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オンディーヌ〜水の精〜によせて - Ondine

オンディーヌ〜水の精〜によせて

オンディーヌは 気まぐれに微笑(わら)う
あるときは 勢いよく躍(は)ねるしぶきのように
またあるときは ゆるやかな波のように

オンディーヌは 愛を知り 魂を宿す
それは 枯れることなく湧く井戸のような喜び
    水面に映る太陽のような煌(きらめ)き
    絶えることのない噴水のような豊かさ
それは 波間に揺蕩(たゆた)う小舟の揺らぎ
    つきまとう雨音と滴(したた)る憂鬱
    掬(すく)っても掬いきれない悲しみ

涙は 拭(ぬぐ)っても 拭っても
泉のように 川のように 湖のように
湧き出て 流れ 息ができないほどに溢れ
いつしか 水底に引きずられて
漂いながら 沈み
しずかに消えてゆく

© 2020 Litsuco Hoshi All Right Reserved.

先月(9月13日(日)19:00〜)、ピアニストの佐藤氏と「水に浮かぶ詩(うた)」と題して、ピアノと朗読のライブ配信をしました。
水にまつわるピアノ作品と詩を取り上げ、生演奏と朗読にトークを交えて配信するという企画で、わたしにとっては初のYou Tube生配信、久しぶりの朗読でした。

そのなかで、ドビュッシー作曲の《前奏曲集 第2集より第8曲 オンディーヌ》の演奏と合わせて、自作の詩「オンディーヌ〜水の精〜によせて」を朗読しました。
オンディーヌは、四大精霊のうちの水を司る精霊で、フランス語で、オンディーヌ Ondine、ドイツ語ではUndine ウンディーネ、英語ではUndine アンダインなどと呼ばれます。湖や泉などに住んでおり、性別はないとされていますが、ほどんどの場合、美しい女性の姿をしているとされており、人間との悲恋の物語が多く伝えられています。小説や戯曲、バレエ、オペラなどにもなっていて、ラヴェルやドビュッシーもこの水の精霊を題材にして作曲しています。
ドビュッシーは、1912年、パリで開催された挿絵画家アーサー・ラッカムの展覧会へ娘のシュシュとともに出かけ、そこで、フーケーの童話『ウンディーネ』の挿絵と出会い、着想を得たことで「オンディーヌ」という作品を作曲しました。

今回、この配信に向けて、わたしもこのフーケーの童話を読み、あらすじとしてお話をまとめ、この童話の中の文章を引用して朗読をと思っていたのですが、この物語からインスパイアされ、詩を書くことにしました。それがこの「オンディーヌ〜水の精〜によせて」です。

今回のように、本を読んで詩作をするというのは初めての試みでしたが、自然な流れで創作することができました。また機会があれば、こういう書き方もしてみたいと思います。

こちらは先日のライブ配信の「オンディーヌ」の部分を抜粋したハイライトバージョンです。
【朗読とピアノ】オンディーヌ~水の精~
あらすじ(朗読)---> 詩(朗読)---> ピアノ演奏

あらすじ
 
人里離れた湖のほとりに暮らす漁師の夫婦のもとに、ある日突然、幼い女の子オンディーヌが現れます。この夫婦は、我が子を水難で失ったばかりで、そんな時に現れたオンディーヌを養女として迎え入れることにしました。オンディーヌは漁師夫婦のもとで美しく成長していきました。

オンディーヌがやってきて15年の年月が過ぎたある日のこと、馬を連れた若く立派な騎士が、森に迷い込み湖にたどり着いて、漁師の家に宿を求めてやってきました。騎士がしばらく家に滞在したことで、オンディーヌと騎士は惹かれ合い、二人は結婚します。そして結婚に際し、オンディーヌは自分が人間ではなく水の精あること、結婚によって人間と同様に魂を得たことを騎士に告げたのです。

オンディーヌと騎士は幸せに過ごしていましたが、それは長くは続きませんでした。水の精との暮らしには、守り続けなくてはいけない約束がつきまとうからです。

騎士がオンディーヌを罵倒してしまったことでその約束は破られ、オンディーヌは人間界にいられなくなり、水の世界に帰ることとなりました。さらに、その後騎士が新たに妻を迎えようとしたことで、オンディーヌは夫である彼を殺さなくてはいけなくなったのです。オンディーヌは愛する夫を殺し、やがて自分も死を迎えたのでした。

参照:『ウンディーネ』原作:M.フーケー,絵:アーサー・ラッカム,訳:岸田理生 新書館

こちらはライブ配信のフルバージョンです。
【全編生演奏】水面に浮かぶ詩 ― 朗読とともに味わうピアノ曲 ―
2020 年 9 月 13 日[日]19時 開演
としま区民センター 小ホール(東京)
※生配信後のアーカイブです。00:06:41より開演いたします。





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