読書ノート:スピッツ論

読んだ本「スピッツ論 分裂するポップ・ミュージック」伏見瞬
イースト・プレス

図書館内をフラフラしていたら、音楽の棚の前を通り、ふと目に留まって借りたら超良かった。

こういう本って、そのアーティストが好きな人の内輪な本なんでしょ?というイメージを覆してくれる本だった。

スピッツを受容する人々・社会を考察した論考になっていて、「分裂」をキーワードにスピッツを分析していた。歌詞をこねくりまわして、あーだこーだ言っているって印象もこうした本にはあったんだけど、音楽理論としても分析しているという客観性もあるところもよくて、コードがどーのとか、音質がとか、ベースが・・とか私にはさっぱりわからないんだけど、面白かった。



私の青春期は、非キラキラ系のネクラ。
人と関わっていくのも会話するのも苦手、群れに適応できない・・・
そうした日常を支えていたのはスピッツ。
私は何に惹きつけられたのか。

初期、ファーストアルバムの「スピッツ」は最も薄暗い場所にいたということが書かれていて、ファーストアルバムが一番好きで聴いていたのはそういうことか・・そして、まさにここに私がいたわ!と思った。

P 19
「スピッツの楽曲には、陽/陰、希求/絶望、陶酔/虚無、非凡/平凡、現在/非現在、可能/不可能といった、ありとあらゆる対局要素が詰め込まれており、その分裂の強度は群を抜いている。他に類をみないこの強度こそが、〝公〟的に広く好かれ、〝私〟的に強烈に愛されるような、〝誰も触れない〟特別な位置へとスピッツを導いたのだ。」

P45
「居場所がなく、群衆から切り離されて、狭い場所から出られない認識が共通して歌われる。」

P42
「初期のスピッツは、誰とも適切な距離で触れ合えない絶望感を描き出していた。それは社会を拒絶する、あるいは社会から拒絶されることの痛みだとも言える。」

孤独とか死とか薄暗い場所にいながらも、「ダラダラとした日常感覚」も備わっている。


「草野マサムネみたいな人好き!」とか、「スピッツってなんか和むよね・・」という人を見て、「頭蓋骨の裂け目から飛び出してみよう〜」(ファーストアルバム収録 五千光年の夢より)とか、「死神が遊ぶ岬でやせこけた鳥たちに会おうか」(ファーストアルバム 死神の岬へ)とか、どこが和み系だ!スピッツの魅力はもっと深い部分にあるのだ・・と訳のわからない詩と、孤独・絶望・小さくてクズみたいなものに目を向ける眼差しとかいいなぁと思っていた。

直接的な愛だの恋だのという、わかりやすいメッセージではない、わかりやすい世界じゃないからよいのだ・・この良さがテメェにわかるか!と一人で思っているネクラなのでした。笑
おんなじことを思っている人がここにいたという本でした。



この本、超良かったよ!!って周りの本が好きな人に教えていたら、そういえば、私の周りのスピッツ好きもネクラだった・・ネクラな私もスピッツ好きだった・・って言う人が数人おり、スピッツのファン層が興味深い。


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