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茗荷 うちにあって 日本の一般家庭の1%未満にしかないと思うものを挙げてみる その16

物心ついた時からミョウガ好きでした。
子どもには珍しくこの独特の香味野菜を好きになったのは、母親の好みもあったのかもしれません。
しば漬けの中から細かく刻まれたそれを発見して味わったり、油揚げの味噌汁に入れたものを好んだりしたのは、10歳に満たない頃だったと思います。

しかしその好みと共に落語をアレンジした児童書の中にあった「茗荷宿」という噺が、より自分とミョウガの結びつきを強固にしました。

「茗荷宿」は古典落語の一つ。

百両を運ぶ使いの男を泊めた宿の主人は、何とかその預かった百両をせしめられないかと悪知恵を働かす。
宿の裏手に茗荷が山程生えているのを利用して、茗荷をこれでもかと使った茗荷づくしの食事を出す。茗荷を食べると物忘れをすると言われるからだ。百両のことを忘れると踏んだのだ。
翌朝旅立った男を見送った後、悪だくみの首尾を尋ねる主人に使用人は
「あいにく百両の忘れ物はございませんでした。あ、宿代を払うのを忘れて行きました」

というオチ。

これです。
子どもの頃から忘れ物が多く、何か失くしてみたり忘れてみたり。
小学校でも家でも注意されてもなおらず、ランドセルを忘れて下校したり、やったはずの宿題のノートを忘れていたり。
注意されようが自身で気をつけようが性分というのはなおらないようで、いまだにずっとです。
ものの置き場所を忘れるのもしょっちゅうで、いつも何かを探しています。メガネとか財布とか。
子どもの時、注意ばかりされていた親に「昨日ミョウガ食べたからかね」と言われて、トホホという感じにに笑い話にされて、それで結構ホッとした記憶があります。
まあ何度言っても忘れるのでそうでも思った方が双方諦めもついたのでしょう。
逆バージョンで「昨日ミョウガ食べてないのにね」もあって、ミョウガを持ち出すことでしょうがないか、となるのは有り難かったのです。

香味野菜や香辛料には結構ちゃんと薬効があることも多いのです。
生姜は体を温めるとか、ニンニクは滋養強壮にいいとか。
そしてカルダモンは胃腸にいいとか、タマリンドは下剤になるとか、中国では漢方薬、インドではアユルヴェーダとして日常的に取り入れられています。

果たしてミョウガはどうか?本当に物忘れをするのか?
ネットでの情報では、食欲増進や血行促進に加えなんと頭をシャキッとさせるなどと物忘れとは反対のことが書いてありました。
単なる言い伝えに過ぎないのかもしれません。
まあ忘れ物が多いのはたるんでる証拠だと非難されても自分では気をつけても一向に改まらないまま歳をくってきたので、ミョウガをクッションにしてくれるなら嬉しいです。

ここで物忘れと書きましたが、物忘れと忘れ物は同じなのでしょうか?
私は忘れ物女王ではありますが、過去の記憶(とりわけエピソード記憶)は大抵の人に辟易されるほどやたらとあるのです。これでも物忘れというのか?しかし数字に関する記憶や日常の「あ、うっかりあれ買ってくるの忘れた!」的なのは年相応にあります。増えています。
どこの分野で忘れることが物忘れなのかが気になります。

ところで今の家に越して裏庭の草ボウボウと格闘していた18年前、上の写真のようなものに出くわし狂喜したのでした。
よく見りゃこれはミョウガじゃないか?と。

それまで店でちんまり切られた状態のミョウガしか知りませんでした。まさか繁っている葉の大きな正体不明の植物の根元の部分からこういう風に生えてくるものだなんて。大好きなミョウガが家の裏にあるなんて。
初めて見て植物全体の形態を知ったのでした。

知ってる人には当たり前だけどこうやって伸びていき先っぽに花をつける

後日隣の方から、隣家で植えたものがそちらに越境して増えてしまってるけれど、と言われ
「さっそく食べています。ミョウガ大好きなんで」
と答えてからほぼ毎年、ホクホクして収穫します。時折このように間引かないとミョウガ薮になる程ですが。
キュウリや青じそと共に浅漬けや、そうめんの薬味に。

ミョウガと青じそは勝手に生えてくるので大歓迎

あなたの家の裏にもどうでしょう?

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