(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】特許第5816767号(P5816767)
(24)【登録日】平成27年10月2日(2015.10.2)
(45)【発行日】平成27年11月18日(2015.11.18)
(54)【発明の名称】ナット
(51)【国際特許分類】
F16B 41/00 (2006.01)
F16B 39/34 (2006.01)
【FI】
F16B 41/00    A
F16B 39/34    A
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-51478(P2015-51478)
(22)【出願日】平成27年3月13日(2015.3.13)
【審査請求日】平成27年3月13日(2015.3.13)
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513033331
【氏名又は名称】
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【弁理士】
【氏名又は名称】
(72)【発明者】
【氏名】
(72)【発明者】
【氏名】
【審査官】
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−159415(JP,A)
【文献】 特開2013−133923(JP,A)
【文献】 特開2002−372024(JP,A)
【文献】 特開2014−056514(JP,A)
【文献】 特開2005−009536(JP,A)
【文献】 特開2003−278733(JP,A)
【文献】 特開2001−124043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B23/00−43/02

要約

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【要約】
【課題】 特殊なボルトを用いなくても、ナットを誤って落下させるのを確実に防止可能とする。
【解決手段】 ナット10をナット本体11と弾性を有する圧接部材20から構成する圧接部材20は中央に雌螺子部13の谷径(=後述するボルトの雄螺子部の山径)Lより少しだけ小さい径L1の通し孔21を有し、ナット本体11の内、雌螺子孔12の開いた底面側の端面14に、通し孔21と雌螺子部13が同軸(同心)となるようにして接着剤に
より装着されている。圧接部材20の厚みHは、例えば雌螺子部13の隣接する螺子山間距離の1乃至5倍前後としてある。圧接部材20が弾性変形可能なことから、通し孔21はボルト先端部4に対し軸方向に挿通可能となっている。ナット10を底面側からボルト1に挿入するとき、ナット10の雌螺子部13がボルト1の先端に当たる前に圧接部材20の通し孔21がボルト1の先端により押し開かれて圧接する。
【選択図】 図4

請求の範囲

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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナット本体の雌螺子孔の底面近くに落下防止部を設け、
この際、落下防止部は、ナット本体の雌螺子部の内、ナット本体の底面側の一端より底面寄りに位置するようにし、
落下防止部に、雌螺子部と同心で開口径が雌螺子部の谷径より小さい通し口部を設け、
この通し口部はボルト先端部に対し軸方向に挿通可能とするとともに、ナット本体をボルトに螺合させるため、ナット本体の雌螺子部の内、ナット本体の底面側の一端をボルト先端部に当接する際、ボルト先端部に軸方向に挿通された通し口部が当該ボルト先端部に押し開かれてボルト先端部の外周に圧接するようにしたこと、
を特徴とするナット。
【請求項2】
ナット本体の雌螺子孔の底面近くに落下防止部を設け、
この際、落下防止部は、ナット本体の雌螺子部の内、ナット本体の底面側の一端より底面寄りに位置するようにし、
落下防止部に、雌螺子部と同心で開口径が雌螺子部の谷径より小さい通し口部を設け、
この通し口部はボルト先端部に対し軸方向に挿通可能とするとともに、ナット本体をボルトに螺合させるため、ナット本体の雌螺子部の内、ナット本体の底面側の一端をボルト先端部に当接する際、ボルト先端部に軸方向に挿通された通し口部が当該ボルト先端部に押し開かれてボルト先端部の雄螺子山に係合するようにしたこと、
を特徴とするナット。

詳細な説明

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【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナットに係り、とくにボルトに螺合しようとする際にナットを落下させるのを防止できるようにしたナットに関する。
【背景技術】
【0002】
ボルトとナットは建築物、機械装置、電気製品などで部材を固定するために多用されている締結部品である。例えば建物内にパイプを上下に配設する場合、図1(1)、(2)に示す如く、壁1にT字状の固定具2をネジ3で留めで取り付けておき、立てバンド4のリング部5にパイプ6を通した状態で立てバンド4の2枚の取り付け部7、7で固定具2を両側から挟み、取り付け部7、7と固定具2に各々2箇所ずつ開けられた穴8と9を合わせてボルト10、10を通し、ナット11、11を手でボルト10、10に螺合し、更にレンチ (図示せず)で所定のトルクでナット11、11を回して締め、立てバンド4を固定具2に締結している(実開平6−47793号公報参照)。
【0003】
ナット11を手でボルト10に螺合する際、最初にナット11を指で掴んでナット11の雌螺子部12をボルト10の雄螺子部13の先端に押し当て、少し回して噛み合わせながらナット11の雌螺子部12をボルト10の雄螺子部13に少し螺合し、次に、指をナット11から放して指の姿勢を元に戻したのち再びナット11を指で掴んで少し回し、ボルト10に対するナット11の螺合を進めるという動作を繰り返す。
このとき、最初にナット11の雌螺子部12とボルト10の雄螺子部13が噛み合わないまま指でナット11を少し回したあと指を放してしまい、ナット11を床に落下させてしまうことが多い。脚立やカゴ車を用いて高所で作業者がパイプ6を手で持ちながら配設作業をしているときなど、床に落下させたナット11を探すのが非常に面倒な作業となっていた。
【0004】
従来、ナットの落下を防止する工夫をしたものとして、特開2007−092925号、特開2011−247308号、特開昭56−160417号がある。特開2007−092925号公報記載のボルトは、ボルトの雄螺子部の先端側に雄螺子部の谷径より小さい径のナット誘導部を突設させ、ナットを螺合する際、最初にナットの雌螺子孔をナット誘導部に挿入するようにしたものである。ボルトの雄螺子部とナットの雌螺子部が螺合し始める前に、ナットから指が離れたときナットがナット誘導部に引っ掛かって落下し難くなる。けれども、ボルトの先端にナット誘導部を突設させた特殊なボルトにしか適用できなくなってしまう。また、ボルト頭部を上、ナット誘導部を下に配設する場合は、ナットが自重でナット誘導部から抜け落ちてしまう。
【0005】
また、特開2011−247308号公報記載の脱落防止構造は、ボルトの先端から中径部、小径部、大径部(雄螺子部)を形成し、ナットの追い側端面に径を拡縮自在な弾性部材からなる脱落防止部材を拡径させて嵌め、脱落防止部材に拡径時は開口径が中径部、小径部より大きく、大径部より小さく、縮径時は開口径が中径部、大径部より小さい干渉部分を設けたものである。ナットをボルトに螺合する際、干渉部分が中径部、小径部と干渉することなく、螺合をさせていくことができ、ナットの高さ分だけ螺合が進んだ所で、干渉部分が大径部(雄螺子部)と干渉して脱落防止部材がナットから脱落し、縮径して干渉部分が小径部に嵌る。これにより、雄螺子部に螺合したナットが緩んで雄螺子部から外れても、脱落防止部材に引っ掛かって脱落が防止される。けれども、ナットをボルトに螺合する際、雄螺子部と雌螺子部の螺合が始まる前にナットから指が放れてしまった場合、干渉部分は小径部、中径部と干渉しないのでナットが抜け落ちてしまう欠点がある。
【0006】
特開昭56−160417号公報記載の弛止め付ナットも、ナットとボルトを螺合したあとのナットの弛み止め防止をしているに過ぎず、ナットとボルトが螺合する前の噛み合せの際に、誤ってナットから指を離したときの落下防止は目的としていない。弛止め具本体の突出片がボルトネジの谷底に圧接することで弛止めを行うようにしており、少なくともナットの高さ分以上、ナットがボルトネジとの螺合を終えていないと弛み止め作用は働かない。ボルトネジにナットがまだ何ら螺合していないときは当然、突出片はボルトと何ら関係を持っておらず、ナットから誤って指を放すとナットが落下してしまう欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】 実開平6−47793号公報
【特許文献2】 特開2007−092925号
【特許文献3】 特開2011−247308号公報
【特許文献4】 特開昭56−160417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記した従来技術の問題に鑑みなされたもので、特殊ボルトを用いなくても、ナットを誤って落下させるのを確実に防止できるようにしたナットを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明では、
ナット本体の雌螺子孔の底面近くに落下防止部を設け、
この際、落下防止部は、ナット本体の雌螺子部の内、ナット本体の底面側の一端より底面寄りに位置するようにし、
落下防止部に、雌螺子部と同心で開口径が雌螺子部の谷径より小さい通し口部を設け、
この通し口部はボルト先端部に対し軸方向に挿通可能とするとともに、ナット本体をボルトに螺合させるため、ナット本体の雌螺子部の内、ナット本体の底面側の一端をボルト先端部に当接する際、ボルト先端部に軸方向に挿通された通し口部が当該ボルト先端部に押し開かれてボルト先端部の外周に圧接するようにしたこと、
を特徴としている。
請求項2記載の発明では、
ナット本体の雌螺子孔の底面近くに落下防止部を設け、
この際、落下防止部は、ナット本体の雌螺子部の内、ナット底面側の一端より底面寄りに位置するようにし、
落下防止部に、雌螺子部と同心で開口径が雌螺子部の谷径より小さい通し口部を設け、
この通し口部はボルト先端部に対し軸方向に挿通可能とするとともに、ナット本体をボルトに螺合させるため、ナット本体の雌螺子部の内、ナット本体の底面側の一端をボルト先端部に当接する際、ボルト先端部に軸方向に挿通された通し口部が当該ボルト先端部に押し開かれてボルト先端部の雄螺子山に係合するようにしたこと、
を特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ナットをボルトの雄螺子部に螺合するため、雌螺子部のナット底面側の一端を雄螺子部の先端部に当接しようとすると、落下防止部の通し口部が雄螺子部の先端部に押し開かれて雄螺子部の外周に圧接するか、または雄螺子山に係合する。これにより、雌螺子部がボルト雄螺子部と螺合し始める前に誤ってナットから指を放しても、落下防止部によりナットの移動が拘束されるので、ナットの落下が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来のボルトとナットの使用例を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施例に係る圧接部材付のナットの断面図である(実施例1)。
【図3】図2のナットの底面図である。
【図4】圧接部材付のナットの作用説明図である。
【図5】圧接部材付のナットの作用説明図である。
【図6】図6(1)は図2の変形例に係るナットの断面図、(2)は作用説明図である。
【図7】図2の他の変形例の断面図である。
【図8】図8(1)は図2の更に他の変形例に係るナットの断面図、(2)は作用説明図である。
【図9】図2の他の変形例の断面図である。
【図10】図10(1)は図2の他の変形例に係るナットの断面図、(2)は作用説明図である。
【図11】図11(1)は図2の更に他の変形例に係るナットの断面図、(2)は(1)中の圧接部材の斜視図、(3)は(1)のナットの作用説明図である。
【図12】図11(1)は図2の更に他の変形例に係るナットの断面図、(2)は(1)中の係合部材の斜視図、(3)は(1)のナットの作用説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の最良の形態を実施例に基づき説明する。
【実施例1】
【0013】
図2、図3を参照して本発明の一実施例を説明する。図2は本発明に係る圧接部材付のナット(ここでは六角ナットとする)の断面図、図3は図2のナットの底面図である。
図2、図3において、10はナットであり、鋼、ステンレス鋼などからなるナット本体11と、ゴム、プラスチック樹脂等の弾性部材により形成された厚みのあるリング状の落下防止部としての圧接部材20から成る。ナット本体11は雌螺子孔12、雌螺子部13を有している。圧接部材20は中央に雌螺子部13の谷径(=後述するボルトの雄螺子部の山径)Lより少しだけ小さい径L1の通し口部としての通し孔21を有し、ナット本体11の内、雌螺子孔12の開いた底面側の端面14に、通し孔21と雌螺子部13が同軸(同心)となるようにして接着剤により装着されている。
圧接部材20の厚みHは、例えば雌螺子部13の隣接する螺子山間距離の1乃至5倍前後としてある。圧接部材20が弾性変形可能なことから、通し孔21はボルト先端部に対し軸方向に挿脱自在に挿通可能となっている。上記のように構成されたナット10は図4の鋼、ステンレス鋼などからなるボルト1と組み合わせて使用される。
【0014】
図4と図5は上記したナットの使用方法の説明図であり、以下、これらの図を参照して上記した実施例の作用を説明する。なお、図4、図5ではボルト1は水平横向きに配設されて、3枚の板状の締結対象部材100、101、102の孔に通されているものとする。
ナット10をボルト1に螺合する場合、左手の指でボルト1の頭部2を押さえながら、まず右手の指でナット10を掴み、圧接部材20の着いた底面側の端面14からナット10をボルト1の雄螺子部3の先端部4に近づけていく(図4(1)参照)。そして、圧接部材20が雄螺子部3の先端部4に当接したところで(図4(2)参照)、通し孔21を雄螺子部3の先端部4に押し通すようにして軸方向に挿通する。すると、雄螺子部3の山径Lより小さい開口径L1の通し孔21は弾性変形により雄螺子部3の先端部4に押し開かれて拡径し、通し孔21の周縁が雄螺子部3の外周に圧接する(図4(3)参照)。このとき、ナット10から誤って指を放してしまいナット10が重力で落下しようとしても、圧接部材20の通し孔21と雄螺子部3の先端部4との間に生じる大きな摩擦力により
、圧接部材20が雄螺子部3の先端部4に固定されるので、ナット10は落下しない。
【0015】
なお、圧接部材20の通し孔21をボルト1の雄螺子部3の先端部4に挿通すると、ナット10の軸とボルト1の軸がほぼ一致することから、作業者が軸合わせをする必要は殆どない(図4(3)参照)。
雄螺子部3の先端部4に対する圧接部材20の挿通を進め、ナット10の雌螺子部13の底面側の一端が雄螺子部3の先端部4に当接したところで、ナット10の雌螺子部13を雄螺子部3の先端部4に押し当て、少し回して噛み合わせながらナット10の雌螺子部13を雄螺子部3に少し螺合し、次に、指をナット10から放して指の姿勢を元に戻したのち再びナット10を指で掴んで少し回し、雄螺子部3に対するナット10の螺合を進めるという動作を繰り返す(図5(1)、(2)参照)。圧接部材20の通し孔21は雄螺子部3により拡径されているので、支障なく螺合することができる。
【0016】
若し、雄螺子部3にナット10の雌螺子部13が噛み合わないままナット10から指を放しても、ナット10に装着された圧接部材20と雄螺子部3の外周の間に働く摩擦力により落下しない。
あとは雄螺子部3に対するナット10の螺合を進め、最終的にレンチを使うなどして規定のトルクで締めればよい。
ここではボルト1を水平横向きに配設する場合につき説明したが、鉛直下向き(ボルト1の頭部2が上、先端部4が下)に配設する場合にも同様にしてナット10の落下防止を図ることができる。
【0017】
この実施例によれば、ナット10をボルト1の雄螺子部3に螺合するため、圧接部材20の通し孔21の中に雄螺子部3の先端部4を挿通すると、圧接部材20が弾性変形して通し孔21が雄螺子部の先端部4に押し開かれて雄螺子部3の外周に圧接する。よって、雄螺子部3にナット10の雌螺子部13を螺合させる前に、誤ってナット10から指を放してしまっても、圧接部材20が摩擦で雄螺子部3の先端部4に固定されるので、ナット10はボルト1から落下しない。
また、圧接部材20の通し孔21をボルト1の先端部4に挿通すると、ナット10の軸とボルト1の軸がほぼ一致するので、軸合わせをするためにナット10をボルト1の軸に対し垂直方向へ移動調整しなくて済む。
また、ゴム、プラスチック樹脂等の弾性部材からなる有孔の圧接部材20をナット10の底面側の端面14に装着するだけなので、構成が簡単で済む。
また、ボルト1には、ナット誘導部の無い一般的なタイプを使用可能である。
【0018】
なお、上記した実施例では通常の六角ナットの底面側の端面に圧接部材を装着する場合を例に挙げて説明したが、本発明は何らこれに限定されるものでなく、雌螺子孔の底面側で雌螺子部より底面寄りに落下防止部を設けるようにした種々の変形例が含まれる。
例えば、図6(1)に示す如く、雌螺子孔12Aの底面側に雌螺子部13の谷径Lより孔径L2の大きな無螺子部16を有するナット本体11Aに対して、底面側の端面14に、中央に雌螺子部13の谷径Lより少しだけ小さい径L1の通し孔21を有し、弾性部材からなるリング状の圧接部材20を、通し孔21と雌螺子部13が同軸となるようにして接着剤等により装着してナット10Aを構成しても良い。無螺子部付きのナット10Aでは、底面側の無螺子部16からボルト1の先端部4に挿入するが、まず、圧接部材20の通し孔21をボルト1の先端部4に当てて軸方向に挿通すると、通し孔21は弾性変形により先端部4に押し開かれて通し孔21の周縁が雄螺子部3の外周に圧接する(図6(2))。従って、ナット10Aの雌螺子部13を雄螺子部3に当てて螺合させる前に、誤って指を放してしまいナット10Aが重力で落下しようとしても、圧接部材20が雄螺子部3の先端部4に固定されるので、ナット10Aは落下しない。
【0019】
また、図7に示す如く、図6(1)と同様のナット本体11Aに対して、底面側の無螺子部16の中に、中央に雌螺子部13の谷径Lより少しだけ小さい径L1の通し孔21を有するリング状の弾性部材からなる圧接部材20Bを、通し孔21と雌螺子部13が同軸となるようにして接着剤等により装着してナット10Bを構成しても良い。
また、図8に示す如く、ナット本体11Aに対して、底面側の端面14に、中央に雌螺子部13の谷径Lより少しだけ小さい径L1の通し孔21を有し、外径が端面14の幅と略同じL3に形成されたリング状の弾性部材からなる圧接部材20Cを、通し孔21と雌螺子部13が同軸となるようにして接着剤等により装着し、更にこの圧接部材20Cの外側に鋼、ステンレス鋼などのリング状の底板30を接着剤などで接着してナット10Cを構成しても良い。底板30は無螺子部16と同径の丸孔31を有する。
また、図9に示す如く、雌螺子孔12Dの内、底面側の無螺子部16Dの部分が深いナット本体11Dに対して、無螺子部16Dに穿設したリング状の溝17に、中央に雌螺子部13の谷径Lより少しだけ小さい径L1の通し孔21を有し、弾性部材からなるリング状の圧接部材20Dを、通し孔21と雌螺子部13が同軸となるようにして接着剤等により装着してナット10Dを構成しても良い。
【0020】
また、図10(1)に示す如く、雌螺子孔12Eの内、底面側の無螺子部16Eの部分が深いナット本体11Eに対して、無螺子部16Eに穿設したリング状の溝17Eに、中央に雌螺子部13の谷径Lより少しだけ小さい開口径L1の通し口部21Eを有し、ゴム、プラスチック樹脂等の弾性部材からなるリングパイプ状の圧接部材20Eを、通し口部21Eと雌螺子部13が同軸となるようにして接着剤等により装着してナット10Eを構成しても良い。通し口部21Eはボルト1の先端部4に対し軸方向に挿脱自在である。ナット10Eの底面側の無螺子部16Eからボルト1の先端部4に挿入するが、まず、圧接部材20Eの通し口部21Eを先端部4に当てて軸方向に挿通すると、圧接部材20Eが半径方向外側に弾性変形しながら通し口部21Eが先端部4に押し開かれて雄螺子部3の外周に圧接する(図10(2))。従って、ナット10Eの雌螺子部13を雄螺子部3に当てて螺合させる前に、誤って指を放してしまいナット10Eが重力で落下しようとしても、圧接部材20Eが雄螺子部3の先端部4に固定されるので、ナット10Eは落下しない。
上記した実施例及び各変形例において、圧接部材を弾性を有するネオジシート等のマグネットシートにより形成することで、通し口部が圧接と磁着の両方でボルトの雄螺子部の先端部に固定されるようにしても良い。また、通し口部に粘着剤層を付加することにより、粘着力によっても、雄螺子部の先端部に固定されるようにしても良い。
【0021】
また、図11(1)に示す如く、雌螺子孔12Fの底面側に無螺子部16Fを有するナット本体11Fに対して、底面側の端面14に、無螺子部16Fの孔径L2より大きい径の溝孔18を刻設し、この溝孔18に弾性を有する薄いプラスチック樹脂板や、弾性を有する薄い金属板で形成されたリング状の圧接部材20Fを接着剤等で接着したり、溶接等で一体化したりしてナット10Fを構成しても良い。図11(2)に示す如く、圧接部材20Fには、放射状に4つの爪部22が設けられており、各爪部22は可撓性を有し、軸心に向けて凸となるように半円弧状に湾曲されている。4つの爪部22の湾曲頂点で囲まれた開口が通し口部21Fを成し、この通し口部21Fは雌螺子部13と同軸で、谷径Lより少しだけ小さい開口径L1’を有する。通し口部21Fはボルト1の先端部4に対し軸方向に挿脱自在に挿通可能である。ナット10Fの底面側の無螺子部16Fからボルト1の先端部4に挿入するが、まず、圧接部材20Fの通し口部21Fを先端部4に当てて軸方向に挿通すると、各爪部22が半径方向外側に撓みながら通し口部21Fがボルト1の先端部4に押し開かれて爪部22の湾曲頂点が雄螺子部3の外周に圧接する(図11(3))。従って、ナット10Fの雌螺子部13を雄螺子部3に当てて螺合させる前に、誤って指を放してしまいナット10Fが重力で落下しようとしても、圧接部材20Fが雄螺子部3の先端部4に固定されるので、ナット10Fは落下しない。なお、爪部22は3つ
、或いは5つ以上設けても良い。
図11の変形例においても、圧接部材を予め磁化した磁性体により形成することで、通し口部が圧接と磁着の両方でボルトの雄螺子部の先端部に固定されるようにしても良い。また、通し口部に粘着剤層を付加することにより、粘着力によっても、雄螺子部の先端部に固定されるようにしても良い。
【0022】
また、上記した実施例及びその変形例では、落下防止部はボルトの雄螺子部の先端部に圧接することで落下防止するようにしたが、本発明は何らこれに限定されず、落下防止部はボルトの雄螺子部の雄螺子山に係合することで、落下防止するようにしても良い。例えば、図12(1)に示す如く、図11(1)と同様のナット11Fの底面側の端面14に、無螺子部16Fの孔径L2より大きい径の溝孔18を刻設し、この溝孔18に弾性を有する薄いプラスチック樹脂板、弾性を有する薄い金属板などで形成されたリング状の落下防止部としての係合部材200を接着剤等で装着したり、溶接等で一体化したりしてナット10Gを構成するようにしても良い。図12(2)に示す如く、係合部材200には、放射状に4つの爪部201が設けられており、各爪部201は可撓性を有し、軸心に向けて直線的に延設されている。4つの爪部201の先端で囲まれた開口が通し口部202を成し、この通し口部202は雌螺子部13と同軸で、雌螺子部13の谷径(ボルトの雄螺子部の山径)Lより小さく山径(ボルトの雄螺子部の谷径)L4より大きい開口径L1”を有する。通し口部202はボルト1の先端部4に対し軸方向に挿脱自在に挿通可能である。ナット10Gの底面側の無螺子部16Fからボルト1の先端部4に挿入するが、まず、係合部材200の通し口部202をボルト1の先端部4に当てて軸方向に挿通すると、各爪部202が軸方向に撓みながら通し口部202が先端部4に押し開かれて爪部201の先端が雄螺子部3の雄螺子山に係合する(図12(3))。従って、ナット10Gの雌螺子部13を雄螺子部3に当てて螺合させる前に、誤って指を放してしまいナット10Gが重力で落下しようとしても、係合部材200が雄螺子部3の先端部4に係止されるので、ナット10Gは落下しない。なお、爪部201は3つ、或いは5つ以上設けても良い。
図12の変形例においても、係合部材を予め磁化した磁性体により形成することで、通し口部が圧接と磁着の両方でボルトの雄螺子部の先端部に固定されるようにしても良い。また、通し口部に粘着剤層を付加することにより、粘着力によっても、雄螺子部の先端部に固定されるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、六角ナット、袋ナット、ツバ付ナット(フランジ付ナット)などに適用できる。
【符号の説明】
【0024】
1 ボルト
3 雄螺子部
10 ナット
11 ナット本体
20 圧接部材
21 通し孔
200 係合部材

図面

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【図1】


【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7】


【図8】


【図9】


【図10】


【図11】


【図12】

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