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朝の贅沢|匠の技を間近に

京都の旅もそろそろ終りという木曜日、息子とお昼ごろに会う予定になっていたが、前日になって「やっぱりもう1箇所午前中に行きたいところがあるから、9時過ぎにホテルに迎えに行く」と言ってきた。ふむ、どこだろう。

翌朝。ホテルからバスで30分ほど、西陣・堀川今出川で降りる。
交差点を渡ったすぐ先にその店はあった。

「鶴屋吉信 本店」


と、息子は店の正面ではなく、すぐ横の通路を進み、奥の入口へ。
エレベーターがあり、2階が茶寮になっているのだった。

こちらではカウンター「菓遊茶屋」で生菓子の実演があり、出来たてをお抹茶とともにいただける。
ナイスだ、息子。


奥には坪庭、そして茶室「游心」がある。


静謐な空間ではあるものの堅苦しさはなく、日常から離れてほっとひと息つける空間だ。


さて、この日の生菓子はヘッダーに載せた「御園菊」、そして「綾錦」。
せっかくなのでお言葉に甘え、夫と息子は綾錦、私は御園菊と2種類作っていただいた。

最初から「お写真、ビデオ、どうぞご自由にお撮りくださいね」と言っていただけて安心する。


それでは「御園菊」をどうぞ。(音声はありません)


淀みなく流れるように、全く迷いのない手さばきが美しい。
これまで積み重ねてこられた時間が凝縮されているようだ。
なんだか神技のようだが(実際そうなんだけど)、これはどちらかというと基本的なもので修行を始めたころにたくさん練習したものですよと、さらりとおっしゃる。

続いて「綾錦」


美しい3つが出来上がると「お庭が見えるこちらがいいでしょうかね」と、お店の女性が奥のほうへ案内してくれた。私と同じぐらいのお年だろうか。穏やかにおおらかに、こちらが恐縮しないような気配り、なかなかできることではない。

庭を見ながら3人並んで寛ぐ


思い出すたびに心温まる


実は、茶寮は店舗から1時間遅れて10時の開店だったのに気づかず、その前に着いてしまっていたのだった。
そんななかでも「お待たせしてすみません。準備いたしますので、お店のほうへどうぞ」と案内してくださった。

裏手からのれんをくぐって真っ先に目を奪われたのが、床の大きな陶板。
そしてショーケースに使われている立派な一枚板だ。
写真を撮らせてもらってもいいか訊ねると快諾してくださった。

信楽かな、と思ったらやはりそうだった
なんとも味わい深い
あまり見ない大きな陶板
左下にちらっと見えている腰掛けも立派
家にもほしい(どこに置くんだ?)
そしてこちら、商品の並ぶ台は立派な栗の一枚板
現在はこの大きさのものはなかなか取れないらしい
「バブルのころだからできたことかもしれません」
と笑っていらっしゃった


茶寮が開くまでしばらく店内の様子を拝見していたが、店のご主人をはじめ、ひとりひとりがマニュアルでない「もてなしの心」を持っていきいきとお仕事をされているようにお見受けした。
今や「鶴屋吉信」は全国で展開されているが、機会があればぜひ本店を訪れ、その佇まい、豊かさを味わっていただきたいと思う。

朝のよい時間を過ごさせていただいた鶴屋吉信本店のみなさま、そして案内してくれた息子に感謝したい。


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