「ねぇお兄さん、これあんまり売れてないの?」

お母さんに連れられて、幼稚園生くらいの男の子がレジに来ました。
その男の子は、僕の左前の位置に立って僕のことを見上げていた。
そこで男の子が一言、「ねぇお兄さん、これあんまり売れてないの?」と話しかけてきた。
「これ」とは、お菓子の家が作れるキットのことだ。箱を立てて入れても、カゴから頭を出すくらいで、結構大きな商品である。
あまりに純粋な目で男の子が聞いてくるので、「なんでそう思うの?いっぱい置いてあった?笑」と男の子に話しかけました。
レジ打ちをしている途中に普通におしゃべりをする機会は今までなかったので、すごく新鮮でした。
僕の問いかけに対して男の子は、「高そうだったから」と返してきました。レジから目をやると、見える位置にお菓子の家のキットが置いてあるのが分かり、商品が1000円だということが分かった。
なので僕は「1000円もするもんね〜」と答えた。
すると男の子は、また「ねぇお兄さん、これあんまり売れてないの?」と聞いてきた。僕が質問に答えていなかったのが、男の子にバレていた(のかもしれない)。
なので僕は、「これをレジでピッしたの今日が初めてだから、売れてないのかもね〜」と言った。
すると、その会話にお母さんが入ってきて「そうなんですね〜笑」とだけ言ってきた。
そのタイミングでバーコードのスキャンが終わったので、僕は会計を自動支払い機に転送しました。

去り際に、男の子とお母さんが
男の子「お母さん、これ誕生日ケーキみたいにできるかな?」
お母さん「ちょっと難しいんじゃない?いいじゃん、後でケーキも買いに行こうよ」
男の子「えっ!いいの?」
という会話をしていました。
勝手な想像ですけど、多分男の子の誕生日が近いんでしょう。

お母さんに豪華な誕生日ケーキを買ってもらって下さいね。
男の子、誕生日おめでとうございます。
その一年が、とても素晴らしい年でありますように。



男の子とお母さんがお店からいなくなった頃、思ったことをそのまま言うなんてこと、普段生きててあんまりしていないなと考えてしまいました。

”純粋な目”がない僕は、本音を言ったら許して貰えるんだろうか。





自分の母親と同じくらいの年齢のお姉さんが、自動支払い機で支払いを済ませた後に僕の方へ軽くお辞儀をしながら「どうも〜」と言って袋詰め台へ歩いて行きました。初対面の人に「どうも〜」はなかなか言わない気がするので、おそらくお姉さんが僕のことを認知してくれているんじゃないかなと思いました。月曜と金曜のバイトでよく見かける印象のあった物腰の柔らかくて優しいお客さんだったので僕は覚えていたのですが、お客さん側から覚えてもらっている可能性があるというだけで少し嬉しくなりました。

#214  「ねぇお兄さん、これあんまり売れてないの?」

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