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意外と勘違いしやすい交通ルール!元教習指導員が監修する必見情報

こんにちは、指定自動車教習所で15年間働いていたLIVELAです。

教習所では教本をベースとして交通ルールを学んでいくことになりますが、道路交通法のすべてを教本で学ぶことはできません。例えば学科教習において「初心者マークは免許取得から1年間は表示しなければならない」ということを学びますが、初心者マークを車のフロントガラスに貼り付けた場合は違反になるということまではご存知でしょうか?

万が一法令違反で捕まったとしても「教習所で教えてくれませんでした」「知りませんでした」というのは通用しません。なぜなら法律は知っていたかどうかが問題なのではなくやったかやらなかったかが問題になるからです。刃物で人を傷つけてしまった場合に「知りませんでした」と言っても傷害罪や殺人未遂罪になるのと同じです。

つまり知識は最大の武器でもあり自分を守るための盾にもなります。道路交通法における「知らなかった」については教習生のほとんどに悪意があるわけではありません。学ぶ姿勢があっても説明がなければ自主的に何を調べたら良いのか分からないのが現状だと思います。それなのに何も知らずに捕まってしまったら「なんでだろ………」って思いますよね。

ちなみに教習所では教本に書いてあることをしっかりと説明すれば指導員側が問題提起されることはまずありません(法令の範囲内です)。つまり指導員には前述の初心者マークのフロントガラス問題についても基本的には触れる必要がないため、どの範囲まで説明をしてくれるのかは指導員の裁量によるところが大きいのです。

ここでは「教習所で説明をしていない可能性が高いもの」「知らないでおくと将来的に影響を及ぼす可能性の高いもの」を中心にご紹介します。この記事をきっかけに、みなさんの安全運転に何かしらの貢献ができれば幸いに思います。




自転車は歩行者ではなく車

・自転車の分類は軽車両

車などの分類

自転車のことを歩行者だと思い込んでいる人が多いかと思われますが、実際は道路交通法上の「軽車両」に該当します。つまり参照した図のように車などの下に紐づけされているので歩行者ではなく列記としたです。歩道での自転車の通行が禁止されているのは歩道は人が通行するところであって車が通行するところではないからです。

ちなみに自転車もである以上、自動車と同様に左側通行となります。普段何気なく対向車線を逆走していて取締り対象になった場合、通行区分違反に加えて刑法上の前科一犯が付帯することがほとんどです(土砂崩れや津波などの緊急な理由でない限りは裁判でほぼ有罪になる)。つまり自転車を運転していただけなのに犯罪歴が発生することになるのです。


・横断歩道で自転車を譲る必要はない

近年では歩行者保護の取締りが厳しくなってきた背景もあり「横断歩道で車が歩行者を譲る」という場面を見かける機会も多くなってきたのですが、一方でなぜか自転車まで譲ってしまうドライバーも散見されるようになりました。前述した通り、あくまで自転車もですから横断歩道で自転車を譲る義務はありません。

別に譲ってはいけないという法律もないのですが、教習所で働いていた頃はよく「教習車が横断歩道で譲ってくれなかった!」というクレームがくることもありました。しかもその大半が歩行者ではなく自転車(降りていない状態)であったため、正しい知識を伝えるために何度も説明していた記憶があります。

ほとんどの場合は「そうだったんですね、勉強になりました…すいませんでした。」といった感じで和やかに終わるのですが、なんだかよく分からない意地を張っているプッチンプリンな人には「警察に聞いて下さい」「法律は国で決めてるんで国に言って下さい」「どうしても納得がいかないなら法改正してくれそうな人に票を入れて総理大臣にして下さい」と伝えておきました。

(私はこんな感じなので事務員さんからクレーム処理班として謎の人気がありました。)

ちなみに自転車から降りた状態であれば「歩行者扱い」になるので、車は横断歩道にて歩行者を譲る義務が発生します。この降りた状態がどこからなのかが明確ではなかったので免許センターに問い合わせたところ「自転車に跨っている時点で軽車両扱い」という返答を頂きました。つまり自転車は完全に降りた状態でないと歩行者扱いにはならないのです。


・歩行者保護の取締りが厳しくなってきた理由

これは2020年の東京オリンピック開幕前に外国人観光客が増えたことに起因します。それに比例して外国人からこのようなクレームが押し寄せられるようになりました。

「日本人はみんな優しいのになんで歩行者を譲らないの?」

今でこそ歩行者保護がだいぶ浸透してきましたが、2020年当時は歩行者が横断歩道に立っていても車が譲ってくれることは稀であり、法規よりも慣習に従った日本の悪い面が目立っていました。ちなみにイギリスでは初等教習の段階で交通ルールを学びます。そのためイギリスでの横断歩道における歩行者保護の割合はほぼ100%という脅威の数字です。

実はこの脅威という表現には語弊あり、多くの先進国が歩行者保護を徹底しているなかで日本だけが歩行者保護に関して遅れを取っていただけとも言えます。ちなみにアメリカでも歩行者保護は徹底されており、横断歩道を譲らなかった場合は放送禁止用語を連発されて殴られる可能性があるので渡米する際は気をつけて下さい。


本当は怖い自転車の真実

・自転車で人とぶつかった場合の損害賠償額は1億円になることもある

強制保険と任意保険がコンソメみたいなダブルパンチで充実している自動車とは異なり、自転車の場合は大した内容の保険に加入しません。そもそも自転車に乗るために「月額〇〇円〜」といったような保険に加入している人は珍しいくらいです。個人的には自動車に乗るよりも自転車に乗るほうが物理的にも精神的にも怖いと思っています。

まずは自転車における高額な損害賠償例をご覧下さい。

【ケース①】9,521万円(平成25年7月4日判決)11歳の男児が自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路において62歳の女性と衝突。女性は頭の骨を折るなどし意識不明の重症。男児に支払い能力がないため母親に賠償命令。

神戸地方裁判所

【ケース②】9,266万円(平成20年6月1日判決)男子高校生が自転車に乗りながら車道を斜めに横断していたところ、対向車線を自転車で走行していた24歳の男性会社員に衝突。男性は言語機能の喪失などの重大な障害が残る。

東京地方裁判所

ここで取り上げたのはほんの一例ですが、ここまで高額な賠償請求が発生される要因として自動車のような保険制度が充実していないこと歩行者の延長線上のような感覚で交通ルールを軽視していることなどが挙げられます。特筆すべきは未成年であっても1億円近い損害賠償請求が生じていることです。一度事故が起きてしまえば「しょうがない」では済まされない現実が待っています。


初心者マークはフロントガラスに貼り付けると違反になる

・本人に悪気はないけど違反になるパターンが多い

フロントガラスに貼り付けるのはNG

免許を取得してから1年間は初心者マークを表示する義務があるのですが、フロントガラスに貼った場合は法令違反になるという事実を知らない人は少なくありません。なぜなら貼った本人はちゃんと法律を守っているので悪気はありませんし、吸盤式の初心者マークが流通していること自体が「フロントガラスに貼るものだろう」と思ってしまうからです。

まず答えから言ってしまうと吸盤式の初心者マークはリアガラス用(後ろのガラス)です。正しい初心者マークの表示方法は車の前と後ろ、地上から0.4m以上1.5m以下の見えやすい位置に貼り付ける必要があります。後方のみリアガラス上に吸盤で取り付けるとことが可能です(後述の例外あり)。違反した場合は4,000円の反則金と違反点数1点が加点されます。

フロントガラスに貼り付ける場合(サンシェードやドライブレコーダーなど)、フロントガラスの上部から20%以内(イメージ的にはルームミラーの下端)の場所に限られます。初心者マークはルームミラーよりもサイズが大きいことがほとんどなので、「安全運転義務違反」にあたる可能性が高いです。 違反した場合は違反点数2点と反則金9000円になります。

ちなみに違反点数6点以上で免許停止、15点以上で免許取消です。勘違いしている人も散見されますが、100点から減点されていくのではなく0点からスタートして加算されていく方式です。つまり「2点取られた!」ではなく「2点増やされた!」が正解です。


・実はリアガラスもスモークガラス(色付き)だとNG

吸盤式の初心者マークはリアガラス用だと述べましたが、例外的にスモーク入りのプライバシーガラスの場合は初心者マークを貼り付けることができません。見分け方はフロントガラス、運転席、助手席のガラスと比べてやや暗くなっていればスモークが入っています。近年では人気のある装備なのでプライバシーガラスを採用している車種は多いです。

初心者マークの貼れないスモークガラス
フロントガラスと比べると暗い色をしている


・初心者マークはマグネット式2枚組はあっても吸盤式2個セットは売っていない

世の中に流通している初心者マークは「マグネット式✕1枚」「マグネット式✕2枚」「マグネット式✕1枚+吸盤式✕1枚」「吸盤式✕1枚」の組み合わせであることがほとんどであり、「吸盤式✕2枚」で販売されていることはまずありません。なぜなら吸盤式2枚で購入してしまうと「前のガラスと後ろのガラスに表示するんだな」と思ってしまうからです。

つまり勘違いを誘発させたメーカー側の責任を問われる可能性があるため、そもそもメーカーはリスクを犯してまで「吸盤式✕2枚」の組み合わせで販売する意味がないのです。

・マグネット式でも吸盤式でもない粘着式が存在する

プリウスなどの一部車種ではボンネットにアルミを使用している場合があり、アルミ素材だとマグネット式の初心者マークを貼り付けることができません。さすがにセロテープで貼り付けるのは粘着力も含めて不安が残るので、例外的にフロントガラスに貼り付けが可能かどうか免許センターに問い合わせてみることにしました。

すると免許センター側から回答があり、「フロントガラスは違反になるのでダメです!」とハッキリと言われてしまいました。今後の参考にもなると思い表示方法を確認したところ「こちらからは確かな回答をお答えできないので、ご自身で初心者マーク落ちないように対策をして下さい。」とのことです。いっそのことガムテープしかないのか!?

………と思いきや。

試しにAmazonで「プリウス用 初心者マーク」と検索すると貼って剥がせる粘着タイプなるものがヒットしました!やっぱりAmazonってすげぇ!


最高速度で120km出せる?法定速度と規制速度はどちらに従う?

・法定速度と規制速度の違い

法定速度は標識がない場合の制限速度規制速度は標識がある場合の制限速度です。「㊿」の標識があれば制限速度は50km以下なので51kmで走行することはできません。標識がない場合は無制限ではなく、一般道路では60km、原付のみ30kmとなります。「一般道路の法定速度は原付以外60km」と覚えておけば簡単ですね。

ちなみに高速道路の場合は「人を乗せて走行する車種は100km、物を乗せて走行する車種は80km」と覚えておくと本試験的には役立ちます。例えば以下の問題が出題されたとします。

問「高速自動車国道における大型バスの最高速度は100kmである。」

実際に出題された問題

正解は「◯」です。実はこの問題、合格率が異常に低いことで有名です。教習生の多くは「大型」とつくと無条件で低い速度で走ることを連想してしまいます。つまり低いほうの80kmが法定速度であると考えてしまい解答を「✕」にしてしまうのです。しかしながら大型バスは何を乗せて走るのでしょうか?

人でしょうか?
荷物でしょうか?

答えは「人」ですから100kmです………という覚え方のほうが便利な気がしませんか?


・法定速度は標識がない場合の制限速度

ここでメインの題材に戻りますが、実際に一般道路において「最高速度70km」、高速道路上にて「最高速度120km」の標識があった場合はどうでしょうか。どちらも法定速度の60kmと100kmを上回っていますよね。この場合は「標識に記載されている速度で走行しても違反にはならない」が正解です。

あくまで法定速度は規制速度(標識)がない場合の制限速度であり、標識がある場合はそちらに従えば良いのです。これも意外と教習所では習っていなかったりします。


私道も公道と同じく取締り対象になる

・私道と私有地を勘違いしている人が多い

「私道はなぜか捕まらない」といった風潮がありますが、実際には一般公道と同様に取締り対象となるケースがほとんどです。おそらくこれは個人の所有物である私有地人の行き交いが発生する私道を混合していることに起因します。人の行き交いが発生する以上は法令上の「その他道路」に該当するため一般公道扱いになります。

道路交通法が適用されない私道(1)
道路交通法が適用されない私道(2)
道路交通法が適用される私道

例えば私道の奥にある家に宅配物を届けてくれるのは通行が許可されている道路だからです。そもそも私有地だったら不法侵入になります。つまり私有地の場合は簡単に言うと自宅の庭が該当するため道路交通法の適用外になりますが、私道の場合は歩行者や自転車、自動車も通行する可能性があるのであくまで公道扱いなのです。

つまり一般公道と同じ扱いであるということは私道であっても法定速度や駐車違反など道路交通法の適用範囲内になります。私道だからといってその土地の所有者が一部の道路を専有することは法律上認められていないのです。分かりやすく言えば箱根ターンパイクは公道ではなく私道ですが、公道と接続されている「その他道路」なので取締りも頻繁に行われています。


・私道でも駐車違反や道路専有における通報が可能

私道の場合は公道とは異なり積極的に取締りを行ってはいませんが、警察に通報することに取り締ってもらうことは可能です。むしろ私道の場合はこちらのほうがメインの取締り方法になります。実は慣習的に道路上に置いてある植木鉢においても通報可能です。実際に植木鉢につまずいて怪我をした場合は損害賠償請求を行うこともできます。


免許証の所有権は個人ではなく日本国

・免許証は貰うのではなく国から貸し出されるもの

よく「免許貰えた!」という言葉を耳にしますが、実際には貰えたわけではなく貸してもらっているだけです。これは警察官による免許証の提示義務が職務質問の任意とは異なり強制であることからもその性質が読み取れると思います。つまり警察官に「免許証を見せて下さい」と言われた場合は、所有権の発生する国の機関である警察官に提示する必要があります。


・免許証にプリクラを貼ってしまうと2つの法令違反になる

免許証にプリクラを貼ったり、自分で何かを書き足してしまうと有印公文書変造罪(3ヵ月以上5年以下の懲役)有印公文書行使罪(1年10年以下の懲役)に当たる可能性があります。実際に2021年には愛知県で「男女5人を有印公文書変造・同行使罪で書類送検した」というニュースが報じられています。

免許証の写真写りが最悪なのは分かります。私の免許証の写真も職場の同僚に見せたら「港のコンテナ付近で密輸をしているマフィアみたいですね」と言われてショックを受けたことがありました。基本的に証明書に使う写真はプリクラとは逆の補正がかかるため、肌は青白く、目はより細くなる傾向があります。

一般的や目の細さの人ならプリクラで撮影すると宇宙人に、免許センターで撮影するとニビシティのジムリーダー、タケシ(ポケモン)になります。どちらにしろ免許証で百人一首やポーカーでもしない限りは誰かと見せ合うこともないため、写真写りに関しては気にしないことが一番です。


備えあれば憂いなしは知識においても重要なこと

いががでしょうか?

個人的には「学科教本を読むだけなら図書館でもできる、学科教習の役割は内容に補足を加えて分かりやすくフォローすることが必要」と考えているので、これまで記載してきた内容は学科教習中においても説明をするようにしているのですが、指導員の教え方にはバラツキがあるため知らない人向けにまとめてみたものです。

知識を増やすということはより知見的な解釈ができることに繋がります。本をたくさん読んできた人が言葉の引き出しに優れているように、道路交通法においても知れば知るほどその特性を理解できるようになってくるのです。そもそも「なぜ道路交通法があるのか?」「なぜ免許制度が必要なのか?」といったような重要な内容においても知らないまま卒業してしまうのは勿体ない気がします。

海外では青信号でも安全に渡れない国が存在します。そんなときに日本の道路交通法の大切さを改めて実感するのではないでしょうか。

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