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白い砂糖は悪魔なのですか?①

(この記事はメールマガジンバックナンバーからの転載です。定期購読はこちら。)

砂糖。なぜだかあらゆる健康法から目の敵にされている感じがする食品なんだけど、もともとこれが薬として使われていたって知ったら、みんなどう思うんだろう。

一番最初に砂糖を薬品として使ったのはギリシャ医学だったようです。「ディオスコリデスの薬物誌」に掲載があります。これが1世紀ごろのこと。次に砂糖が薬として、イブン・アルバイタール『薬種・薬膳集成』に記されているのはイスラーム医学で、13世紀ごろ。

15世紀には東洋医学の古典、『本草綱目』に砂糖は薬品として収蔵されています。もちろん、西洋医学の発達する以前のヨーロッパ各国でも、砂糖が万能薬に近い扱いを受けていました。だいたい、この傾向は18世紀になるまで続いていたのよ。

砂糖の薬効は、ギリシャ医学では痛み止めとかすみ目の治療、イスラーム医学では胃の諸症状・尿閉・嗄声・呼吸困難に効くとされ、性質は熱・湿性とされていました。東洋医学では、白砂糖の性質は甘・寒で肺を潤し、黒砂糖の性質は甘・温で消化器症状を癒すとされ、14~15世紀のヨーロッパでは主な薬効は熱冷ましでした。ペストにすら砂糖は効くとされていたくらいでね。その頃の砂糖はとても高価で、最上級の薬品として用いられていたのです。

18世紀になると、砂糖の薬効に関して懐疑的な医学者が増えてきます。どうも、虫歯が増えるみたいだ……って気づいてくるのね。でも、砂糖そのものを蛇蝎のごとく忌み嫌う論調ではありません。

一体、どこから砂糖は白い悪魔だ……って立場が生まれたのか。『砂糖病―甘い麻薬の正体』。と言う書籍があります。
http://www.amazon.co.jp/dp/4817071982/ 

内容は、砂糖がいかにして世界に広まっていったか、それがどれほどカラダに悪くて倫理的にもとんでもない、罪悪の結晶みたいなものであるかを事細かに記してある書籍なのだよー。

トンデモ本かと思うとそうではなくて、この書籍は砂糖害悪論の立場から書かれた砂糖の歴史書と言えるものでした。西洋における砂糖害悪論には、奴隷貿易を行った白人の歴史への自責の念も含まれていることがこの本を読むとよくわかります。砂糖の歴史から観るなら、確かに砂糖は奴隷の血と汗と涙によって生まれ、それを搾取した白人に巨万の富をもたらした、恐ろしい罪を背負った食材なのです。

で、この本でうかがい知れることは、様々な健康法に置いて、砂糖を悪魔のように忌み嫌う風潮の原点となったのは、マクロビオティック創始者の桜沢如一だってことでした。おそらく、はっきりとした著作では『砂糖の毒と肉食の害』(昭和15年(1940)出版)でしょう。
http://ci.nii.ac.jp/ncid/BA4249327X 

彼は1940年以前から既に砂糖と肉食がカラダに悪くて毒だという論説を発表していたのですよ。1940年は太平洋戦争勃発の前年、第二次世界大戦中です。物資欠乏で肉も砂糖もほぼ存在しないですね、日本の家庭の台所には。

この書籍の中にはある人物の名前が登場します。みんなケロッグのコーンフレークは知ってるよね。「ケロッグ」って、人名だって知ってた? ジョン・ハーヴェイ・ケロッグ博士、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%82%B1%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%B0

彼はアメリカのバトルクリークで大規模な病院兼健康施設の院長を務めた人物です。190年にコーンフレークの開発に成功した彼はアメリカでの健康ブームの火付け役となり、彼の唱えた菜食主義や様々な健康法は、トーマス・エジソン等錚々たるメンバーが実践していたのです。

ケロッグ博士はセブンスデー・アドベンチスト教会というキリスト教系新興宗教団体の信者であり、その協会で禁止されていた砂糖を食事に加えることを嫌っていたようです。ケロッグ博士の活躍した時代を鑑みると、桜沢の砂糖を忌避する思想がケロッグ博士の思想に影響をうけたものだと考えることも出来るのではなか……というのが、私の現在の推論です。何故なら、桜沢如一の師匠にあたる石塚左玄の説では、そこまで砂糖を忌み嫌う論調が見当たらないからなのです。

(続きます)

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