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嗚呼、このまま世が”明けなければ”

 バイト中、特にレジ打ちの暇な時間はネガティブな考え事が異様に捗ります。
なにせバイト中は手元にスマホがないので、これくらいしかできることがありません。

 バイトで失敗をしたりすると途端にそのことしか考えられなくなって、カゴの商品を詰め替える作業が露骨にぐちゃぐちゃになってしまいます。
商品をレジに通すあの作業はテトリスみたいなもので、バチコーンとハマる時は気持ちいいくらいに行くのですが、ハマらない時は本当にガッチャガチャになってしまいます。

 そしてこれが今日もありました。


 とあるお客さんが自動会計機で、最後の「お会計」ボタンを押さずに退店してしまっていました。
自動会計機からは「お支払いを完了する場合にはボタンを」的な音声がなっていました。
僕がそれに気がついたのは、次のお客さんのレジ打ちを始めた時でした。
そのボタンを押さないとどうなるのかというと、レシートの発行が行われず釣り銭があった場合はそれも出ません。
僕のバイト先の自動支払い機は、微小な警報音がなる場合が2つあり、「長時間支払いが完了されない場合」と「釣り銭の受け取りが行われていない場合」です。
レジに店員が常駐していない薬局やコンビニなどは別だと思いますが、レジ担当はバーコードをスキャンしときゃ良いという訳ではありません。
釣り銭を受け取らない客、会計ボタンを押さずに場を離れる客、財布やポイントカードを置き忘れる客などがいるので、顔立ち・性別・年齢層・服装・人数・同行している人などを頼りに誰がどこの会計機で支払いを行い、袋詰め台のどの位置で袋詰めを行なっているのかも把握していることが望ましいです。
それでいて次の客のレジ打ちも行う必要があります。
もうマルチタスクどころの話じゃありません。
ただしこういったお客さんが毎日いるわけではないなく、稀にいるくらいのものです。
それが今日でした。
言い訳でしかありませんが、レジに長い列ができていて焦っている時に限って現れます。
これも言い訳でしかありませんが、今日は次にいたお客さんがカゴ3つをパンパンにした人だったので、余計に。
お客さんの顔を覚えて、どこで袋詰めしてるのかを把握する作業を僕は完全に怠っていました。
 次のお客さんのレジ打ちをしている時に、前のお客さんの会計ボタンの押し忘れに気がつきましたが、時すでに遅し。
もう誰が押し忘れた人か分かりません。
自動支払い機の画面を確認した後、走ってその立ち去ったお客さんなんじゃないかと謎の確信を持って声をかけに行ったのですが、人違いでした。
めちゃくちゃ困惑した顔をしていて、めちゃくちゃ申し訳なかったです。
本当に申し訳ないです。
そもそも、こういうことが起きた場合はレジ担当じゃなくてサービスカウンターに常駐しているバイトリーダーさんを呼んでその人に対応してもらうべきなんですよ、実は。
レジ打ちをしている途中なら、尚更。
でも、僕はテンパリすぎて自分で対応しようとしちゃったんですよね。
お客さん側からしたら意味わかんないでしょ、レジ打ち中の店員がどこかに行っちゃうのなんて。
声かけたけど人違いで僕があたふたしているうちにバイトリーダーさんが来て下さったのですが、ピッとボタンを押しただけで終わりでした。
立ち去ったお客さんを探すこともなく。
よく考えてみると、自動支払い機の画面のお釣りの欄に「0円」って書いてあったことを思い出しました。
つまり、そもそもお釣りがなかったので出るのはレシートのみという状態でした。
なので、お客さんに声をかける必要はこの場合に限っては元からなかったんです。

 僕がこのカスみたいな失敗をしてから1時間ほど気がそぞろで、カゴに詰める作業がガチャガチャになってしまいました。
これがバイトに行ってから30分くらいの頃に起きたので、バイトが終わるまでの4時間が異様に長く思えました。


 バイト中はネガティブな考え事が捗ります。
上に書いたようなミスをした時は、特に。
考え事をしすぎて視界がぼやけてくるくらい頭がぐるぐるしたし、自己嫌悪が止めどなく溢れてきて苦しくなります。
家で一人で考え事をするより、ずっと、ずっと、疲れます。
バイト中の考え事が疲れるのは、おそらく「接客態度」と「ネガティブなメンタル」のスイッチを頻繁に切り替える必要があるからだと思います。
お客さんがレジに来たら、「いらっしゃいませ」をはじめとした様々な定型文を元気に言う必要があります。

 自己嫌悪に入ると、もう自制が効かないくらい自分のことが嫌いになってきます。
先輩がバイト5ヶ月目の頃だったら、こんな失敗しないんだろうなとか。
バイト中のことに限らず、自意識過剰だとか屁理屈だとか言ってる普段の自分も嫌になってきます。
 他人に共感されても何も解決しないのに、「誰にも共感されないんだろうな」とか言って被害者面してる自分。
 屁理屈で物事を考えると自意識過剰な自分を否定することになり、自意識過剰で物事を考えると屁理屈な自分を否定することになる。
どっちも自分のつもりでいるのに、考え始めるとどちらか片方に偏る。
 「僕が間違っているんですけど」とか「僕の考え方の方が少数派なんだろうけど」とか言って、”自分の方が悪くて、間違っているなんてことはわかってます”感を出してるけど、自分の考えの方が正しいと真相心理では思ってしまっているであろう自分。
何かを悪く言う時、「僕含め」を付けて自分ごと否定することで意見を濁したり、突かれたら嫌な部分は自分から晒して言わせないようにしたり。
 で、それを書くことでさらに防御する自分。
 自分がゴミな理由を自分に無い部分に押し付けて、あたかも自分の方が優位なんだと思い込んで満足する自分。
“ない”ものが“ない”ことを証明しただけで、“ある”ことにはなってない。


 どこかの誰かがこんなようなことを言っていました。
 生きるのが上手い人は、失敗からその場で学んで再発を防ぐことができる。
でも僕らみたいに生きるのがヘタな人は、ヘタ故に失敗し、生きるのがヘタたる所以を探すことに必死になってしまい、その場で学ぶということをしない。
改善策を吸収することよりも改善点を探すことで頭がいっぱいで、それだけを考えてしまう。
無い知恵を絞っても答えは出なくて、それでも必死に考えて、改善点や原因を周りに押し付けて開き直ったり、逃避したりする。
改善策を吸収することを見失い、再び失敗する。
 今日の自分は、典型的に改善点を探してしまっていました。
だからミスした後、しばらくの間カゴに詰めるのがぐちゃぐちゃになっていたんだと思います。
「釣り銭が0円なら声をかけに行く必要はない」という実例を獲得すればそれで済んだのに、自己嫌悪に陥ってパフォーマンスをゴミにして。
しょうもな、俺。


 ですが、今日のバイトの後半2時間くらいが自分的にはすごく上手くできた気がします。
レジに店員が常駐していない薬局やコンビニなどは別だと思いますが、一人の人がずっと同じレジに立ち続けるわけではなくて、1時間交代くらいでレジを移動するのですが、今日は忙しすぎて2時間半くらい同じレジにいました。
その間ひっきりなしに客が来て、「暇」とはとても言えませんでした。
レジ打ちしまくった後に1分くらい間が空くと、そこで頭を支配するのは「ネガティブ」なんかではなく、単純に「ふぅ」と安堵するだけでした。
”没頭”であれば、好きなことでなくてもネガティブには勝てるのかもしれません。




ないものばかりを並べては
ないものねだりのごたくをただ並べてた
俺は被害者 そう思ってる痛い奴
気づけば白み出す空 Time up
(♪Creepy Nuts/朝焼け)

誤字脱字は後で直します

#193  #エッセイ

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