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ネットカフェ難民の現在

 武漢ウイルスにより、非常事態宣言が出てしまった。今まで私の勤務しているお店では武漢ウイルスにやられた人は、一応まだスタッフを含め出ていない。毎日換気を徹底して、加湿もしっかり行い、備品の除菌を行っている。一応今の時点では功を奏している状態だ。今の時点では。

 出勤するとほぼ100%締め切られたドアを開けて、換気をする所からスタートする業務。怒るのはよくない事とはわかっているが、毎回こうして、しかも非常事態宣言が出ているというのに、まだ換気せずにドアを閉められるセンスと神経に対して、私の中に理解に傾く理由が存在しなかった。だから、私は天秤のかけかたを全否定して、徹底して換気を強制させた。でなければ、我々スタッフから武漢ウイルスにやられて、お客様を危険にさらしてしまうだろう。会社が休業しない以上、我々は想像力不足で危険を呼び込んではいけない。

 そんな状況の中、ネットカフェも営業自粛を要請される可能性が出てきている。が、ネットカフェには住み込んでいる人が多い。24時間常に居る人、寝泊まりだけの12時間で利用する人。勤務していなければ見ることのない世界が、ネットカフェには存在している。

 しかし、仮に会社が営業を自粛する判断を下した場合、この住み込んでいる人たちは路頭に迷ってしまう。彼らを保証の対象にするとは言っているようだが、自粛をしてしまった瞬間から、この住み込んでいるお客様は即座にホームレスだ。猶予なしで、退店したその瞬間から路頭に迷うのである。その判断を下せるお店は果たしてあるのだろうか?

 間違いなく会社は最後の最後まで自粛はしないだろう。住み込みのお客様の行く先が確実に用意出来ない限り。感情論で押し通す事で、危険に晒してしまう状況。

 営業を続けて感染させるリスクを上げるのも地獄、営業を自粛してホームレスを発生さえるのも地獄。

 かつて私はウンコ味のカレーとカレー味のウンコの話をしたことがある。そんなものはどっちを選ぼうと関係がない。選んだ事の理由をしっかり語れれば答えなんてどちらでも問題がない事を訴えた。

 しかし、選ばなければならない2択の重さとしては軽い。妊娠しました。産みますか、卸しますか?でどっちも嫌と言うバカはいない。そんなバカな回答をすれば、どちらかの結末を迎えるだけである。

 それでもしっかり先を考えて出せば答えの出るクイズである。

 だが、今会社が強いられているクイズは、イエスもノーも地獄である、最適解を選ぶ問いではなく、どちらの地獄を選ぶのかという選択肢である。

 まあ、どちらも選べないという保留状態だからこそ、現状は帰り道を無くした者を抱え続ける営業を続けているのだが。

 我々は現状そのどちらを選ぶことが出来ない世界で、今までと同じ職務を行っている。可能な限り換気を徹底させて、可能な限り加湿をしてウイルスの蔓延しづらい空間を作り、可能な限りお客様が触れるものの除菌を行い、1%でもクラスターにならないように努力をしている。

 例え数百メートル先の場所で感染者が出ている地域だとしても、そんな地域から流れるお客様が来店される可能性の中、我々は日々戦っている。

 大げさな話ではあるが、対国でなく、対ウイルスになった第三次世界大戦のようなものだと思っている。

 私が現在戦う戦場は、日常にあったネットカフェという小さな店舗の一つだ。

 少なくとも今日まで我々は見えない敵との闘いに負けずに今日を迎えている。

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