この前の土曜日から、実家に帰省している。
風呂に入るたび、お湯の設定温度が39°Cなのに引っかかる。

今日の晩飯終わり、「温度設定が39°Cなの、温くない？」と親に聞いてしまった。
何を隠そう、俺の家の温度設定は42°Cなのだ。
カレーは中辛のニャースは、驚愕するだろう。
夏でも、熱いのが好きだ。
「年中シャワーのくせに、熱いの方が良いんだ笑」と母親に言われる。

夏場の実家は、シャワーの日と湯を張る日を1日おきに変えているらしく、今日は湯を張る日だった。
22時頃、俺は湯を張るボタンを押した。
もちろん温度は、42°C。

ボタンを押せば湯が張られ、追い焚きもしてくれるなんて、なんて素晴らしい機能なんだ。

「お風呂が沸きました」という音声が流れ、脱衣所へ向かう。

脱衣所で意味もなくスマホをする時間が誰しもあると思うが、それをしている時、東海オンエアの控え室の通知が来た。
早く見なくては、と思い服を脱ぐ。

頭を洗い、体を洗い、湯船に浸かる。
我ながらお湯が熱く感じた。
41°Cでも良かったかもしれない。

YouTubeを開き、東海オンエアの控え室の動画を見る。
結婚、本当におめでたい。
20分強あるその動画を全部見るつもりだったが、半分ほど見たところで急激に「のぼせるっ！」という気がして湯船を出た。
風呂上がりはいつもめまいがするが、今日は桁違いの強さだった。
霞む視界のなかで、タオルを片手に脱衣所にある扇風機のスイッチを押す。
めまいで立っていられない。
何かに手を置いて体を支えようとしていた気がする。

気がついたら脱衣所で寝転がっていた。
お世辞にも綺麗とは言えない脱衣所の床で、寝転がっていた。

右顎が痛い。
耳鳴りがする。
頭がクラクラする。
立てる気もしない。
おそらく、めまいで気を失って大転倒したんだろう。

とにかく立てない。
焦点も合わない。
とにかく、俺は全裸だ。
どうにか上体を起こす。
立ち上がる。

耳鳴りも目眩も止まらない。

洗濯機上に置いたパンツを履く。

体もろくに拭いていないから、張り付いて全然上に上がらない。

目眩がする。
洗面台に掴まらないと、立っていられない。

洗濯機の上のTシャツを手に取る。
体もろくに拭いていないから、張り付いて全然着れない。

目眩がする。
ただ、つかまり立ちをしてられる自信がなかった。
きったない洗面所じゃなくて、ベッドで寝転がりたい。
自室のエアコンは27°Cにしているはずだから、とにかく涼しいところに行きたい。
ひんやりとしたタオルケットに抱きつきたい。

俺の部屋は階段を上がってすぐ左手に位置している。
目眩と耳鳴りのまま階段を上がるのは怖すぎる。
確か、リビングに父親がいる。
階段から落ちようものなら、変に心配をかけてしまう。

ほぼ四つん這いの状態で、階段をよじ登る。
無事部屋に辿り着き、ベットに横になる。
タオルケットに抱きつく。
最高だ。

ベッドに横になった時、自分がメガネをしていることに気がついた。
いつメガネをかけたのか、マジで覚えていない。

視界も安定し、耳鳴りも無くなった。
でも、右顎がめっちゃ痛い。
触ってみると、ちゃんと腫れている。

そんな中で、当たり前のように東海オンエアの控え室の続きを見る。

途中、脱衣所の明かりと扇風機を消してない気がついた。

階段を降りる。
自ずと歩みも慎重になる。

無事に脱衣所の明かりと扇風機を消し、リビングへ行くと父親が爆睡していた。
食卓に、つまみであろうカルパスが放置されていたので、右側の奥歯で噛んでみた。
めちゃくちゃ痛かった。
そこで、別の嫌な予感がした。
前歯に、身に覚えのない鋭利な箇所があるのだ。
鏡で見たら、めっちゃ欠けていた。

右上の2番目の前歯の端が、ばっこり欠けている。

そこでもう一つ確認しなくてはいけない事項ができた。
それは「欠けた歯に飲み物がどれだけ染みてしまうのか」である。

帰省中、あと2回飲みの予定がある。

とりあえず、冷蔵庫の麦茶を飲む。
染みない。

次に、コーラを飲む。
染みない。

その中でも一番知りたいのは、「レモンサワーが染みるかどうか」である。
こればかりは死活問題。
ただ、そのためだけに500の缶を開けるわけにはいかないので、まあ、賭けるしかない。

「風呂は42°Cっしょ」と半ばイキってしまった自分も悪い。
いつもと明らかにレベルが違う目眩に立ったまま耐えようとしてしまった自分も悪い。

今後はお湯の温度を41°Cに下げるし、目眩がしたらたとえ全裸だろうが座ることにする。

歯が欠けた、というのは急いだ方がいいのだろうか。
地元にいた頃利用していた歯医者へ駆け込んでもいいのだろうか。
それとも最寄りにしている歯医者で診察を受けた方がいいのだろうか。

三四郎の小宮さん、めちゃくちゃすごいかもな。

#301 　脱衣所大転倒物語〜右顎痛いし歯も欠けた〜