見出し画像

最近の話(最終回-中編-)

 今の待遇に満足が行かないというより、労働環境が好ましい状況ではなくなった事で、私は業務委託の仕事で何か出来そうなものを探す事を決意する。

 テレアポだったりライターだったり、広告作成だったり、色々軽く調べてみた。そしたら出てくる出てくる。以前の職場でやっていたような仕事に、在宅ワークで出来る内容が存在するではないか。

 それに気づいてからは、日々求人を探るようになった。例えば広告代理店なんかは、何らかの求人媒体の営業をかけて、その掲載の原稿を作成してと、やる事は簡単そうに見えて、結構お客様の所へ取材に行っては、打ち合わせをして原稿を作成してとやってきた。

 思い返せば毎回飛び込み営業をやっていたのだから偉い俺。と、確実にサボっていた癖に、真面目に仕事をしていた時の記憶だけはしっかり残っている。まあ、それもそうで、営業が終わって事務所に戻ってから原稿作成をしており、その時は一切残業代が出ないという最低な労働環境だった。それでもあの頃の方が多少給料は良かったには良かったが、あまりに疲れたり時間が取れない人ってのは、やはりどこかでストレスを発散しなければならないので、割と散財してしまうのだ。

 そんな事も思い出したのだが、末期の頃には結局営業前に原稿作成をある程度やりながら打ち合わせをするという、サボりと同時に仕事をする術を覚えた。何せ営業時間前に営業なんて出来ないので、カフェにこもって原稿を作っていた方がよっぽど有意義だ。

 しかし、在宅で今は営業もある程度かけられるし、原稿作成の打ち合わせだってはっきり言って電話で良いし、ライブカメラを使って行っても良いのだ。そして原稿作成に至ってはもう在宅で全然出来る。何せウェブ媒体であればプラットフォームに文章を入力したり、画像を張り付ければそれでいいのだから、態々事務所に行ってやるような作業ではない。

 こうして私は広告系の仕事を調べて履歴書や職務経歴書の作成を行い、とある広告代理店にてやりとりを始める。予定だった。

 その会社に履歴書と職務経歴書を送り、採用担当の方から何やら電話をしたいとの事で、都合の良い日時を3候補ほど送ってほしいというメールが届いた。次の面接の日程を決めるだけならメールで良いし、不採用であればそれもメールで良い。わざわざ電話の日時を聴いてくる事に意味が分からずにいた。もしかして電話面接なのか?それとも何かのやりとりを見られるのか?思いは色々巡る。

 しかし、いざ電話に出てみるとそれは業務委託からパート・アルバイト契約に変更したいという非常に舐めた内容且つ、かなり重要な内容で、とにかくふざけた電話だ。雇用条件が大幅に変わるので、志望者からしてみたらこれはもう詐欺も同然の出来事である。

 ただ、その時の私はとにかく今の職場から離れなければ、今の私を変えられないという状況だったので、一度はそのまま面接へ進むことを選んだ。

 それから再度面接の日程を組む形となり、私は新たに3つほど日時の候補を送った。ここまではまだ良かった。

 その後そのバカが言い出した事は「ポートフォリオはありますか?無ければ面接の時に色々お聞かせくださいう」というメールで、こちらに送らせた日時に対する返答が全くなかったのである。

 そうこうしているうちに、今の業務委託先との面接のやりとり、会社見学会へとどんどん話が進んでいく。流石にこの会社だけとやりとりをする気は無かったし、とにかくどこか業務委託契約を取りたかったので、送っていた面接希望日も日程が決まる前に重なってしまった。

 この段取りの悪さと、一連の流れからとうとう私は切れてしまった。

 そもそもの話として、まず業務委託からパートアルバイト契約に条件を変更したいという、詐欺まがいなふざけた内容の話の時点で既に頭に来ている。そんな大事な話を電話をする候補日を送らせておきながら、何日の何時に電話をするかの確定を一切行わず、候補日最後の時間にいきなり電話をかけてきたのだ。その非常識っぷりにも切れているし、ポートフォリオはありますか?だと?まずは面接の候補日を送らせているのだから、先に面接の日時を確定させるのが筋だろうがよ。そもそもポートフォリオとか求人票にまず書く事だろうし、そうじゃないなら書類選考の段階で要求するか、せめて面接の日程を決めてから原稿があるようなら提出をお願いしますと改めてお願いするのが筋じゃねえのかと。

 そういう怒りが湧いてきた所で、そもそもこの人に私の履歴を評価されると思う事が非常に不愉快極まりない気分になっていた。私は一応マネージャー経験もあるので部下を育てたり指導をしてきた立場である。そのマネージャーという立場としてこの人の仕事に対し、私ならメンバーチェンジを要求するレベルに段取りが悪いし、これ取引先のお客様にやってるの?って思ったら、とてもこの上司の居る会社で働きたいとは思えなかった。あくまで業務委託として探していたものの、パートアルバイトで入社をしたらこいつが上司になっていたのだから、とてもじゃないがちゃんと働けない。

 広告に関しては私もだいぶブランクはあるが、この段取りの悪い仕事の出来ないバカよりは絶対良い広告を作れるし、絶対お客様の信頼を得られる。私は現役の頃にお世辞にも仕事が出来るスタッフでもなかったし、割とサボるようなスタッフでもあったが、締め切りだけは守ったし、お客様との信頼だけは維持していた。こいつにはそれが出来ているとは到底思えなかった。

 そんな輩に私の仕事の評価をされたくないし、それこそ不採用なんて通知を受けようものならガン切れもいい所だろう。

 そんな事を考えていたら、最早自然に私はこれらのことを容赦なくメールに綴る形で、人生初の辞退をこの会社に伝えたのである。

 結果として今の業務委託先を見つける事が出来たし、在宅ワークを希望しているものの事務所は徒歩10分圏内なので、瞬くは通う事になるだろう。そして、こんなクソ会社に入社、それもパートアルバイトで入らなくてよかったなと本気で思った次第である。

 業務委託であればこの年でも割と仕事は見つかる事も分かったし、経験値を積みなおせる事も分かった。これは貴重な情報だ。

 年を取ると転職は難しくなるし、ハードルも高くなると言われている。実際にそれを感じる数か月でもあった。が、視点を変えたら見つかるよ?割と良い求人。結構あるよ?有利な求人。まあ、それも私が独身で且つ、フリーの仕事とバイトの掛け持ちという、割と年齢に対して冗談みたいな生き方をしているからこそ、バイトの仕事をフリーランスに変える事に対するハードルは低かった。

 これがそれなりの会社に勤務しており、結婚をして子供がいるような環境であれば、とてもじゃないが今の働き方は出来ないし、フリーランスになるという発想すらなかっただろう。これがまあ、幸せかどうかは別の話だが、少なくとも私は不幸だとは思っていない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?