お手伝い|#シロクマ文芸部
春と風邪薬を買いに行った。お母さんが風邪をひいたから、私が家事をしなくてはいけない。妹の春も、幼いながら「お姉ちゃんのお手伝いする」と言うので、残り少なくなった風邪薬を一緒に買いに行くことにした。
「お姉ちゃん、ママ、風邪治るかなぁ」
「熱が高いからね。でも、お薬飲んでいっぱい寝たら、元気になると思うわ。春も、風邪がうつらないように気をつけてね。家に帰ったら、何をする?」
「手洗い、うがい、でしょ?」
「よくできました!」
いつもだと風邪をひいても「大丈夫だから」と頑張ってご飯作ったり掃除したりするお母さんだけど、高熱で寒気がする…って、布団から出られないようだ。ここは長女の私が、少しでも役に立たないと。ちょっとでも、お母さんを休ませてあげたいな…と思う。
「お姉ちゃん!手洗い、うがいしたよ。次は何すればいい?」
「今日はカレー作るから、ニンジンの皮むきをしてもらおうかな」
「シューッシューッと皮をむくやつ、アレでね?」
「そう。ピーラーね。上手にできたら、ジャガイモもむいてもらおうかな」
「いいよ!」
私はお米を研いで炊飯器にセットした。お母さんにお粥でも…とは思ったけれど、食欲がないらしい。冷たいゼリーみたいな栄養補助食品を、少しずつ胃に流し込んでいる。
「お姉ちゃん、皮むき終わった。今度は何?」
「カレーにピーマン入れるのとブロッコリー入れるのと、どっちがいい?」
「ブロッコリー!」
「じゃあ、ブロッコリーを食べる分だけ取って、洗ってくれる?」
「わかった」
私は、春が皮をむいたニンジンやジャガイモを切り、タマネギも切って… お肉と一緒にお鍋で炒めた。
「春!お水を1000の所まで汲んで、お鍋に入れてくれる?1000って、0が3つだからね」
「1000 だね。あ、ちょっと超えちゃったかも…」
「いいよ。ちょっとくらいなら」
春がお鍋に水をバシャーッと入れたので、タマネギが二切れほどお鍋から飛び出した。
「ごめんなさい…」
「大丈夫。また入れて煮ちゃうから。次は静かに入れようね」
庭先から月桂樹の葉っぱを二枚取ってきて、お鍋に入れた。
「何で葉っぱを入れるの?」
「これは、お料理を美味しくする葉っぱなの。お母さんも使っているよ」
「知らなかった」
うちの庭には、シソやローズマリー、バジルなども植っている。春は雑草だと思っているみたいだけど。
煮込んでいる間に部屋を掃除しよう。
「春、掃除するから机の上の本とかを片付けてくれる?」
「いいよ〜。そして台拭きで拭くんだよね?」
「その通り!」
私は床を掃除機で掃除した。春はコロコロを出してきて、カーペットの上をコロコロさせている。これは、普段から春も好きな作業だ。私がやっていると「春がやる!」と横取りされるくらい。
キッチンタイマーの音が鳴った。カレーの煮込み時間が終わったようだ。火を止めてルーを割り入れ、静かに溶かす。月桂樹の葉も出した。弱火でコトコト10分位煮込めば出来上がり。ご飯も炊けているみたいだ。
「お姉ちゃん、お風呂の準備しないと!」
「あ、忘れていた。春、えらい!」
二人で風呂場を洗って、お湯張りをする。これで、食べ終わった後に、すぐ入浴できる。お父さんがいつ帰ってきても大丈夫だ。
「ブロッコリーをレンジでチンして、最後にカレーに入れたら完成よ」
「やったー!!」
そうだ。お母さんが汗をいっぱいかいていたら、着替えとか用意しないといけないかも。検温もしないといけないし。
お母さんを診にいったら、おでこに汗をかいて眠っていた。お薬が効いてきたのかな。汗をかいたら熱が下がるって聞いている。脱水しないように枕元に経口保水飲料とゼリーみたいな栄養補助食品を置いた。着替えと汗拭きタオルも一緒に。
「お姉ちゃん、カレーできたよ〜!!」
「春、お母さんが起きちゃう!」
春のことを叱りながら、自分も同じくらいの声でお母さんの横で大声を出していた。
「うふふ…」
お母さんが目を覚ましてしまったようだ。
「うるさくしてごめんなさい…」
「ありがとう。仲良く頑張っていたようね。助かったわ。本当にありがとう」
「こっちは大丈夫だから、ゆっくり寝てて」
「はい、ありがとう」
お母さんはにっこり笑って体を半分起こし、保水飲料を飲んだ。着替えは自分でできるから、早くカレーを食べてらっしゃい…と言った。
「ただいま〜!お、今日はカレーライスだな」
お父さんも早く帰ってきた。
「お母さんも食べられるかな…と思って、アイスを買ってきたぞ!」
明日になったら、家族4人一緒にカレーライス食べられるかな。一晩寝かせると、カレーは美味しくなるっていうし。
お母さん、早く元気になぁれ!
[約1900字]
小牧部長、いつも素敵なお題をありがとうございます。そして、素直に書き始めない私を許してください。
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