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【連載】かくれ念仏/No.17~知覧の佐多兵右衛門 — 念仏の聞こえる杉林 —~

●知覧の佐多兵右衛門 — 念仏の聞こえる杉林 —

知覧に佐多兵右衛門という念仏者がいた。
真宗信仰の嫌疑で捕らえられ、役人が「絵像はどこにある」と迫るも、本尊の隠し場所を白状せず、53日に亘って棒で打擲され全身不随になった。

その後、兵右衛門を救うため、親族が偽絵を差し出して許された。(偽絵は頴娃の浦芝原出身で、日向の福島に逃散していた荒嶽史郎兵衛が描いた)

時は流れて15年後、上方から布教僧がやってきた。兵右衛門は喜んで、ひそかに法座を開いた。しかし、僧侶の正体はなんと藩の役人のなりすましであり、兵右衛門はおとり捜査に引っかかってしまった。前科のある兵右衛門。

今回は素直に白状し、罰として永里の山仁田に杉の植樹七万五千本を命じられた。兵右衛門は杉を一本植えることが、極楽に一歩おもむくことと、不自由な脚を引きずりながら、歓喜の念で植樹に勤しんだという。

現在、この地は「七万五千」という小字になっている。『知覧郷土誌』には「この美林を仰いで梢を渡る風の音を聴くと念仏の声がかすかにきこえるということである。」と結んでいる。

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