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彼らはフィジカルモンスター

身近なモータースポーツ

モータースポーツと聞いて、F1やWRC、MotoGPなどを思い浮かべる人はまずまず居るはずだ。
いや、ほとんどF1か。日本においては事オープンホイールであれば

あれってF1?

みたいなリアクションが大体出てくる、興味が無い人はスーパーFJでも
F1?あれF1なの?って感じでリアクションを取る。ということで、大体合っていると思う。

タミヤ模型はミニ四駆を世界最小のモータースポーツと謳っており、確かに最小でもっとも身近な存在だ。
だが、自身が搭乗することは不可能であり、これはラジコンもそうだ。
そうすると"乗れる"身近なモータースポーツはレンタルカートあたりになってくる。筆者は友人とこのレンタルカートを体験すること通算2回のド初心者だ。

レンタルカートってどうなん?という未経験者の諸兄が一読してくれていている最中ならば嬉しい。
経験者の諸兄は鼻で笑って欲しい。

レンタルカートの王道ソディカートRT8

マリオカートを想像してると面食らう

世界的にカートで最も身近なものは
言わずもがなでマリオカートだろう。バナナの皮一つでマンマミーヤの厳しい世界を戦う世界的ゲームタイトルだ。
だが、現実のカートはそこまで直接的に物理攻撃が横行するほど苛烈ではないし、バナナの皮も落ちていない。
亀の甲羅が突然後ろから飛んできて吹っ飛ばされることも無い。
が、間違いなくポヨンッて跳ねてドリフトを行い、そのアングルを結構長いRを持つコーナーで維持する彼らに、尊敬の念を抱くことになる。

まずステアリングが死ぬほど重い

よーしパパドリフトしちゃうぞ。
なんて絶対言えない。まずカートはそもそもそんなに舵角の付くものではなく、ハイスピードで走っている時の状態が基準になるので
パワステ付きの乗用車とは比較にならない、寧ろあのサイズで90度もステアリングが切れたら事故必須だ。

写真:ソディカート公式より

全長は1865㎜、全幅が1350㎜しかないのだから、ホイールベースも当然めっちゃ短い。故に動きがかなりクイック。重いとは言ってもコーナーで過剰にブレーキを掛けたり、雑なスロットル操作を行えば簡単にクルっとスピンしてしまう。
実際に乗ってある程度コースを駆け抜け、タイムを出そうと頑張ると、はやる気持ちからテールを流してしまうことがある。瞬間的にカウンターを当てるのだが、そこで思う

マリオやピーチ姫すげぇな・・・・と

とてもではないが、現実のカートで専用のモディファイなしに
ゲームの様なドリフトは出来ない。いや、やってしまう猛者はいるかもしれないが、筆者を含めまずまずカート初心者がそんな芸当は出来ないと断言しよう。


自分のフィジカルの低さを痛感する

マリオカートとの対比という、荒唐無稽な前置きはここまでにして
実際のカートに乗った際の感触はこうだ。
・横Gがすごい
・体感速度がすごい
・疲労感がすごい
概ねこの3つに集約される。
筆者は既に30代のしがないサラリーマン、普段運動はしないし
ランニングは大嫌い。球技や格闘技、陸上競技に水泳とも無縁だ。

◆横Gがすごい
これはそもそもの速度とグリップのバランスが、普通自動車や普通自動二輪とは全然違う世界にあることに起因する。
カートの全高はロールバーの仕様によりよりけりだが890㎜~1040㎜だ。
よってロールセンターはめちゃくちゃ低い。もう地面に座っているも同義だ。
さらにカートには一般的な我々の想像するサスペンション機構はないので、ロールするというより、インリフトしている状態に近い。
人間を含めても300kgには満たない総重量で、タイヤは割に太いものだから
コーナーはクイックでかなりグイッと曲がりだす。
(バイク乗りとしてあのグリップ力は驚異的と言わざるを得ない)

故に、入力に対してものすごく機敏な反応を示す。
よって、気張っていないと人体で最も重い頭が車体のテッペンにあるがために頭が揺さぶられる。
頭どころか、体も上半身はほぼほぼマシンの上面に出ているため
頭、首、胴体が全体的に電車の突然の急停車レベルで振り回される。

初カートにして筆者をぶち抜いた友人Y

◆体感速度がすごい
先述の通り、着座位置はほぼ地面、マルボロの箱も立たない程度
故に40km/h程度であろう速度がめちゃくちゃ速く感じる。
普段、筆者が乗る普通自動車や大型自動二輪では40km/hなんて片手でサンドイッチが食べられる程度だが
カート乗車中にサンドイッチはとてもじゃないが食べられない。
普通乗用車との共通点なんて

四輪である

ぐらいなもので、ほぼほぼ何もかもが違うと言って良い。
だから40km/hでも相当なスピードレンジに感じるし
コースも幅は広くても、矢継ぎ早に次のコーナーがやってくるため
重いステアリングと、自身の焦りで滑るテールをねじ伏せ、ゼェゼェハァハァになるのである。迫り来るコーナーに対する緊迫感も疲労に一役買っていることは間違いない。

関西からの刺客というか筆者をカートに引きずり込んだ友人K

◆疲労感がすごい
心地よい疲労感とはなんだろうか、その一日の終わりのビールが美味しい事?達成感で爽やかな気分になること?汗ばんだ身体をそよぐ風が気持ちいいこと?
ともすればレンタルカートでそれを得るのは中々節度が難しい。
レースゲームをしたことがあれば、もうあとコンマ何秒・・・!と熱中してしまう気分は共感してくれる諸兄も多いと思う。
レンタルカートももちろんそうなってくるのだが
欲を掻いた先に待っている疲労感は、心地よいを簡単にブチ抜けた

全身筋肉痛

である。

痛い、次の日は大体全身が痛いし、バイクでツーリングなんてとてもじゃないが出かけられない。立ちゴケする未来が見えるので"未来を司る悪魔"に契約してもらえそうだ。レストインピースまで行っていつかみた地獄もいいところである。

よってこの概ね3要素に自分の身体は悲鳴を上げ、走り終えたピットで降車するのがやっとである。生まれたての子羊ちゃん一丁あがり!だ。

人ならざる速さですべてを置き去りにする友人H

遅い奴には、ドラマは追えない

どこのWarriorが言ったか、カートで速い人は純粋にスゴイと実感する。
同じ速度帯で走ってザラに1秒、2秒、3秒と先を行くのだ。
乱れる呼吸、頭をよぎる今日の晩御飯どうしよう、喉の渇き、母さん俺今横Gと結婚しそう、父さん洗濯機の中の脱水中ってこんな感じなのかな
みたいないろんな感情が複雑に織り交ざり、マーシャルの人が1スティントの終わりを告げるチェッカーを振る。

僕まだ生きてる!

そう実感すると同時に、ピットまでの帰り道が長く感じる。
400mもないコースが突然、スパ・フランコルシャンのフルコースではないかという程度には長く感じる。全体的にオー・ルージュ、気分はオーマイゴッネス。
そしてピットでは重いステアリングが熱烈に筆者の腕を出迎える。許してください。
90度に左へ曲がる必要があるのだが、ここが最後の砦、ふんぬっ!と震える腕に鞭を打ってカートの向きを変えて
待機列に停車して降車する。

しんどッッッッッッッッ

2回目だけどやっぱ自分のフィジカルの低さが露見するのがよくわかる。
体力はあるほうだなんて思っていたこれまでの自分にグッバイ
カートを経験してわかることは
・角田もガスリーもフェルスタッペンもペレスも、あれだけ速いF1マシンを2時間乗って降りればケロっとしている
・タイヤがもうないと無線芸しつつラップタイムの落ちないハミルトンは神業を2時間ブレずに続けている
・全開走行してクタクタの中、リエゾンで普通に100kmとか移動するオジェやロバンペラ凄すぎひん?
・上下左右で揺さぶられまくる車内で14日間の砂漠世界を駆けるアルアティヤやサインツパパほんとスゴイ
・酷暑の鈴鹿や富士で高温の中、身体と脳とフル回転の平峯やバゲットをはじめSGTドライバーはマジでスゴイ
という具合にモータースポーツを戦うすべての選手にリスペクトを抱かずには居られない。彼らはフィジカルモンスターなのだ。
そのための努力と研鑽を日々重ねている。最も身近なモータースポーツであるレンタルカートを通して、彼らの凄さの片鱗も身近に感じるのである。


結局どうなのさ

端的に言えば、レンタルカートはおススメだ。
費用に関しては場所場所でピンキリだが、概ね初めての人向けのスターターパックみたいなものは1万円~ぐらいからである。
店舗には貸しヘルメット、貸しグローブなどがあるので
手ぶらを売りにしているところも結構多い。普通自動車免許も不要であることもほとんどで、子供たちがバンバン驚愕のラップタイムで駆け抜けていることも珍しくない。
モータースポーツをよく見ている諸兄の中で、レンタルカートをちょっとやってみたいかも。と思っている人が居たら是非チャレンジしてみて欲しい。
走り終えた後にみるモータースポーツはまた一つ違った視点で楽しめるようになっているはずだ。
全身を襲う筋肉痛に関しては筆者は関知しないので、そこは予め了承願いたい。

レンタルカートは日本全国に結構ちょいちょいあります

今回お邪魔したところ

今回お邪魔したのは、東京都あきる野市にある
U-KART CIRCUIT TOKYO/AKIRUNO
圏央道あきる野インターから降りて1分もない好立地
コース幅も広く、三段階のステップアップ制で
初心者から上級者まで幅広く楽しめる。
貸しヘルメット、貸しシューズなども充実しており
手ぶらでOKなのも嬉しい。
平日は午前11時より、休日・祝日は午前10時より受付が始まる。
都心から1時間も無いので、モータースポーツのハシリだけでも体験してみよう!と思ったが吉日。是非行ってみよう。





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