あの空の色をなんと呼ぼう|#シロクマ感想文

ここしばらくの間noteを訪問するお時間が持てないような、で、これからは年末に向かうし、ますますnoteに寄られるお時間が無さそうな… でも、顔を出して記事を読まれたら、ご自分のわずかな余暇の時間をその記事を書かれた人への応援に変えてしまう、きっとそんな心優しい人。

秋の夕暮れの空を見て、ふと思い出した。こんな空の色を元にして、シロクマ文芸部のお題を毎週美しく昇華していたnoterさんを。


 今日も、あなたの写真の前で、藤色の日記帳に葵と日記を書いた。

「赤と青の日記」より

初めてのお話は、息子さんとお母さんの交換日記。
赤と青の色鉛筆で書かれた物語。この短編一本でも十分読み応えのあるものだ。

お母さんが、泣いていた。僕のために、泣いていた。僕は大丈夫だよ、お母さん。泣かないで。そう言うと、お母さんは、ぎゅうっと僕を抱き締めた。

「光る種の効能」より

心優しい少年は、いつも母親を大事に思っている。

 表紙は「葵色」。僕の名前の色だ。お父さんとお母さんの色が混ざった色。お父さんの優しさ、お母さんのひたむきさを受けて、すくすく育ってほしいとの願いが込められた名前の色。

「一冊の葵色の本」より

二分の一成人式で、庭の藤の木の下に思い出の本を埋め、成人後に母と掘り起こす。

そして、父と母の出会いの物語。

「……その、自意識過剰で恥ずかしいんですけど……僕、名前が『藍』でして」
「藍色の、藍?」
「はい。藤ノ木藍といいます」
「まあ! ふふ」
「え、笑いました……? いや、まあ、そうですよね」
「ごめんなさい、違うの。私も、名前、茜って言うんです。おんなじだなって、おかしくて」
「そうなんですか! あかね、さん。茜色のあかねさんですか?」
「ええ。川本茜です」
「そうでしたか」
「私こそ、恥ずかしながらずっと気にして、あなたの顔を面と向かって見られなかったの。ごめんなさい」
「いやいや。はは、なるほど」

「追憶の手紙」より

まだ知らない同士の頃、女性が仕事帰りに通り過ぎた川辺で「きれいな茜色だなあ」という大きな独り言を言う青年に偶然出会ったことから始まる… 私の一番好きなシーン。胸がキュンとする。


久しぶりに作った、この凍った星の溶けた梅酒を、星になったあなたと、分かち合いたくなったの。この星々のどこかにいる藍さん。あなたが採りに行ってくれた梅で浸けたものだから、もう三十年ものになるのね。葵たちの末永い幸せを願って、乾杯。
 鳴るはずのないグラスのぶつかる音が、静かな夜に響いた気がした。

「星になったあなたと」より

ついこの間まで子どもだと思っていた息子も、幼なじみの女の子と所帯をもつことになり、長いようでいて短かった日々を夫との思い出とともに振り返る。そんな母親の一人語りが切なくも美しい。


 咳をしても金魚。風邪が長引いていて、それでも金魚の水かえをする。金魚は繊細でもろく、定期的に水かえをしないとすぐはかなくなることを知っているから。

「金魚、家族、同僚と、僕」より

これは体調を崩し始めた父親の、幼い長男と楽しんだ多分最期のイベント金魚すくいの思い出の物語。まだ元気になるぞと前向きだった… 


 青空の下、校庭でみんなで分け合ったイチゴスイーツ、おいしかったなぁ。俺たちの作ったジャムは、ちょっと煮詰まって甘すぎて、でもトロッとしてとびきりおいしかった。

「イチゴ舞う校庭で」より

「一冊の葵色の本」を埋めた直後あたりからの回想録かな。そして葵と幼なじみの彼女との交流の始まりでもある。クラスでイチゴを育てて… そんなこともあったよね、なお話。とってもリアルな感じがする。

本当はもっと続く予定なのでしょうけれど、今はここまで。


是非、こちら ↓ の物語をご高覧ください。


そして、私と同じようにこの物語シリーズが大好きな方がこぼれ話エピソード編を描いていらして。そちらも、とても素敵な物語 ↓ なのです。

すーこさん、お元気でいらっしゃいますか。
お元気なら良いです。
また、お時間ができたら素敵な物語や短歌などをnoteに披露してくださいね。
いつまでも待っています。


#シロクマ感想文

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