【富士山お中道の植物観察日記】 2023年11月8日
晩秋のお中道
10月中旬に7合目以上は真っ白になった富士山ですが、11月になって暖かい日が続き、雨も降って、すっかり融けてしまいました。
落葉樹は葉を落とし、黄葉の季節は終わりました。これから冬を迎える植物の様子を見てきました。
ダケカンバ
先月10月はあんなに鮮やかに黄葉していたダケカンバも、すでに葉を落としていました。
ダケカンバが葉を落とすと果穂が目立ってみえます。
枝を揺すると種子がこぼれます。この種子は風で散布されます。
ミヤマハンノキ
ミヤマハンノキの葉は紅葉することなく、霜で枯れます。
こちらも、すでに葉が落ちて枝先が見やすくなっていました。
枝を観察して見ましょう。2種類の芽を見つけられるでしょうか?
枝の先端にあるゴツゴツした芽は雄花の花芽です。
その下段にある、雄花の花芽の半分ほどの長さのつるんとした芽は葉芽です。雌花はこの葉芽のなかに隠れています。
わさわさと枝を揺すると、堅果から種子がこぼれ落ちました。
コメツガ
コメツガの松ぼっくり(球果といいます)は開いて、もう種子は飛び去っていました。
ハクサンシャクナゲ
ハクサンシャクナゲの葉は、下を向き始めていました。
これは厳しい冬を迎える準備です。
(ハクサンシャクナゲの真冬の様子はこちらをご覧ください↓)
先月(10月)の観察では、森林内の日陰のシャクナゲはまだ冬支度をしていない様子でしたが、今回は日向、日陰に限らず、どのシャクナゲも冬支度を始めていました(先月の観察の様子はこちらをご覧ください↓)。
コケモモ
9月の観察で、コケモモは真っ赤に実った姿を見せてくれました(9月の様子はこちらをご覧ください↓)。
今回、足元に絨毯のように広がったコケモモ群落の中をよーく探すと、わずかですが、よく熟した果実が残っていました。
さてコケモモは、葉をつけたまま冬を越す常緑広葉樹です(他の、お中道唯一の常緑広葉樹はハクサンシャクナゲです)。
越冬する葉は、長い期間光合成をしていられるというメリットがあるのですが、低温下で強い太陽光を浴びると強光障害により葉が枯れるかもしれないというリスクを伴います。
それを避けるために、日向のコケモモは葉にアントシアンを蓄積させて、強い光がクロロフィルに入ることを防いでいます。
日陰のコケモモと比べてみると、日向のコケモモが赤みを帯びているのが良くわかります。
しかしコケモモの越冬は、雪の下に埋まることで低温や乾燥などの厳しい環境から守られることを前提としています。
葉を赤く変化させたコケモモも積雪を待ちわびています。
これからいよいよ冬本番
これから本格的な冬を迎えます。植物がどんなふうに順化していくのか、見ていきたいと思います。
なおスバルラインは、冬も営業していますが、道路が凍結すると通行止めになるので、実際には1~3月はお中道まで開通することはまれです。開通している限りはレポートしたいと思います。
次回をお楽しみに!
前回(10月)のようすはこちら↓
富士山お中道を歩いて自然観察」の連載はこちら↓
「富士山お中道の生物図鑑」の連載はこちら↓
今回の登場人物たちの紹介もあります。
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