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横浜Love Story 第5話 "恋愛小説で学ぶ中国語"

 現在、amazonで発売中の「横浜Love Story・恋愛小説で学ぶ中国語」の全15話の内、中国語解説を除いた本文ストーリーの一部をご紹介します。

--- これまでのあらすじ ---

 主人公の草間圭は横浜のとある会社の企画部で働く独身33歳。ある日、彼の部署に台湾人の新入社員が配属されてきた。彼女の名前は加藤香織(日本語名)。日本人の母を持つ彼女は、日本語ペラペラの23歳。この10歳も年の離れた新入社員に、草間は一目惚れしてしまったのである。
(著者:りとるけい/中国語監修:YayaLee)

第4話 はじまりはマグニチュード5.0


◇ ◇ ◇

第5話 過福はあざなえる縄のごとし


 エレベーターの復旧作業が完了するまでの間、密室で二人きりになってしまった俺は、大学出たての小娘に対して、年甲斐もなく緊張してしまった。

(何か話さなきゃまずいな・・・)

 加藤は加藤で、少し緊張しているようだった。

「お、おい・・・」

 そう話しかけると、加藤は話しかけられるのを待っていたかのように嬉しそうに俺を見た。

 くそ・・・マジでかわいいな・・・

「か、加藤は・・・」
「はい」
「ネコが・・・好きなのか?」
「あっ、はい!ネコ大好きなんです!」

 くそ・・・なんでこんなにかわいいんだ・・・

「俺はな・・・」
「はい?」
「どちらかいうと、えっと、犬だ・・・」

(ひ~~何言ってんだ俺は・・・)

「あ、ワンちゃんも可愛いですよね。でも、あたしはやっぱりネコが好き」

 加藤はそう言って小さな声で「にゃ~」と鳴いた。

「ははは、そっか・・・」
「はい、そうなんです~」

 俺たちは、エレベーターの床にしゃがみ込んだまま、そんな他愛もない話を繰り返した。

「あの・・・草間さん・・・」
「なんだ?」
「中国語、喋れるんですか?」
「あ、いや、少しだけだ。大学時代にちょっとやってただけだから・・・」
「じゃあ、本当によろしければ、朝の中国語、一緒にいかがですか?」

 俺は誘われてうれしかったが、「あ、いや、いいよ俺は」と断った。

 加藤は、俺の顔を覗き込むようにしながら「そうですか・・・」と、少し残念そうな顔をした。

「あ、いや・・・実はな・・・やりたくないわけじゃないんだ」
「え?」
「なんというか、根岸や遠藤たちと一緒だとなんとなくな・・・」

 そんな風に言うと加藤は、「そうですか・・・」と少し黙りこんで、何かを考えているようだった。

「加藤と中国語で話してみたいな・・・と、思うことはある」
「え?」

(や、やばい・・・)

「あ、いや、別に深い意味はないんだ」

 俺は、なんとなく煮え切れない態度をとっている自分が情けなくなってきた。こんな俺の態度を加藤はどう思っているだろうかと考えると、胸が苦しくなるような不思議な気持ちになってきた。

(やばいな・・・マジで俺はどうかしてるぞ・・・)

「あ、それじゃあ・・・」
「ん?」
「こうゆうのはどうですか?」

 加藤は、俺の顔を覗き込むようにして見つめた。

「なに?」
「草間さん、もし、お休みの日に時間があれば、私と一緒に勉強しませんか?」

--- え????

「わたし、草間さんと中国語でお話ができたらすごくうれしいです」
「え?」
「土日、たとえばスタバで一緒に勉強するんです」

(なんと!!!)

「私は、草間さんに中国語を教えますから、草間さんは私に企画のお仕事のことをいろいろ教えてくれませんか?」

(な、なんだこの展開は!!!)

 俺は、加藤の提案に耳を疑った。

「あ、いや・・・それは嬉しいけど、せっかくの休みに俺と一緒に勉強なんて、加藤はいいのか?」
「いいのか?って、いいに決まってるじゃないですかぁ~!」
「本当に?」
「本当です。わたし、草間さんと一緒に勉強したいです!」

(どひゃ~~~~!!!!)

 まさか、あの地震の恐怖のご褒美に、こんな幸せが舞い降りてこようとは!!!

--- 過福はあざなえる縄のごとし

 悪いことの後には良いことが起こるというのは、本当のようだった!

 その瞬間俺は、地震の恐怖などすっかり忘れ、これから訪れるだろう幸せな未来を空想し、すっかり上機嫌になってしまった。

 やがて、復旧工事が終了しエレベーターが開くと、エレベーターホールで会社の皆が不安そうな顔つきで俺たちを迎えてくれ、口々に「大丈夫ですか?」とか「大変だったですね」と声をかけてくれた。

 俺は、加藤との出会いをワンステップ親密にしてくれた地震に、恐怖どころかむしろ感謝をしたいような気分で、「心配ご無用!」と叫び、カカカカと高笑いをしながら去って行ったから、皆は一様にこれに驚き、「やっぱり草間さんは凄すぎる」と、評判を更に上げたのであった。


◇ ◇


オフィスに戻ると、加藤から早速メールが来ていた。

(うぉ!加藤からだ!)

俺は、まるで中学生のように心が躍るのを感じていた。そして、早速メールを開いて更に驚いた。

--- 中国語のメールだった・・・


◇ ◇ ◇ 

草間先生,

剛剛真的非常謝謝你。
雖然被地震嚇到了,
但跟你在一起,就覺得沒那麼可怕了。
你再傳LINE告訴我你方便學中文的時間吧。
很期待跟你一起學習。

LINE:kaorin****

P.S.中国語読めなかったら教えてください。日本語で再送信します。

香織
 
◇ ◇ ◇


 俺は、Google翻訳でメールの大体の意味を把握してから、それぞれの単語の意味を細かく調べ、この愛しい中国語メールの読解に没頭した。

 加藤のLINEのID・・・ゲットだぜ・・・

◆ ◆ ◆

 第5話では、まだストーリーの序章なので中国語会話部分が少ないですが、最後に中国語のメールが出てきます。書籍では、このメールを詳しく解説していますが、興味のある方は、コピペしてGoogle翻訳してみてください。意味はわかると思います。

横浜Love Story  第4話 はじまりはマグニチュード5.0


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