西久保檸檬

西久保檸檬

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しばしお暇します。

    • 短編小説10

      栗だ。 栗が歩いてくる。 私はお腹が空いていた。 私は自分の欲求のまま、栗を持っている銃で打った。 栗は大きな怒号を上げながら死んだ。 それは快感だった。 栗、栗、栗…。 思い出した。今日はクリスマスだった。 今年もクリぼっちである。 私は泣きながら家に帰った。 泣きながら、栗を食べていた。 すると、玄関がノックされる。 玄関を開けると、栗がいた。 栗が訪れてきたのだ。 なんで優しいんだ。 今年のクリスマスは枕を濡らさずにすみました。 朝、起きるとお腹が空いていた。 私は

      • 短編小説9

        彼の願いは世界平和だった。 しかし、彼の力を持ってしても人の運命まで変えることは不可能であった。どんなひどい運命でも我々は干渉してはいけないというのが我々の決まりであった。 納得できなかった。 何のために我々が存在しているのか。心優しい彼は何もできない自分を呪った。 ある日、鏡を見つけた。なんでも真実を教えてくれる鏡らしい。 「現世で不幸せな人を教えてくれ」 彼は不幸せな人を聞くと、一人残らずその人の側に行き助けた。 ある者は億万長者になり、ある者は全ての病気が治り、ある者

        • 短編小説8

          男は必死だった。 小学生の時から中学受験のために勉強をした。中学生の時は高校受験のために必死に勉強した。大学生の時は大学受験のために必死に勉強した。 大学生になってからは課題とバイトに追われ、様々な責任を背負うことになった。 男は気づいた。常に何かに追われていることを。どれだけ目の前のことに頑張っても、何からも逃れられないことを。 このまま頑張っても、社会人になっても、常に追われているだけだ。 ここまで頑張っても平穏が必ず訪れるわけではない。 次第に男は狂っていった。 男は自

          連載小説 河童-2

          「あなた、私の師匠なんでしょ!私に教えなさいよ、水に顔をつける方法を」少女は大きな声で言った。 「まだお前を弟子にするなんて言っとらん。帰れ帰れ」 少女は河の中に入ってきた。腰ぐらいの深さの場所で顔を河に入れようとした。しかし、河を見てじっととどまっている。儂には何故水の中に顔をつけられないのか理解できなかった。 「何を躊躇っている」 「水に顔つけるのが怖いのよ。息できなくなるじゃない」 「そんなことはない。まず心を落ち着かせて深呼吸するんだ。それからゆっくり顔をつけるんだ。

          連載小説 河童-2

          連載小説 河童

          儂は河童だ。 儂は猿のような顔に、亀のような背中、蛙のような体、そして蛙のような手足を持っている。 こんな身なりをしているから人間にはよく驚かれる。それが快感で堪らないのだ。 今日も驚かせようと、河の中で人を待っていた。 河に近づいてくる影が見えた。 儂は興奮した。自分の姿を鏡で確かめ、ワクワクしていた。 何者かが河に入ろうとした儂は勢いよく河から出た。 「クワアッ!」 大きな声を上げたが、何も反応がなかった。 目の前には少女が儂を見つめていた。驚かれなかった事は稀なので、何

          連載小説 河童

          短編小説7

          木にもたれかかってる男の子がいた。 怪我まみれで空腹のようだった。 住んでいる場所を聞くと、西の方を指差したので男の子をおんぶしてそっちの方へ向かった。 男の子の街に着いたらしいが、人気がなく、何か爆発でも起きたようなあとがあった。 許せない、何もかもあの憎き戦争のせいだ。 男の子はこの町で行きたいところがあるらしく、ここでさよならを告げた。男の子は笑顔だった。 私は決心した。このくだらない戦争を終わらせて、この不条理で残酷な世界から子供達を守ってみせる。 近くに大きな町があ

          短編小説6

          ここにプリンがある。 私はこのプリンを食べていいのか。 このプリンを食べたらなくなる。まるで戦争と同じだ。目先の利益だけ求めて、その後のことを何にも考えてない。 私はそこまで馬鹿ではない。 目先の利益だけを求めて、プリンを失うのは愚か者がやることだ。 そもそもプリンは美味しいのだろうか。 私がプリンを最後に食べたのはいつだったか記憶にない。 どんな味をしていたのかも記憶にない。 茶碗蒸しみたいな見た目をしてるから、茶碗蒸しに似た食べ物かもしれない。 しかし、茶碗蒸しではないと

          短編小説5

          朝、起きたら蛙になっていた。 鏡を見たら蛙になっていた。最悪だ。 顔も手も全身蛙だ。背丈だけは変わってなさそう。 多分これは夢である。普通の人間が蛙になるわけがない。となれば、この状況を目覚める前に楽しむべきなのかもしれない。しかし我慢ならない、早く目覚めて欲しい。 僕は蛙が大嫌いだ。小さな頃、友達と蛙を潰して遊んでいたからだ。今でもあの時の手の感触や、内臓が飛び出してるあのグロい絵。思い出しただけで吐きそうになる。なぜ子供の頃はあんなことを何も感じずできたのだろう。今でも不

          短編小説4

          混沌というのは例えばだが、以下のような文のことである。 「男は死んだ。女は走った。」 これだとまるで意味がわからない。なぜ男が死んで、女が走ったのか。これが混沌である。しかし、こうすれば、混沌でなくなる。 「男は死んだ。病院に連れ込むため女は走った。」 もうすでに死んでいるのに病院に連れ込むのは意味わからないが、とにかく、混沌が物語に変わった。 人間にとって混沌はわけわからなく、恐怖なのだ。 科学が発達していない昔は混沌ばかりだった。混沌をなくすために宗教や迷信を作ったのだろ

          短編小説3

          (多少グロデスクな表現があります。苦手な方はお控えください) 昔々、あるところに、黒雪というお姫様がいました。 黒雪はとても美しく、それはそれは毎日10人の王子様が求婚に来るぐらいでした。 人柄も評判で、お国の人たちには常に愛されていました。 しかし、昼間までぐっすり眠るお寝坊さんでもあります。黒雪が寝ているというだけで、帰らされる王子様もそれはそれは沢山いました。 ある時、国王が言いました。 「黒雪よ、お前はもう今日で38じゃろ。そろそろ結婚を考えたらどうだ」 黒雪は言いま

          短編小説3

          短編小説2

          部活も入ってない、趣味もない。刺激の欲しさに、自転車で静岡県を目指すことにした。といっても、南足柄市に住んでいるから、別にそんなに遠いいわけじゃない。思い立ったが吉日だ。最近買った15000円のクロスバイクと子供の頃から使っているヘルメットとともに旅に出た。 最初は順調だった。いつもわけもなく走る道だったからだ。しかし、知らない道に入った瞬間、坂が急になった。漕ぐのが大変だったが何とか登り切った。 しかし、そこを登り切った瞬間地獄が待っていた。すぐ隣をトラックが走り、コンクリ

          短編小説2

          短編小説1

          依頼の成仏を終え、私たちは岐路に足を向けた。 あれは確かに依頼主の夫の亡骸であった。 しかし、所長は真実を告げなかった。 「なぜあの時を告げなかったのですか。彼女、きっといつになっても、夫を探し続けますよ」 所長は深いため息をつきながら言った。 「お前、知らないのか。この災害で沢山の人が亡くなった。真っ黒に焦げた死体や泥まみれの水死体、それと同じくらい自殺で亡くなったような死体も多くある。時と場合によっては、真実を知ることが彼らの傷を広げることになるだろう。今、俺たちができ

          短編小説1