見出し画像

待っているの|#シロクマ文芸部

りんご箱の中がわたしの世界。
この中でわたしは手ぬぐいのお布団と
ハンカチをかけられて眠っている。
わたしのとなりには
ままごとセットのカップとお皿。
くまや犬のぬいぐるみもいるわ。
絵本も二冊まるでかべのように
並んでいる。

片すみにクッキーの空き缶があって
中にはキラキラしたものが入っている。
わたしはそれを見るのが大好き。
夜中になるとこっそり
空き缶を開けてみる。

 これは何かしら、指輪かな。
 赤い宝石がとてもきれい。
 わたしの指には大きすぎるけれど
 冠にはなりそうよ。

 これは何かしら、ブローチだっけ。
 きれいなお花がリボンで結ばれて
 そのまま花束になりそう。

 これは何かしら、とてもキラキラしている。
 ダイヤモンドとか言うのかな。
 ご主人さまは耳にぶら下げて笑っていた。
 わたしはブローチにして飾ってみる。

ご主人さまがわたしの世界に
来てくれなくなって
どれくらい経ったのだろう。

わたしはいつまで
ご主人さまの宝箱のお守りをしていればいい?

またいつかわたしのことを
大好きと言って抱いてくれるかしら。


[約450字]
書いてて切なくなってきた… 

#シロクマ文芸部
#りんご箱




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?