(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】特許第5827764号(P5827764)
(24)【登録日】平成27年10月23日(2015.10.23)
(45)【発行日】平成27年12月2日(2015.12.2)
(54)【発明の名称】締結部品
(51)【国際特許分類】
F16B 41/00 (2006.01)
F16B 37/00 (2006.01)
F16B 35/00 (2006.01)
【FI】
F16B 41/00    A
F16B 37/00    A
F16B 35/00    F
F16B 37/00    C
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-14283(P2015-14283)
(22)【出願日】平成27年1月28日(2015.1.28)
【審査請求日】平成27年1月31日(2015.1.31)
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513033331
【氏名又は名称】
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【弁理士】
【氏名又は名称】
(72)【発明者】
【氏名】
【審査官】
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−148440(JP,A)
【文献】 特開2007−092925(JP,A)
【文献】 特開2010−133447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B23/00−43/02

要約


【要約】
【課題】 ナットをボルトに螺合するとき、ナットを誤って落下させないようにする。
【解決手段】
ボルト本体20の雄螺子部22の先端に、ナット60の雌螺子孔61に挿脱自在なナット誘導部40を軸方向に突設してナット誘導部付きボルト24を構成する。ナット本体64の雌螺子孔61の頂面側の一端を閉塞するようにして、弾性部材から成る圧接部材100を着脱自在に装着してナット60を構成する。圧接部材100に通し口部101を設け、ナット誘導部40の長さをナット60の底面側の端面63から通し口部101までの高さより長くする。圧接部材100の通し口部101は、ナット60を底面側からナット誘導部40に挿入するとき、ナット60の雌螺子孔61の底面側がボルト本体20の雄螺子部22に当たる以前に、通し口部101がナット誘導部40により押し開かれて該ナット誘導部40に圧接するようにした。
【選択図】 図5

請求の範囲

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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌螺子孔を有するナット本体と、雄螺子部を有するボルト本体とを備え、
前記ボルト本体の雄螺子部側の先端に、前記ナット本体の雌螺子孔に挿脱自在なナット誘導部を前記ボルト本体の軸方向に着脱自在に突設するかまたは一体的に突設してナット誘導部付きボルトを構成し、
ナット本体の雌螺子孔の頂面側の一端または一端部または軸方向の延長部分を閉塞するようにして、弾性部材から成る圧接部材をナット本体に着脱自在に装着してナットを構成し、
圧接部材に通し口部を設けるとともに、ナット誘導部の長さをナットの底面側の端面から通し口部までの高さより長くし、
圧接部材の通し口部は、ナットを底面側からナット誘導部に挿入するとき、ナットの雌螺子孔の底面側がボルト本体の雄螺子部に当たる以前に、通し口部がナット誘導部により押し開かれて該ナット誘導部に圧接するようにしたこと、
を特徴とする締結部品。
【請求項2】
雌螺子孔を有するナット本体と、雄螺子部を有するボルト本体とを備え、
前記ボルト本体の雄螺子部側の先端に、前記ナット本体の雌螺子孔に挿脱自在なナット誘導部を前記ボルト本体の軸方向に着脱自在に突設するかまたは一体的に突設してナット誘導部付きボルトを構成し、
ナット本体の雌螺子孔の頂面側の一端または一端部または軸方向の延長部分を閉塞するようにして、弾性部材から成る圧接部材をナット本体に着脱自在または固着して装着してナットを構成し、
圧接部材に通し口部を設けるとともに、ナット誘導部の長さをナットの底面側の端面から通し口部までの高さより長くし、
圧接部材の通し口部は、ナットを底面側からナット誘導部に挿入するとき、最初は、ナットの雌螺子孔の底面側がボルト本体の雄螺子部に当たる以前に、通し口部がナット誘導部により押し開かれて該ナット誘導部に圧接し、更にナットを雄螺子部に螺合すると、通し口部が雄螺子部により押し開かれて該雄螺子部に圧接するようにしたこと、
を特徴とする締結部品。
【請求項3】
雌螺子孔を有するナット本体と、雄螺子部を有するボルト本体とを備え、
前記ボルト本体の雄螺子部側の先端に、前記ナット本体の雌螺子孔に挿脱自在なナット誘導部を前記ボルト本体の軸方向に着脱自在に突設するかまたは一体的に突設してナット誘導部付きボルトを構成し、
ナット本体の雌螺子孔の頂面側の一端または一端部または軸方向の延長部分を閉塞するようにした圧接部をナット本体と一体に設け、
圧接部に通し口部を設けるとともに、ナット誘導部の長さをナットの底面側の端面から通し口部までの高さより長くし、
圧接部の通し口部は、ナットを底面側からナット誘導部に挿入するとき、最初は、ナットの雌螺子孔の底面側がボルト本体の雄螺子部に当たる以前に、通し口部がナット誘導部により押し開かれて該ナット誘導部に圧接し、更にナットを雄螺子部に螺合すると、通し口部が雄螺子部により押し開かれて該雄螺子部に圧接するようにしたこと、
を特徴とする締結部品。
【請求項4】
圧接部材の通し口部近傍の表面の内、ナットを底面側からナット誘導部に挿入したときナット誘導部の表面と接触する個所に粘着層を付加したこと、
を特徴とする請求項1または2記載の締結部品。
【請求項5】
圧接部の通し口部近傍の表面の内、ナットを底面側からナット誘導部に挿入したときナット誘導部の表面と接触する個所に粘着層を付加したこと、
を特徴とする請求項3記載の締結部品。
【請求項6】
ナット誘導部の少なくとも先端部の表面に粘着層を付加したこと、
を特徴とする請求項1乃至5の内のいずれか一項記載の締結部品。
【請求項7】
ナット誘導部の先端部に軸に垂直な方向に大きくした膨大部を設け、
ナットの通し口部にナット誘導部に挿通する際、通し口部が膨大部により通し押し開かれたのち、ナット誘導部に圧接するようにしたこと、
を特徴とする請求項1または2または3記載の締結部品。
【請求項8】
ナット誘導部の全部または一部の表面に軸周りの溝を形成したこと、
を特徴とする請求項1乃至7の内のいずれか一項記載の締結部品。

詳細な説明

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【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は締結部品に係り、とくにボルトにナットを螺合しようとする際にナットを落下させるのを防止できるようにした締結部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ボルトとナットは建築物、機械装置、電気製品などで部材を固定するために多用されている締結部品である。例えば建物内にパイプを上下に配設する場合、図1(1)、(2)に示す如く、壁1にT字状の固定具2をネジ3で留めで取り付けておき、立てバンド4のリング部5にパイプ6を通した状態で立てバンド4の2枚の取り付け部7、7で固定具2を両側から挟み、取り付け部7、7と固定具2に各々2箇所ずつ開けられた穴8と9を合わせてボルト10、10を通し、ナット11、11を手でボルト10、10に螺合し、更にレンチ (図示せず)で所定のトルクでナット11、11を回して締め、立てバンド4を固定具2に締結している(実開平6−47793号公報参照)。
【0003】
ナット11を手でボルト10に螺合する際、最初にナット11を指で掴んでナット11の雌螺子部12をボルト10の雄螺子部13の先端に押し当て、少し回して噛み合わせながらナット11の雌螺子部12をボルト10の雄螺子部13に少し螺合し、次に、指をナット11から放して指の姿勢を元に戻したのち再びナット11を指で掴んで少し回し、ボルト10に対するナット11の螺合を進めるという動作を繰り返す。
このとき、最初にナット11の雌螺子部12とボルト10の雄螺子部13が噛み合わないまま指でナット11を少し回したあと指を離してしまい、ナット11を床に落下させてしまうことが多い。脚立やカゴ車を用いて高所で作業者がパイプ6を手で持ちながら配設作業をしているときなど、床に落下させたナット11を探すのが非常に面倒な作業となっていた。
【0004】
従来、ナットの落下を防止する工夫をしたものとして、特開2007−092925号、特開2011−247308号、特開昭56−160417号がある。特開2007−092925号公報記載のボルトは、ボルトの雄螺子部の先端側に雄螺子部の谷径より小さい径のナット誘導部を突設させ、ナットを螺合する際、最初にナットの雌螺子孔をナット誘導部に挿入するようにしたものである。ボルトの雄螺子部とナットの雌螺子部が螺合し始める前に、ナットから指が離れたときナットがナット誘導部に引っ掛かって落下し難くなる。けれども、誤って作業者がナットにボルト先端方向の力を加えたとき、容易にナットがナット誘導部から抜けてしまう。また、ボルト頭部を上、ナット誘導部を下に配設する場合は、ナットが自重でナット誘導部から抜け落ちてしまう。
【0005】
また、特開2011−247308号公報記載の脱落防止構造は、ボルトの先端から中径部、小径部、大径部(雄螺子部)を形成し、ナットの追い側端面に径を拡縮自在な弾性部材からなる脱落防止部材を拡径させて嵌め、脱落防止部材に拡径時は開口径が中径部、小径部より大きく、大径部より小さく、縮径時は開口径が中径部、大径部より小さい干渉部分を設けたものである。ナットをボルトに螺合する際、干渉部分が中径部、小径部と干渉することなく、螺合をさせていくことができ、ナットの高さ分だけ螺合が進んだ所で、干渉部分が大径部(雄螺子部)と干渉して脱落防止部材がナットから脱落し、縮径して干渉部分が小径部に嵌る。これにより、雄螺子部に螺合したナットが緩んで雄螺子部から外れても、脱落防止部材に引っ掛かって脱落が防止される。けれども、ナットをボルトに螺合する際、雄螺子部と雌螺子部の螺合が始まる前にナットから指が離れてしまった場合、干渉部分は小径部、中径部と干渉しないのでナットが抜け落ちてしまう欠点がある。
【0006】
特開昭56−160417号公報記載の弛止め付ナットも、ナットとボルトを螺合したあとのナットの弛み止め防止をしているに過ぎず、ナットとボルトが螺合する前の噛み合せの際に、誤ってナットから指を離したときの落下防止は目的としていない。弛止め具本体の突出片がボルトネジの谷底に圧接することで弛止めを行うようにしており、少なくともナットの高さ分以上、ナットがボルトネジとの螺合を終えていないと弛み止め作用は働かない。ボルトネジにナットがまだ何ら螺合していないときは当然、突出片はボルトと何ら関係を持っておらず、ナットから誤って指を離すとナットが落下してしまう欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】 実開平6−47793号公報
【特許文献2】 特開2007−092925号
【特許文献3】 特開2011−247308号公報
【特許文献4】 特開昭56−160417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記した従来技術の問題に鑑みなされたもので、ナットを誤って落下させるのを確実に防止できる締結部品を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明では、
雌螺子孔を有するナット本体と、雄螺子部を有するボルト本体とを備え、
前記ボルト本体の雄螺子部側の先端に、前記ナット本体の雌螺子孔に挿脱自在なナット誘導部を前記ボルト本体の軸方向に着脱自在に突設するかまたは一体化して突設してナット誘導部付きボルトを構成し、
ナット本体の雌螺子孔の頂面側の一端または一端部または軸方向の延長部分を閉塞するようにして、弾性部材から成る圧接部材をナット本体に着脱自在に装着してナットを構成し、
圧接部材に通し口部を設けるとともに、ナット誘導部の長さをナットの底面側の端面から通し口部までの高さより長くし、
圧接部材の通し口部は、ナットを底面側からナット誘導部に挿入するとき、ナットの雌螺子孔の底面側がボルト本体の雄螺子部に当たる以前に、通し口部がナット誘導部により押し開かれて該ナット誘導部に圧接するようにしたこと、
を特徴としている。
請求項2記載の発明では、
雌螺子孔を有するナット本体と、雄螺子部を有するボルト本体とを備え、
前記ボルト本体の雄螺子部側の先端に、前記ナット本体の雌螺子孔に挿脱自在なナット誘導部を前記ボルト本体の軸方向に着脱自在に突設するかまたは一体化して突設してナット誘導部付きボルトを構成し、
ナット本体の雌螺子孔の頂面側の一端または一端部または軸方向の延長部分を閉塞するようにして、弾性部材から成る圧接部材をナット本体に着脱自在または固着して装着してナットを構成し、
圧接部材に通し口部を設けるとともに、ナット誘導部の長さをナットの底面側の端面から通し口部までの高さより長くし、
圧接部材の通し口部は、ナットを底面側からナット誘導部に挿入するとき、最初は、ナットの雌螺子孔の底面側がボルト本体の雄螺子部に当たる以前に、通し口部がナット誘導部により押し開かれて該ナット誘導部に圧接し、更にナットを雄螺子部に螺合すると、通し口部が雄螺子部により押し開かれて該雄螺子部に圧接するようにしたこと、
を特徴としている。
請求項3記載の発明では、
雌螺子孔を有するナット本体と、雄螺子部を有するボルト本体とを備え、
前記ボルト本体の雄螺子部側の先端に、前記ナット本体の雌螺子孔に挿脱自在なナット誘導部を前記ボルト本体の軸方向に着脱自在に突設するかまたは一体化して突設してナット誘導部付きボルトを構成し、
ナット本体の雌螺子孔の頂面側の一端または一端部または軸方向の延長部分を閉塞するようにして、密接部材をナット本体に着脱自在に装着してナットを構成し、
密接部材に通し口部を設けるとともに、ナット誘導部の長さをナットの底面側の端面から通し口部までの高さより長くし、
密接部材の通し口部は、ナットを底面側からナット誘導部に挿入するとき、ナットの雌螺子孔の底面側がボルト本体の雄螺子部に当たる以前に、通し口部にナット誘導部が挿入されて密接するようにしたこと、
を特徴としている。
請求項4記載の発明では、
雌螺子孔を有するナット本体と、雄螺子部を有するボルト本体とを備え、
前記ボルト本体の雄螺子部側の先端に、前記ナット本体の雌螺子孔に挿脱自在なナット誘導部を前記ボルト本体の軸方向に着脱自在に突設するかまたは一体化して突設してナット誘導部付きボルトを構成し、
ナット本体の雌螺子孔の頂面側の一端または一端部または軸方向の延長部分を閉塞するようにして、弾性部材から成る密接部材をナット本体に着脱自在または固着して装着してナットを構成し、
密接部材に通し口部を設けるとともに、ナット誘導部の長さをナットの底面側の端面から通し口部までの高さより長くし、
密接部材の通し口部は、ナットを底面側からナット誘導部に挿入するとき、最初は、ナットの雌螺子孔の底面側がボルト本体の雄螺子部に当たる以前に、通し口部にナット誘導部が挿入されて密接し、更にナットを雄螺子部に螺合すると、通し口部が雄螺子部により押し開かれて該雄螺子部に圧接するようにしたこと、
を特徴としている。
請求項5記載の発明では、
前記圧接部材の全部または一部を磁石部材により形成し、
ナット誘導部付ボルトの内、少なくともナット誘導部を磁性体により形成したこと、
を特徴としている。
請求項6記載の発明では、
ナット誘導部付ボルトまたはナット本体に磁石を組み込むようにしたこと、
を特徴としている。
請求項7記載の発明では、
前記密接部材の全部または一部を磁石部材により形成し、
ナット誘導部付ボルトの内、少なくともナット誘導部を磁性体により形成したこと、
を特徴としている。
請求項8記載の発明では、
ナット誘導部付ボルトまたはナット本体に磁石を組み込むようにしたこと、
を特徴としている。
請求項9記載の発明では、
前記圧接部材の全部または一部を磁性体により形成し、
ナット誘導部付ボルトまたはナット本体または圧接部材に、磁石を組み込むようにしたこと、
を特徴としている。
請求項10記載の発明では、
前記密接部材の全部または一部を磁性体により形成し、
ナット誘導部付ボルトまたはナット本体または密接部材に、磁石を組み込むようにしたこと、
を特徴としている。
請求項11記載の発明では、
雌螺子孔を有するナット本体と、雄螺子部を有するボルト本体とを備え、
前記ボルト本体の雄螺子部側の先端に、前記ナット本体の雌螺子孔に挿脱自在なナット誘導部を前記ボルト本体の軸方向に着脱自在に突設するかまたは一体化して突設してナット誘導部付きボルトを構成し、
ナット本体の雌螺子孔の頂面側の一端または一端部または軸方向の延長部分を閉塞するようにした圧接部をナット本体と一体に設け、
圧接部に通し口部を設けるとともに、ナット誘導部の長さをナットの底面側の端面から通し口部までの高さより長くし、
圧接部の通し口部は、ナットを底面側からナット誘導部に挿入するとき、最初は、ナットの雌螺子孔の底面側がボルト本体の雄螺子部に当たる以前に、通し口部がナット誘導部により押し開かれて該ナット誘導部に圧接し、更にナットを雄螺子部に螺合すると、通し口部が雄螺子部により押し開かれて該雄螺子部に圧接するようにしたこと、
を特徴としている。
請求項12記載の発明では、
雌螺子孔を有するナット本体と、雄螺子部を有するボルト本体とを備え、
前記ボルト本体の雄螺子部側の先端に、前記ナット本体の雌螺子孔に挿脱自在なナット誘導部を前記ボルト本体の軸方向に着脱自在に突設するかまたは一体化して突設してナット誘導部付きボルトを構成し、
ナット本体の雌螺子孔の頂面側の一端または一端部または軸方向の延長部分を閉塞するようにした密接部をナット本体と一体に設け、
密接部に通し口部を設けるとともに、ナット誘導部の長さをナットの底面側の端面から通し口部までの高さより長くし、
密接部の通し口部は、ナットを底面側からナット誘導部に挿入するとき、最初は、ナットの雌螺子孔の底面側がボルト本体の雄螺子部に当たる以前に、通し口部がナット誘導部に密接し、更にナットを雄螺子部に螺合すると、通し口部が雄螺子部により押し開かれて該雄螺子部に圧接するようにしたこと、
を特徴としている。
請求項13記載の発明では、
ナット誘導部付ボルトまたはナット本体に、磁石を組み込むようにしたこと、
を特徴としている。
請求項14記載の発明では、
圧接部材の通し口部近傍の表面の内、ナットを底面側からナット誘導部に挿入したときナット誘導部の表面と接触する個所に粘着層を付加したこと、
を特徴としている。
請求項15記載の発明では、
密接部材の通し口部近傍の表面の内、ナットを底面側からナット誘導部に挿入したときナット誘導部の表面と接触する個所に粘着層を付加したこと、
を特徴としている。
請求項16記載の発明では、
圧接部の通し口部近傍の表面の内、ナットを底面側からナット誘導部に挿入したときナット誘導部の表面と接触する個所に粘着層を付加したこと、
を特徴としている。
請求項17記載の発明では、
密接部の通し口部近傍の表面の内、ナットを底面側からナット誘導部に挿入したときナット誘導部の表面と接触する個所に粘着層を付加したこと、
を特徴としている。
請求項18記載の発明では、
ナット誘導部の少なくとも先端部の表面に粘着層を付加したこと、
を特徴としている。
請求項19記載の発明では、
ナット誘導部の先端部に軸に垂直な方向に大きくした膨大部を設け、
ナットの通し口部にナット誘導部に挿通する際、通し口部が膨大部により通し押し開かれたのち、ナット誘導部に圧接するようにしたこと、
を特徴としている。
請求項20記載の発明では、
密接部材を弾性部材により形成するとともに、
ナット誘導部の先端部に軸に垂直な方向に大きくした膨大部を設け、
ナットの通し口部にナット誘導部に挿通する際、通し口部が膨大部により押し開かれたのちナット誘導部に密接するようにしたこと、
を特徴としている。
請求項21記載の発明では、
ナット誘導部の先端部に軸に垂直な方向に大きくした膨大部を設け、
ナットの通し口部にナット誘導部に挿通する際、通し口部が膨大部により押し開かれたのちナット誘導部に密接するようにしたこと、
を特徴としている。
請求項22記載の発明では、
ナット誘導部の全部または一部の表面に軸周りの溝を形成したこと、
を特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の1つによれば、ナット本体の雌螺子孔の頂面側の一端または一端部または軸方向の延長部分を閉塞するようにして、弾性部材から成る圧接部材をナット本体に着脱自在に装着し、圧接部材にナット誘導部により押し開かれて該ナット誘導部に圧接する通し口部を設けたことにより、ナットをナット誘導部に挿通し圧接部材をナット誘導部に対し圧接状態にすると、雄螺子部にナットを螺合させる前に、誤ってナットから指を放してしまいナットが圧接部材とともにナット誘導部から抜けようとしても、圧接部材とナット誘導部の間の摩擦力でナットの移動が拘束されるので、ナットの落下が防止される。
また、他の発明によれば、ナットの頂面側の一端または一端部または軸方向の延長部分を閉塞するようにして、弾性部材から成る圧接部材をナット本体に着脱自在または固着して装着し、圧接部材に通し口部を設け、この通し口部は、ナットを底面側から通し口部に挿入すると、最初は、ナットの雌螺子孔がボルト本体の雄螺子部に当たる前に、通し口部がナット誘導部により押し開かれて該ナット誘導部に圧接し、更にナットを雄螺子部に螺合すると、通し口部が雄螺子部により押し開かれて該雄螺子部に圧接するようにしたことにより、ナットをナット誘導部に挿通し圧接部材をナット誘導部に対し圧接状態にすると、雄螺子部にナットを螺合させる前に、誤ってナットから指を放してしまいナットが圧接部材とともにナット誘導部から抜けようとしても、摩擦力でナットの移動が拘束されるので、ナットの落下が防止される。また、ナットをボルトに螺合し終えたあとは、圧接部材が雄螺子部の外周に圧接するのでナットの緩み防止が可能となる。
また、他の発明によれば、ナット本体の雌螺子孔の頂面側の一端または一端部または軸方向の延長部分を閉塞するようにした圧接部をナット本体と一体に設け、圧接部に通し口部を設け、この通し口部は、ナットを底面側から通し口部に挿入すると、最初は、ナットの雌螺子孔がボルト本体の雄螺子部に当たる前に、通し口部がナット誘導部により押し開かれて該ナット誘導部に圧接し、更にナットを雄螺子部に螺合すると、通し口部が雄螺子部により押し開かれて該雄螺子部に圧接するようにしたことにより、ナットをナット誘導部に挿通し圧接部をナット誘導部に対し圧接状態にすると、雄螺子部にナットを螺合させる前に、誤ってナットから指を放してしまいナットが圧接部とともにナット誘導部から抜けようとしても、摩擦力でナットの移動が拘束されるので、ナットの落下が防止される。また、ナットをボルトに螺合し終えたあとは、圧接部が雄螺子部の外周に圧接するのでナットの緩み防止が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来のボルトとナットの使用例を示す説明図である。
【図2】本発明の第1実施例に係るナット誘導部付きボルトの側面図である(実施例1)。
【図3】第1実施例に係るナットの断面図である。
【図4】第1実施例に係るナットの正面図である。
【図5】第1実施例の作用説明図である。
【図6】第1実施例の作用説明図である。
【図7】第1実施例の作用説明図である。
【図8】第1実施例の作用説明図である。
【図9】本発明の第2実施例に係るナット誘導部付きボルトの側面図である(実施例2)。
【図10】第2実施例に係るナットの正面図である。
【図11】第2実施例の作用説明図である。
【図12】圧接部材付のナットの変形例の説明図である。
【図13】圧接部材の変形例の説明図である。
【図14】第2実施例の変形例に係るナット誘導部付きボルトの作用説明図である。
【図15】第2実施例の変形例に係るナット誘導部付きボルトの作用説明図である。
【図16】第2実施例の変形例に係るナット誘導部付きボルトの作用説明図である。
【図17】圧接部材付のナットの変形例の説明図である。
【図18】圧接部材付のナットの他の変形例の説明図である。
【図19】圧接部材付のナットの更に他の変形例の説明図である。
【図20】圧接部材付のナットの他の変形例の説明図である。
【図21】圧接部材付のナットの他の変形例の説明図である。
【図22】図21の圧接部材付のナットの製造方法の説明図である。
【図23】圧接部材付のナットの他の変形例の製造方法の説明図である。
【図24】磁石を組み込んだナット誘導部付きボルトの説明図である。
【図25】磁石を組み込んだナット誘導部付きボルトの説明図である。
【図26】磁石を組み込んだナット誘導部付きボルトの説明図である。
【図27】磁石を組み込んだナット誘導部付きボルトの説明図である。
【図28】図27のナット誘導部付きボルトの製造方法の説明図である。
【図29】磁石を組み込んだナット誘導部付きボルトの説明図である。
【図30】磁石を組み込んだナット誘導部付きボルトの説明図である。
【図31】磁石を組み込んだナットの説明図である。
【図32】磁石を組み込んだナットの説明図である。
【図33】磁石を組み込んだナットの説明図である。
【図34】圧接部をナット本体に一体で設けた変形例を示す説明図である。
【図35】ナット誘導部の変形例の説明図である。
【図36】ナット誘導部の変形例の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の最良の形態を実施例に基づき説明する。
【実施例1】
【0013】
図2、図3、図4を参照して本発明の第1実施例を説明する。図2は本発明に係るナット誘導部付きボルト(六角ボルト)の側面図、図3は本発明に係るナット(六角ナット)の断面図、図4は図3のナットの正面図である。
図2において、20は鋼、磁性ステンレス鋼などの磁性体で形成されたボルト本体であり、六角形の頭部21の下面中央から軸方向に雄螺子部22が一体的に延設されている。雄螺子部22の先端には、六角形のナットの雌螺子孔(図3、図4の符号60、61参照)に挿脱自在に遊挿可能な棒状のナット誘導部40が軸方向に突設されている。ナット誘導部40は先端側が丸棒状に形成されるとともに基部がテーパ状に形成されている。ナット誘導部40の丸棒部42の直径L1は雄螺子部22の谷径(ナット60の山径)Lより小さく形成されている。テーパ部41の径は丸棒部42の基端の径L1から雄螺子部22
の先端の谷径Lまで徐々に大きくなっている。テーパ部41と丸棒部42はここではボルト本体20と同じ材質により、ボルト本体20と一体的に形成されているものとする(例えば、先端まで雄螺子部が形成された通常の鋼、磁性ステンレス鋼などから成るボルトの先端部に切削加工などを施して形成されている)。
ナット誘導部40の長さW1は、ナット60の底面側の端面63から後述する圧接部材の通し孔の底面側入り口までの高さ(図3の符号100、101、H参照)より長く形成されているが、好ましくは、ナット60の底面側の端面63から通し孔の頂面側の出口までの高さ(図3の符号H1参照)と同じか、H1より長く形成するとよく、ここでは一例としてH1の1.2倍以上に形成されているものとする。
ボルト本体20とナット誘導部40により、ナット誘導部付きボルト24(以下、単に「ボルト」という)が構成されている。
【0014】
図3、図4において、60はナットであり、ナット本体64と、弾性を有する高磁力ネオジシートなどのマグネットシートから成る円盤状の圧接部材100から成る。ナット本体64は鋼、磁性ステンレス鋼などの磁性体からなるが、非磁性ステンレス鋼などの非磁性体としてもよい。ナット本体64は雌螺子孔61、雌螺子部62を有している。圧接部材100は中央にナット誘導部40の丸棒部42の径L1より少しだけ小さい径L2の通し口部としての通し孔101を有し、ナット本体64の内、雌螺子孔61の開いた頂面側の端面65に雌螺子孔61の一端を閉塞するようにして接着力の弱い接着剤(着脱自在の付箋用の接着剤など)、着脱自在の両面接着テープなどによる接着により着脱自在に装着されている。
上記のように構成されたナット60は図2のボルト24と組み合わせて使用される。
【0015】
図5乃至図8は上記したボルト24とナット60の使用方法の説明図であり、以下、これらの図を参照して上記した第1実施例の作用を説明する。なお、図5乃至図8ではボルト24は下向き(頭部21が上、ナット誘導部40が下)に配設されて、3枚の板状の締結対象部材100、101、102の孔に通されているものとする。
ナット60をボルト24に螺合する場合、左手の指でボルト24の頭部21を上から押さえながら、まず右手の指でナット60を掴み、圧接部材100とは反対の底面側の端面63からナット60の雌螺子孔61をボルト24のナット誘導部40に合わせて挿通していく(図5(1))。ナット誘導部40の丸棒部42の先端が圧接部材100の通し孔101に当たると、磁力で圧接部材100の通し孔101の周縁が丸棒部42の先端に磁着し(図5(2))、ナット60を軸方向上方(ボルト24の頭部21の方向)へ少し移動すると、丸棒部42の先端部により通し孔101が押し開かれて圧接部材100の弾性で通し孔101の周縁が丸棒部42の先端の周面に圧接する(図5(3))。更にナット60を軸方向上方へ少し移動すると丸棒部42の先端が通し孔101から外側へ少し出る(図6(1))。この際、まだ、ナット本体64の底面側の端面63や雌螺子孔61はボルト本体20の雄螺子部22の先端には当接していない。通し孔101が丸棒部42の先端部により押し開かれて、圧接部材100の弾性で通し孔101の周縁が丸棒部42の先端の周面に圧接した状態になると、ナット60から誤って指を離してしまいナット60が重力で落下しようとしても、圧接部材100の通し孔101と丸棒部42の間に生じる大きな摩擦力及び磁力により、圧接部材100がナット誘導部40の丸棒部42に固定されるので、ナット60は落下しない。
【0016】
ナット60をナット誘導部40に挿入後、軸方向上方へ更に移動させると、テーパ部41によりナット60の軸とボルト24の軸が自動的に合って来るので、軸合わせをするためにナット60をボルト24の軸に対し垂直方向へ移動調整しなくて済む(図6(2)、(3)参照)。なお、テーパ部が省略されてナット誘導部が全部、丸棒部であっても、丸棒部が圧接部材100の通し孔101に挿通されていることから、ナット60の軸とボルト24の軸がほぼ一致するので、作業者が軸合わせをする必要は殆どない。
ナット60の底面側の端面63が雄螺子部22の先端に来たところで、ナット60の雌螺子部62を雄螺子部22に押し当て、少し回して噛み合わせながらナット60の雌螺子部62を雄螺子部22に少し螺合し、次に、指をナット60から放して指の姿勢を元に戻したのち再びナット60を指で掴んで少し回し、雄螺子部22に対するナット60の螺合を進めるという動作を繰り返す(図7(1)参照)。
【0017】
若し、雄螺子部22にナット60の雌螺子部62が噛み合わないままナット60から指を離しても、ナット60に接着された圧接部材100とナット誘導部40の間に働く摩擦力及び磁力により落下しない。
ナット60の螺合を進めて行くと、圧接部材100はテーパ部41や雄螺子部22の先端に当たって、ナット本体64から剥がれる(図7(2)参照)。剥がれた圧接部材100はそのまま放置してもよいし、締結作業の邪魔であれば手でナット誘導部40から抜いて外せば良い。
なお、ナット本体64と圧接部材100との接着力が弱くナット60をナット誘導部40に沿って移動中に剥がれたとき(図7(3)参照)、圧接部材100が丸棒部42に圧接したり、磁着したりして固定しているため、ナット本体64を雄螺子部22に螺合する前にナット本体64から指を離してしまっても、ナット本体64がナット誘導部40と圧接部材100に引っ掛かって落下しない(図8参照)。
ナット60は最終的にレンチを使って規定のトルクで締める。
ここではボルト24を下向きに配設する場合につき説明したが、水平横向きに配設する場合にも、同様にしてナット60の落下防止を図ることができる。
【0018】
この第1実施例によれば、ナット60をボルト24に螺合するため、ナット本体64の底面側から雌螺子孔61の中にナット誘導部40を挿通すると、ナット60の弾性部材から成る圧接部材100の通し孔101が丸棒部42の先端部に押し開かれてこの丸棒部42の外周面に圧接するとともに、磁力で圧接部材100の通し孔101の周縁が丸棒部42の外周面に磁着する。よって、雄螺子部22にナット本体64の雌螺子部62を螺合させる前であって雄螺子部22にナット本体64の雌螺子部62を当接する以前に、誤ってナット60から指を放してしまっても、圧接部材100が摩擦と磁力で丸棒部42に固定されるので、ナット60はナット誘導部40から落下しない。
雄螺子部22の先端部にナット本体64の雌螺子部62を螺合した後、ナット本体64の螺合を進めると、圧接部材100の通し孔101がテーパ部41に引っ掛かったり、圧接部材100が雄螺子部22の先端に当たったりして圧接部材100だけ移動出来なくなり、ナット本体64から剥がれる。剥がれた圧接部材100が不要であれば圧接部材100を下方へ押し下げることでナット誘導部40から容易に外すことができる。
また、ナット60をナット誘導部40に挿入後、軸方向上方へ移動させるとテーパ部41によりナット60の軸とボルト24の軸が自動的に合って来るので、軸合わせをするためにナット60をボルト24の軸に対し垂直方向へ移動調整しなくて済む。
【実施例2】
【0019】
次に、図9、図10を参照して本発明の第2実施例を説明する。図9は本発明に係るナット誘導部付きボルト(六角ボルト)の側面図、図10は本発明に係るナット(六角ナット)の正面図である。なお、第1実施例と同一の構成部分には同一の符号が付してある。
上記した第1実施例では圧接部材をナット本体に弱く接着して通し孔が径の大きなテーパ部に挿通されたり、通し孔周縁が雄螺子部の先端に当たると、圧接部材がナット本体から剥がれるようにしたが、第2実施例は、圧接部材をナット本体に着脱自在に強く接着したり或いは完全に固着し、通し孔がナット誘導部のテーパ部に挿通されたり、雄螺子部に当たって押し開かれても剥がれないようにしたものである。
図9において、24Aは鋼、磁性ステンレス鋼などの磁性体からなるナット誘導部付きボルトであり、ナット誘導部40Aは長さは第1実施例と同じW1であるが、丸棒部42
Aの径L1’は雄螺子部22の谷径Lより小さい範囲で第1実施例より少し太く形成してある。図10において、60Aはナットであり、弾性を有する高磁力ネオジシートなどのマグネットシートから成る円盤状の圧接部材100Aの中央に、ナット誘導部40Aの丸棒部42Aの径L1’より少しだけ小さい径L2’の通し口部としての通し孔101Aを有し、ナット本体64の内、雌螺子孔61の開いた頂面側の端面65に雌螺子孔61の一端を閉塞するようにして着脱自在に強く接着されているか、または着脱不能に完全に固着されている。
上記のように構成されたナット60Aは図9のボルト24Aと組み合わせて使用される。その他の構成部分は第1実施例と全く同様に構成されている。
【0020】
図11は上記したボルト24Aとナット60Aの使用方法の説明図であり、以下、この図を参照して上記した第2実施例の作用を説明する。なお、図11ではボルト24Aは下向き(頭部21が上、ナット誘導部40Aが下)に配設されて、3枚の板状の締結対象部材100、101、102の孔に通されているものとする。
ナット60Aをボルト24Aに螺合する場合、左手の指でボルト24Aの頭部21を上から押さえながら、まず右手の指でナット60Aを掴み、圧接部材100Aとは反対の底面側の端面63からナット60Aの雌螺子孔61をボルト24Aのナット誘導部40Aに合わせて挿通していく(図5(1)参照)。最初は第1実施例と同様にして、ナット誘導部40Aの丸棒部42Aの先端が圧接部材100Aの通し孔101Aに当たると、磁力で圧接部材100Aの通し孔101Aの周縁が丸棒部42Aの先端に磁着し(図5(2)参照)、ナット60Aを軸方向上方(ボルト24Aの頭部21の方向)へ少し移動すると、丸棒部42Aの先端部により通し孔101Aが押し開かれて圧接部材100Aの弾性で通し孔101Aの周縁が丸棒部42Aの先端の周面に圧接する(図5(3)参照)。更にナット60Aを軸方向上方へ少し移動すると丸棒部42Aの先端が通し孔101Aから外側へ少し出る(図6(1)参照)。
この際、まだ、ナット本体64の底面側の端面63や雌螺子孔61はボルト本体20の雄螺子部22の先端には当接していない。通し孔101Aが丸棒部42Aの先端部により押し開かれて、圧接部材100Aの弾性で通し孔101Aの周縁が丸棒部42Aの先端の周面に圧接した状態になると、ナット60Aから誤って指を離してしまいナット60Aが重力で落下しようとしても、圧接部材100Aの通し孔101Aと丸棒部42Aの間に生じる大きな摩擦力及び磁力により、圧接部材100Aがナット誘導部40Aの丸棒部42Aに固定されるので、ナット60Aは落下しない。
【0021】
ナット60Aをナット誘導部40Aに挿入後、軸方向上方へ更に移動させ、ナット60Aの底面側の端面63が雄螺子部22の先端に来たところで、ナット60Aの雌螺子部62を雄螺子部22に押し当て、少し回して噛み合わせながらナット60Aの雌螺子部62を雄螺子部22に少し螺合し、次に、指をナット60Aから放して指の姿勢を元に戻したのち再びナット60Aを指で掴んで少し回し、雄螺子部22に対するナット60Aの螺合を進めるという動作を繰り返す(図11(1)参照)。なお、圧接部材100Aの通し孔101Aをナット誘導部40Aに挿通すると、ナット60Aの軸とボルト24Aの軸がほぼ一致するので、螺合時にナット60Aとボルト24Aの軸合わせをするためにナット60Aをボルト24Aの軸に対し垂直方向へ移動調整しなくて済む。
【0022】
その後、雄螺子部22へのナット60Aの螺合が進み、圧接部材100Aの通し孔101Aがテーパ部41、更に雄螺子部22に当たっても圧接部材100Aがナット本体64に強く接着されていたり、固着されているため、剥がれることなくテーパ部41、雄螺子部22に押し開かれるので、螺合の妨げにはならない(図11(2)、(3))。また、通し孔101Aはテーパ部41により徐々に拡げられるので、円滑に螺合作業を行える。締結後は圧接部材100Aの通し孔101Aの周縁が雄螺子部22の外周に圧接し、圧接部材100Aと雄螺子部22との摩擦力及び磁着力により、ナット60Aの緩み防止機能
が発揮される。
ナット60Aは最終的にレンチを使って規定のトルクで締める。若し、締結後のナット60Aをボルト24Aから外したい場合、圧接部材100Aがナット本体64に着脱自在に装着されている場合には、先に圧接部材100Aをナット本体64から分離し、雄螺子部22、ナット誘導部40Aから外し、しかるのちナット本体64を雄螺子部22から螺退させることで、容易にナット60Aを取り外すことができる。
ここではボルト24Aを下向きに配設する場合につき説明したが、水平横向きに配設する場合にも、同様にしてナット60Aの落下防止を図ることができる。
【0023】
この第2実施例によれば、ナット60Aをボルト24Aに螺合するため、ナット本体64の底面側から雌螺子孔61の中にナット誘導部40Aを挿通すると、ナット60Aの弾性部材から成る圧接部材100Aの通し孔101Aが丸棒部42Aの先端部に押し開かれてこの丸棒部42Aの外周面に圧接するとともに、磁力で圧接部材100Aの通し孔101Aの周縁が丸棒部42Aの外周面に磁着する。よって、雄螺子部22にナット本体64の雌螺子部62を螺合させる前であって雄螺子部22にナット本体64の雌螺子部62を当接する以前に、誤ってナット60Aから指を放してしまっても、圧接部材100Aが摩擦と磁力で丸棒部42Aに固定されるので、ナット60Aはナット誘導部40Aから落下しない。
また、圧接部材100Aの通し孔101Aをナット誘導部40Aに挿通すると、ナット60Aの軸とボルト24Aの軸がほぼ一致するので、螺合時にナット60Aとボルト24Aの軸合わせをするためにナット60Aをボルト24Aの軸に対し垂直方向へ移動調整しなくて済む。
また、雄螺子部22へのナット60Aの螺合が進み、圧接部材100Aの通し孔101Aがテーパ部41、更に雄螺子部22に当たっても圧接部材100Aがナット本体64に強く接着されていたり、固着されているため、剥がれることなくテーパ部41、雄螺子部22に押し開かれるので、螺合の妨げにはならない。通し孔101Aはテーパ部41により徐々に拡げられるので、円滑に螺合作業を行うことができる。締結後は圧接部材100Aと雄螺子部22との摩擦力及び磁着力により、ナット60Aの緩み防止機能が発揮される。
【0024】
なお、上記した各実施例では圧接部材はナット本体の雌螺子孔の内、頂面側の一端を閉塞するように装着したが、雌螺子孔を頂面側より軸方向外側に延長した部分を閉塞するようにして装着しても良い。具体的には図12に示す如く、ナット本体64の頂面側の端面65に雌螺子孔61を頂面より軸方向外側に延長した部分(二点鎖線A参照)を閉塞するようにして帽子形の圧接部材100’を装着し、圧接部材100’の中央に通し孔101を設けるようにする。
また、上記した第1、第2実施例ではボルト本体に対しナット誘導部を一体的に形成する例を挙げたが、ボルト本体とは別に磁性体によりナット誘導部を形成しておき、ボルト本体の先端に着脱自在に嵌着または螺合して一体化したり、接着、溶接等により固着して一体化するようにしても良い。
【0025】
また、上記した第1、第2実施例では弾性を有するマグネットシート製の圧接部材の通し口部を円形の通し孔とする場合を例に挙げて説明したが、本発明は何らこれに限定されず、例えば、図13(1)に示す如く、圧接部材100Bの中央に開けた通し孔101の周縁に更に放射状に表裏貫通した切り込み102を刻設するようにしたり、図13(2)に示す如く、圧接部材100Cの中心から表裏貫通して放射状に延びた切り込み103を刻設して通し口部としたり、図13(3)に示す如く、圧接部材100Dの周縁側から中央に向けて放射状に複数の山形の爪部104を突設させて通し口部としたり、図13(4)に示す如く、圧接部材100Eの周縁側から中央に向けて放射状に複数の棒状の爪部105を突設させて通し口部としたりしても良い。
但し、図13(1)の場合、通し孔101の径はナット誘導部の径より小さくする。切り込み102の長さは、第1実施例の如く圧接部材100Bが雄螺子部の先端に当たるとナット本体64から外れるようにする場合は短くても良く、第2実施例の如く圧接部材100Bが雄螺子部の先端に当接してもナット本体64から外れず、螺合後、雄螺子部の外周に圧接するようにする場合は、ナット本体64の雌螺子孔61の周端近くか、周端を越えるまで所まで延ばしても良い。
図13(2)の場合、切り込み103の圧接部材100Cの中心からの長さは、第1実施例の如く圧接部材100Cが雄螺子部の先端に当たるとナット本体から外れるようにする場合はナット誘導部の半径と同じか少し長い程度でも良く、第2実施例の如く圧接部材100Cが雄螺子部の外周に圧接するようにする場合は、ナット本体64の雌螺子孔61の周端近くか、周端を越えるまで所まで延ばしても良い。
図13(3)、(4)の場合、圧接部材100D、100Eの中心から爪部104、105の先端までの距離R、R’はナット誘導部の半径より短くする。爪部104、105の長さM、M’は、第1実施例の如く圧接部材100D、100Eが雄螺子部の先端に当たるとナット本体64から外れるようにする場合は短くても良く、第2実施例の如く圧接部材100D、100Eが雄螺子部の外周に圧接するようにしたい場合は、爪部104、105の基端をナット本体64の雌螺子孔61の周端近くか、周端を越える所まで延ばしても良い。また図13(3)、(4)の爪部104、105の数を3つとしたり、5個以上としても良い。
【0026】
一例として第2実施例における圧接部材を、図13(3)の圧接部材100Dに置き換えた場合の作用説明を図14、図15に示す。図14、図15において、ナット60Dはナット本体64の頂面側の端面65に圧接部材100Dを着脱自在に強く接着するか、固着して形成してある。
図14(1)に示す如くナット60Dの底面側端面63の側から雌螺子孔61をボルト24Aのナット誘導部40Aに合わせて挿通していき、ナット誘導部40Aの丸棒部42Aの先端が圧接部材100Dの中央付近に当たると、磁力で圧接部材100Dが丸棒部42Aの先端に磁着し(図14(2))、ナット60Dを軸方向上方(ボルト24Aの頭部21の方向)へ少し移動すると、丸棒部42Aの先端部により爪部104が撓みながら押し開かれて圧接部材100Dの弾性で、爪部104の先端部分が丸棒部42Aの先端の周面に圧接する(図14(3))。更にナット60Dを軸方向上方へ少し移動すると丸棒部42Aの先端が爪部104の間から外側へ少し出る(図15(1))。この際、まだナット本体64の底面側の端面63や雌螺子孔61はボルト本体20の雄螺子部22の先端には当接していない。爪部104が丸棒部42Aの先端部により押し開かれて、圧接部材100Dの弾性で爪部104の近傍が丸棒部42Aの先端の周面に圧接した状態になると、ナット60Dから誤って指を離してしまいナット60Dが重力で落下しようとしても、圧接部材100Dの爪部104と丸棒部42Aの間に生じる大きな摩擦力及び磁力により、圧接部材100Dがナット誘導部40Aの丸棒部42Aに固定されるので、ナット60Dは落下しない。
【0027】
ナット60Dをナット誘導部40Aに挿入後、軸方向上方へ更に移動させ、ナット60Dの底面側の端面63が雄螺子部22の先端に来たところで、ナット60Dの雌螺子部62を雄螺子部22に押し当て、少し回して噛み合わせながらナット60Dの雌螺子部62を雄螺子部22に少し螺合し、次に、指をナット60Dから放して指の姿勢を元に戻したのち再びナット60Dを指で掴んで少し回し、雄螺子部22に対するナット60Dの螺合を進めるという動作を繰り返す(図15(2)、(3)参照)。なお、圧接部材100Dの爪部104をナット誘導部40Aに挿通すると、ナット60Dの軸とボルト24Aの軸がほぼ一致するので、螺合時にナット60Dとボルト24Aの軸合わせをするためにナット60Dをボルト24Aの軸に対し垂直方向へ移動調整しなくて済む。
【0028】
その後、雄螺子部22へのナット60Dの螺合が進み、圧接部材100Dの爪部104がテーパ部41、更に雄螺子部22に当たっても圧接部材100Dがナット本体64に強く接着されていたり、固着されていたりするため、剥がれることなく爪部104がテーパ部41、雄螺子部22に押し開かれるので、螺合の妨げにはならない(図15(3)、図16)。また、爪部104はテーパ部41により徐々に拡げられるので、円滑に螺合作業を行える。締結後は圧接部材100Dの爪部104が雄螺子部22の外周に圧接し、圧接部材100Dと雄螺子部22との摩擦力及び磁着力により、ナット60Dの緩み防止機能が発揮される。
図13(1)、(2)、(4)の圧接部材を第2実施例の圧接部材と置き換えた場合も、図14乃至図16と同様にして、ナット落下防止、緩み止め機能を発揮する。
なお、第1、第2実施例及び図13に示す各種の圧接部材の外形を円形としたが、ナット本体の外形に合わせて六角形状、四角形状などの多角形状としても良い。
【0029】
また、上記した第1、第2実施例及びそれらの変形例では、弾性を有するマグネットシート製の圧接部材をナット本体の頂面側の端面に着脱自在に装着するかまたは固着して装着する場合を例に挙げて説明したが、本発明は何らこれに限定されず、例えば図17に示す如く、マグネットシート製で角筒状の圧接部材100Fとし、ナット本体64の側面から頂面にわたる外面に接着剤で接着するなどして着脱自在に嵌着するかまたは固着して嵌着し、圧接部材100Fの内、ナット本体64の雌螺子孔61の一端を閉塞した頂面106の中央に放射状の爪部104(図13(3)参照)などの通し口部を設けておくようにしても良い。
また、図18に示す如く、ナット本体64Aの頂面側に、雌螺子孔61の谷径(雄螺子部の山径)より径の大きな円盤状の段孔66を雌螺子孔61と同軸に刻設し、この段孔66にマグネットシート製で円盤状の圧接部材100Gを雌螺子孔61の一端を塞ぐようにして接着剤で接着するなどして着脱自在に装着するかまたは固着して装着し、圧接部材100Gの中央に放射状の爪部104(図13(3)参照)などの通し口部を設けておくようにしても良い。
【0030】
また、上記した第1実施例及びそれらの変形例では、弾性を有するマグネットシート製の圧接部材をナット本体の頂面側の端面に着脱自在に装着するかまたは固着して装着する場合を例に挙げて説明したが、これと異なり、図19に示す如く、マグネットシート製で円盤状の圧接部材100Hの下面にナット本体64の雌螺子孔61と略同径で雌螺子孔101に着脱自在に嵌着可能なリング状の突設107を設けるとともに、中央に通し孔101などの通し口部を設け、ナット本体64の頂面側の端面63に雌螺子孔61の一端部を塞ぐようにして突設部107を含む圧接部材100Hを弱い接着剤でナット本体64に接着したり、突設部107を雌螺子孔61に嵌合するなどして雌螺子孔101に着脱自在に装着するようにしても良い。
また、図20に示す如く、マグネットシート製で雌螺子孔101と同径な円盤状の圧接部材100Iの中央に通し孔101などの通し口部を設け、ナット本体64の頂面側の雌螺子孔61の中に雌螺子孔61の一端部を塞ぐようにして圧接部材100Iの外周面を弱い接着剤でナット本体64に接着したり、圧接部材100Iを雌螺子孔61に嵌合するなどして雌螺子孔61に着脱自在に装着するようにしても良い。
【0031】
また、上記した第2実施例及びそれらの変形例では、弾性を有するマグネットシート製の圧接部材をナット本体の頂面側の端面に着脱自在に装着するかまたは固着して装着する場合を例に挙げて説明したが、これと異なり、ナット本体の頂面側に圧接部材を内蔵する形で固着するようにしても良い。
例えば、図21に示す如く、ナット本体64Bの頂面近くに、雌螺子孔61の谷径(雄螺子部の山径)より溝底径L10の大きな円盤状の溝孔67を雌螺子孔61と同軸に刻設し、この溝孔67にマグネットシート製で円盤状の圧接部材100Jを雌螺子孔61の一
端を塞ぐようにして接着剤で接着するなどして着脱自在に装着するかまたは固着して装着し、圧接部材100Jの中央に放射状の爪部104(図13(3)参照)などの通し口部を設けておくようにしても良い。この場合、図22に示す如く、ナット本体64Bに形成した溝孔67に圧接部材100Jを圧入することにより圧接部材100Jの周縁部を溝孔67に嵌入させるようにして形成してもよい。
また、ナット本体の頂面近くに、雌螺子孔の端を閉塞するようにして圧接部材をカシメで固着するようにしても良い。この場合、まず図23(1)に示す如く、切削加工などによりナット本体64Cの頂面側に雌螺子孔61の谷径(雄螺子部の山径)より径の大きな円盤状の段孔68を雌螺子孔61と同軸に刻設するとともに段孔68の周端から軸方向外側に突設した薄い肉厚の円筒部69を形成しておく。次に段孔68に圧接部材100Kを嵌めたあと(図23(2)、(3))、ナット本体64Cを軸回りに回転しながら治具70により円筒部69を軸の中心方向へ押圧して圧接部材100Kの周縁部をカシメて固着すれば良い(図23(4)、(5))。
【0032】
また、上記した第1、第2実施例及びそれらの変形例では、圧接部材付のナットを底面側の端面からボルト先端のナット誘導部に挿入していくと、ナット誘導部の先端部により圧接部材の通し口部が押し開かれて、通し口部の周縁がナット誘導部の外周に圧接するようにしたが、本発明は何らこれに限定されず、例えば、図3、図10、図13(1)の圧接部材を、通し口部としての通し孔の径がナット誘導部の丸棒部の径と同一に形成された密接部材に置き換え、この密接部材付のナットを外部からボルト先端のナット誘導部に挿入していくと、ナット誘導部の先端部が密接部材の通し口部としての通し孔に挿通されて密接するようにしても良い。この密接部材によっても、通し口部としての通し孔と丸棒部の外周の間に生じる磁力と摩擦力でナットがナット誘導部に固定されるため、ナットを雄螺子部に螺合する前にナットから指を離してしまっても、ナットがナット誘導部から落下しないようにできる。なお、密接部材は弾性を有するマグネットシートとするほか、第1実施例の圧接部材を置き換える場合は、弾性の殆ど無い硬質のマグネットシートとすることもできる。
【0033】
また、上記した第1、第2実施例及びそれらの変形例では、圧接部材、密接部材をマグネットシート製としたが、マグネットシートと、磁性体シートまたは非磁性体シートの積層シートを用いることもできる。
また、ナット誘導部付ボルトの側にも磁石を組み込むようにしても良い。例えば、図24(1)、(2)に示す如くボルト本体20の頭部21の頂面23に円盤状の磁石80を磁着または接着等で装着したり、図25(1)、(2)に示す如くボルト本体20の頭部21の1または複数の側面24に方形板状の磁石82を磁着または接着等で装着したり、図26(1)、(2)に示す如くボルト本体20の頭部21の下面25にリング状の磁石83を磁着または接着等で装着したりしても良い。
また、図27に示す如くボルト本体20Aの雄螺子部22の先端寄りの軸芯に沿って棒状の磁石84を内蔵させても良い。具体的には、図28の如く、磁性体から成るボルト本体20Aの先端側の中心部に軸芯に沿って円柱状の長孔26を穿設し、この長孔26に丸棒状の磁石84を嵌め込み、接着したり磁着したりするなどして装着したのち、磁石84を塞ぐようにしてボルト本体20Aの先端にナット誘導部40を接着したり、溶接したりして一体化する。
【0034】
また、図29に示す如く雄螺子部22の先端部に穿設した孔27、28に、互いに同極を近接して対向させた2枚の円盤状または方形板状の磁石85、86を軸と平行に内蔵させたり、図30に示す如く雄螺子部22の先端部とナット誘導部40のテーパ部41に穿設した孔29、30に、同極を近接して対向させた2枚の円盤状の磁石87、88を軸と垂直で内蔵させたりしても良い。また、ナット誘導部の全部を磁石により形成したり、ナット誘導部の一部を磁石、残部を磁性体により形成したりしても良い。
このようにすれば、ナット誘導部付ボルトに組み込まれた磁石により、圧接部材をより強くナット誘導部に磁着させることができる。図27、図29、図30の例は、ボルト本体の部分が非磁性ステンレス鋼などの非磁性体から形成されている場合に適している。
【0035】
また、ナットの側に磁石を組み込むようにしても良く、例えば、図31に示す如く、ナット本体64の頂面側の端面63に着脱自在または固着して装着された圧接部材100の外面に雌螺子部62の谷径より内径の大きなリング状の磁石89を装着したり、図32に示す如くナット本体64の頂面側の端面63に雌螺子部62より内径の大きなリング状の磁石90を着脱自在または固着して装着し、この磁石90の外面に圧接部材100を着脱自在または固着して装着するようにしたり、図33に示す如くナット本体64の1または複数の側面71に磁石91を装着するようにして、圧接部材100とナット誘導部の磁着力を増大させるようにしても良い。
このように、ボルトまたはナットに磁石を組み込む場合、圧接部材または密接部材を単に弾性を有する磁性体シートなどの磁性体部材により形成したり、密接部材を単に硬質の磁性体シートなどの磁性体部材により形成することもできる。
【0036】
また、上記した各実施例及び変形例における圧接部材または密接部材をゴム、弾性プラスチック部材、薄い金属板等の弾性を有する非磁性体部材に置き換えたり、密接部材を硬質ゴム、硬質プラスチック、金属板等の非磁性体部材に置き換え、ナット誘導部、またはナット誘導部と雄螺子部に対して圧接部材または密接部材が圧接または密接だけするようにしても良い。
【0037】
また、上記した第2実施例及びその変形例では、ナット本体とは別に形成された圧接部材または密接部材をナット本体に装着するようにしたが、同等の機能を有する圧接部または密接部をナット本体の頂面側にナット本体と一体的に形成するようにしても良い。具体的には、まず図34(1)に示す如く、切削加工などにより鋼、磁性ステンレス鋼、非磁性ステンレス鋼などのナット本体64Dの頂面側の端面65に、雌螺子孔61と同軸上で雌螺子部62の谷径(雄螺子部の山径)L20より内径L21の大きな薄い肉厚の円筒部72を形成しておく。次に円筒部72を短冊状に頂面近くまで切削して複数の爪部73を形成し(図34(2))、各爪部73を雌螺子孔61の中心方向へ略90度、折り曲げて雌螺子孔61を閉塞する。折り曲げられた薄肉の爪部73はバネ弾性を有する。折り曲げられた各爪部73の先端は雌螺子孔61の中心から等距離離れるようにし、各爪部73の先端の成す円の径L200はナット誘導部の丸棒部(42)の径より小さくなるようにする。また、折り曲げられた各爪部73の基端の成す円の径L300は雌螺子部62の谷径(雄螺子部の山径)より少し大きくなるようにし、ナット本体64Dの底面側の端面63から爪部73の入り口までの高さH’よりナット誘導部の長さを長くしておく。好ましくは、ナット誘導部の長さをナット本体64Dの底面側の端面63から爪部73の出口までの高さH1’以上にしておく。このようにして、ナット本体64Dの頂面側に形成した圧接部100Xは可撓性を有し、爪部73が通し口部を成し、第2実施例の圧接部材100Aと同等の機能を発揮する。なお、各爪部73の先端の成す円の径L200をナット誘導部の丸棒部の径と同一にすれば、密接部としての機能を発揮する。
【0038】
また、上記した各実施例及び変形例では、ナット誘導部をテーパ部と丸棒部より形成したが、図35(1)に示す如く丸棒部42Bだけから形成したり、図35(2)に示す如くテーパ部41Aだけから形成したり、図35(3)に示す如く、丸棒部42Cの途中にくびれ部43を形成しても良い。また、丸棒部の先端部を軸と直角方向に膨大させてもよく、例えば、図35(4)に示す如く丸棒部42Dの先端を軸と略球状に膨大させて膨大部44としたり、図35(5)に示す如く丸棒部42Eの先端を円盤状に膨大させて膨大部45を設けたりして、ナット誘導部の先端部に圧接部材、密接部材、圧接部、密接部の通し口部を挿通するとき、これらの膨大部44、45に押し開かれたあと、丸棒部42D
、42Eに圧接または密接した圧接部材等がナット誘導部から抜けようとしても膨大部44、45に引っ掛かって抜け落ちくなるようにしても良い。
また、上記した各実施例及び変形例における圧接部材、密接部材、圧接部、密接部の通し口部近傍の表面の内、ナット誘導部に挿入されたときのナット誘導部表面との接触面に予め粘着剤層を形成しておくか、またはナット誘導部に挿入されたときのナット誘導部表面との接触面と雄螺子部に挿入されたときの雄螺子部表面との接触面に予め粘着剤層を形成しておき、ナット誘導部の表面またはナット誘導部の表面と雄螺子部の表面に対し、圧接部材、密接部材、圧接部、密接部が圧接または密接したり、圧接または密接と磁着したりするのに加えて、圧接部材または密接部材がナット誘導部に粘着もするようにして、より一層ナットが落下しにくくすることもできる。
また、ナット誘導部の表面をサンドペーパで磨くなどして粗面としたり、ナット誘導部の表面の全部または一部の軸周りに溝を形成するようにしても良く、例えば、図36(1)に示す如く多数のリング状の溝46を軸方向に多数並べて刻設したり、図36(2)に示す如く螺旋状の溝47を刻設したりして、圧接部材、密接部材、圧接部、密接部との間の摩擦が大きくなるようにしても良い。また、ナット誘導部の表面に薄く粘着剤を塗布して粘着層を形成して、圧接部材、密接部材、圧接部、密接部の通し口部の周りが粘着するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、六角ボルト、六角穴付きボルト、蝶ボルト、アンカーボルト、フックボルト、羽子板ボルト、パイプボルト、Uボルト、チャンネルボルト、アイボルト、菱形ボルト、スタッドボルト、ボタンキャップボルトなどを初めとする各種ボルトと対応するナットに適用できる。
【符号の説明】
【0040】
20 ボルト本体
21 頭部
22 雄螺子部
24 ナット誘導部付きボルト
40 ナット誘導部
60 ナット
64 ナット本体
100 圧接部材
101 通し孔

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