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2023年最後の一本。「光る校庭」を観て

2023年ももうあと数日。下北沢トリウッドでこの映画を観た。フライヤー表面のキャッチコピーは「ひと夏の出会いが、僕らを変えた。」裏面は「人って、死ぬとどうなるの?」。わたしは元々コピーライターなので、文字表現は大切にしている。人様が創ったものも、もちろんだ。表と裏の2本から想像すると、子供が死ぬんじゃないか、と容易に想像ができ、あまり見たくない印象。おそらく、通りすがりにこのプロモーションに出会ったなら、わたしは観なかったと思う。 なぜ観たのか、と言えば主演の梅垣君のお母さ

    • 生き生きと自堕落。「ハイ・ライフ」を観て

      Bad boysがそのままBad BIG boysとなり、ドラッグのために強盗を企てるジャンキーの物語。生き生きと自堕落な彼らから、トム・ウエイツの「I don't wanna grow up」が聞こえるようだった。 秀逸だ、と感じたのは、東出さんがベルトを抜くシーン。逸(はや)る気持ちが伝わってくる。そしてそのベルトを駆血帯にして、足の裏に注射針を刺す。強烈だった。最初は友人に打たせる。2回目は自分で。最初のシーンでこの芝居への扉は完全に開いた。入るしかない「生き生きと自

      • 対価。「無駄な抵抗」を観て②

        わたしのカフェは、黒字実績のないまま4年半で閉店となった。不動産屋には半年前に退出を告げなくてはならない。ジャニーさんには同じタイミングで閉店をお知らせした(電話番号からショートメールで)。その数日後、撮影中にジャニーさんから電話がかかってきた。※わたしの本業は広告制作 「ママ?今、テレビの人に代わるから。  ねぇちょっと!ママが出たから代わって!」 テレビの人?なんだろう。ジャニーさんから直接電話が来ているだけで十分に動揺しているのに。 「喜多川社長にはいつもお世話になっ

        • 通り過ぎる電車。「無駄な抵抗」を観て①

          <プロローグ> 嫌いだ。忘れたい過去を伝えてくる人。大切な記憶を踏み躙る人。 通り過ぎる電車。それはわたしの人生。わたしは幾つの駅を素通りしているのだろう。わたしがもう停車しない駅。思い出。過去。そこには誰がいて、何をしているのだろう。誰かまだあの場所で傷ついているのだろうか。それとも、もぬけのから?知らない人たちが増えて、皆で幸せに暮らしているのだろうか。 いつからか、幾つもの駅を素通りしている。それがわたしの人生。 2013年3月から2017年7月まで、わたしは渋谷区で

        2023年最後の一本。「光る校庭」を観て

          母性と母と。<後編>「結晶」を観て④

          育(そだ)てると育(はぐ)くむ 劇団5454のInstagramで見た「私は一緒に暮らしてるだけ」という橘禾のキャッチコピーは、わたしと被る。「子育て」という言葉はあまりにも上からすぎて、対息子に使ったことはない。全盛期、テレビや雑誌の取材で「仕事と子育て、両立の秘訣は?」と聞かれるたび「育てては・・・いないと思います。一緒に暮らしているだけで」と答えてきた。わたしの息子への日々は、同じ漢字でも育(はぐ)くむ、であり、育てるだなんて滅相もないことだ。本当にただ、一緒に暮らし

          母性と母と。<後編>「結晶」を観て④

          母性と母と。<前編>「結晶」を観て③

          招かれる人は多いが、選ばれる人は少ない。 (マタイによる福音書22:14) わたしは陣痛が来なかった。これは陣痛・・・なの?程度の、お腹の息子がそろそろ出たい、とノックした?かのような、その程度の痛みのみ。出産予定日から2週間を経過したため、母子の安全重視で帝王切開(手術)にて出産。産んだというより、取り出してもらった感が強く、産みの痛みが出産時の陣痛のことなら「お腹を痛めて産んだ」と言えないが、手術の場合お腹の子供に麻酔がかかると危険なため、脊髄からの最小限の局所麻酔で

          母性と母と。<前編>「結晶」を観て③

          杏平ゼロ。「結晶」を観て②

          <鷹野杏平に何があったのか考えてみた> 「昔はこうじゃなかった」というセリフが気になる。彼はなぜあんな風に顧客にズケズケとものを言うのか。何回か観て自然にそれはわかった。結論を言えば、彼は優しい人間なのだ。人間であろうとする、人間の形をした何者か、なのだ。彼はある日、本当の優しさとは何か、に辿り着く。その物語を極端な想像から綴ってみよう。あくまでも、とても極端なわたし個人の身勝手なストーリーだ。肯定も否定もいらない(わたしは反論に弱い)。では始めよう。まずは杏平の父(人工子宮

          杏平ゼロ。「結晶」を観て②

          作る・造る・創る。「結晶」を観て①

          ※ネタバレなので千秋楽までまだ観ていない人の目には触れませんように。 A-men 初日と三日目(12日13時)を観劇。 初日はあっという間の120分(誰もがそう言うだろう)。暗転を無駄使いしない春陽演出はいつもながら私好み。さて、知ったかぶりをして断定調に綴る感想なので、作家からも役者さんからも、いやいや全く違うから、と笑われる覚悟にて。 <おにぎりと栗之介> 初日カウントダウン中のSNSで見たお米2合(おにぎりデザイン)のネタ元(愚鈍な言葉だ。が分かり易さ重視)を知る。そ

          作る・造る・創る。「結晶」を観て①