優子  水甕2020年8月号掲載 

「鬱金香」印字の霞む球根はネット袋に春を待ちをり

自らを散らすことなく紫陽花は来ぬ人待つか裏木戸の陰

花びらを剥ぎ取り沈める蜂蜜の瓶の琥珀にリラは夢見る

散らされて色の薄まる心持ちリラ冷えの夜に一人湯に入る

風誘ふウツギは枝をややたわめ懺悔するごと花びら散らす



鬱金香とはチューリップのこと。

他にも、鬱という字をもつ花がある。鬱金桜(ウコンザクラ)だ。

春は何ともし難く鬱を招く。

紫陽花は、もう花芽を付けた頃だろうか。そして立ち枯れていく。

花は割と辛いものだなぁ。