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窓際サラリーマンのサバイバル農業28-美味いビールをぐびっと ラッカセイ-

第一節

「さあさあ、風呂上りはこれネ」
 テーブルの上に置かれたキンキンに冷やされたグラスとビール。義理の母ちゃんン家、野良作業お手伝い後の定番風景。
“スカッと一発、うまい!!” CМさながら、まさにこの一言に尽きる。
 続いて出されたのがザルに盛られた乳白色のアテ。見慣れたようなものではあるが、何かは認識し難い。
「生ラッカセイだよ。食べてみな、うまいよ」
 そうか、ラッカセイか。ふつうスーパーで売られているものは乾燥させて薄茶色になっているが、これはナマなんだな。茹でたてで手触りもブヨブヨ。何かの出来損ないのようでどうも気持ちが悪い。しかし折角のもてなし、箸を付けない訳にもいかない。嫌々でも口に運んでみると――。
“旨い!”
 今まで食べたことのないような食感、風味。さすがは酒呑み母ちゃん、いつの間にか最高の酒の肴を栽培していた。
 五年前のことである。
 
 さて2023年5月。何気無くテレビから漏れ出る夏の天気予報。「今年の夏は猛暑日が続くでしょう」と、がなっている。
 そうか。じゃ、ビールが美味く飲めるなっと思い描いていたところ、ふと思い出したのがアテの生ラッカセイだ。
 そう言えばスーパーでも産直でもなかなかお目に掛かれない。調べるに、収穫して新鮮なままで食するならば当日か翌日。あとはお菓子売り場で並べられているように、カラカラに乾燥させないととにかく足が早い作物のようだ。
 
 手に入らなければ作る! これしかない、まずは土作りだ。
 立地とするところは日当たりが良く排水性に優れるところ。なので、土壌改良として真砂土を20㎏/㎡投入。次に石灰。これは空き莢が多くなるのを防ぐために、カルシウム補給という観点から欠かせない。一般的撒布量100g/㎡で様子をみる。
 最後に元肥。鶏糞を窒素4g・リン酸12g・カリウム12g/㎡になるよう計算し畝に投下。有機施肥での㎡あたりのこの計量は厳密にはいかないが、ラッカセイ株の根粒菌が窒素を作り出すとのことで、窒素成分だけは少なくするのがミソらしい。
 畝立ては幅70㎝・条間50㎝・株間30㎝を頭に入れておくのが基本だ。
 
 そして、土作りの合間に発芽作業。完成した畝に種を直播きでもよいが、カラスやハトに食べられてしまうことも多いとのことなので、ポットを活用してみる。
 深さ3㎝、横向きに1粒。湿気に弱いので、土を湿らす程度の水遣りで様子をみる。あとは本葉が2~3枚になった頃、畝へ移植だ。

特性温室ハウスで芽出し

第二節

 さて、種播きから二週間後。ぽつぽつとポットから芽が出てきている。
 さらに二週間後。収量性が高くあっさりとした甘みとされる“中手豊(ナカテユタカ)”・濃厚で独特な風味とされる“千葉半立(ちばはんだち)”・ふつう品種の二倍ほどの大きさになり、栗のような風味とされる“おおまさり”と三品種を播いてみたが、中手豊種が一番発芽率が高かった。ラッカセイと一括りに言っても、水遣りに気候・気温、諸般の育成環境が微妙に異なるようだ。
 発芽したものはこのあたりで三葉に育っているので畝に移植だ。植え付け後の水遣りも、土を湿らせる程度であるのは種播き時と変わらない。
 
「咲いた花の付け根から子房柄と呼ばれる細い茎のようなものが伸びて、それが地中に向かって埋まり実を着ける」とはラッカセイの着果のことだ。
 いまいちピンと来ないが、七月も後半になってくるとそれらしきものが見て取れる。百聞は一見に如かず。ほぅと思いつつも、この時期にやる作業が「土寄せ」だ。
 土寄せとは花の咲き始めの頃、子房柄が土の中に潜りやすくなるよう株元へこんもりと土を寄せる作業のことだ。この時、中耕と言って、根を傷付けないよう株回りの土をスコップで砕き柔らかく盛っていくことが重要だ。花の位置から地面が遠かったり土が固いと、子房柄が土の中に潜るとこが出来ずラッカセイの莢が実らないらしい。
 同時に追肥も行う。施肥は標準化成8:8:8を株元に30g程度。一連の作業をまとめると、花の咲き始めに中耕・土寄せ・追肥の三点セットだ。
 
 斯くして一回目の三点セット作業から三週間後、二回目の土寄せを行った。二回目の作業は中耕と追肥は必要としない。柔らかな土を満遍なく寄せ集めて“サケのアテ、希少なアテ”と呪文を唱えるのみ。
 絶品モノを収穫することが出来るか!? 九月中旬以降、下葉が黄色く枯れ始めてきたら収穫ごろだ。

種播きから一ヶ月後。品種によって発芽率に差が出た
三葉前後で畝に移植
中耕と土寄せと追肥。緑テープでマーキング部は下に伸びる子房柄①
中耕と土寄せと追肥。緑テープでマーキング部は下に伸びる子房柄②

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