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スティーヴ・ハウ・ライヴの海洋地形学おねえさん (プログレッシヴ・エッセイ 第7回)

1995年の冬、渋谷クラブクアトロ、イエスのギタリストであるスティーヴ・ハウのコンサートを見に行った。

当時、中学2年生の私にとってはイエスのメンバーなんてヒーローそのもの。
否、「イエス」だけに神と崇めていたものだ。
クラブクアトロは狭い会場で立ち見。会場に入るや否や、こんな間近で見られるなんてと心が躍った記憶がある。


ハウ1人だけの正真正銘のソロ公演で、バンド演奏の曲にはバックにテープが流されていたように思う。バンド曲が始まるときには「サァー」とテープ独特のヒスノイズが会場に響き渡っていた。
イエスの名曲「ラウンドアバウト」、エイジアのヒット曲「ヒート・オブ・ザ・モーメント」などをテープに合わせヴォーカルも披露。お世辞でもうまいとはいいがたい味のある歌声を聞いて、
「私もステージで歌っていいかも」
と背中を押してくれた。
なお、初めてステージ上で歌った曲は「ヒート・オブ・ザ・モーメント」である(1996年3月)。


ハウの真骨頂は何といってもギターのソロ演奏。お約束の「ザ・クラップ」「ムード・フォー・ア・デイ」で会場は大盛り上がり。
意外な選曲だったのが『海洋地形学の物語』収録の「古代文明」。
18分の大曲だが後半のクラシック・ギター・ソロを歌含めて披露した。


感動との2時間を過ごし、会場を出ようとしたときにテンションの高い声が聞こえてきた。

「私は『海洋地形学』が一番大好きなヘンタイです!」

30代ぐらいの眼鏡をかけた女性だった。
「古代文明」を聞いて喜びもひとしおだったのだろう。


それにしてもプログレファンには「自称ヘンタイ」が一定数いる。ニッチなジャンルゆえに、よりニッチなものにこそ価値を求めるのだ。

海洋地形学おねえさん、今は何をしているのだろう。
今もヘンタイアピールをしているのだろうか。
おそらく60歳ぐらいになるだろうか。


60歳というと金属恵比須のメイン顧客層ではないか。

「私は『ハリガネムシ』が一番大好きなド・ヘンタイです!」

と、声高々に叫んでくれてはいないだろうか。

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