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気まぐれ放蕩弁護士、いざ参上〜マーク・ラファロ〜

ACTORS PROFILE Vol. 19

マーク・ラファロ
「哀れなるものたち」


1967年アメリカ生まれ。気まぐれ放蕩弁護士、いざ参上。

 ダンカンは気まぐれな放蕩弁護士だ。彼は、狂気のサイエンティストの保護下にあったベラの婚約者として、彼女と共に大陸横断の旅に出る。根っから下世話なダンカンは、旅の間にどんどんと自立心を強くしていくベラに困惑する。

 ▲ラファロは知名度をぶち上げたブルース・バナー/ハルク役のイメージからか、穏やかで頼りになるテディベア的な可愛らしい印象がある。一方で、実力派ゆえのシリアスな映画でも抜群の安定感があるのが魅力だ。「ゾディアック」や「フォックスキャッチャー」「スポットライト」では助演として映画を支えた。特に「フォックスキャッチャー」では悲劇のレスリング兄弟のお兄ちゃんを演じ、冷たい雰囲気の作品において唯一の温もりを発していた。レスリング経験者でもあったラファロの動きには、鬼気迫るものがあった。あと「スポットライト」でも正義を叫ぶ見せ場があり、観る者の心を熱くさせた。

「それでも、やっぱりパパが好き!」がやっぱり好き!

でもやっぱり「それでも、やっぱりパパが好き!」のような心温まる映画のラファロは、テディベア的な包容力を爆発させていて、思わず顔が綻んでしまう。子どもたちとの交流も嬉しい!楽しい!大好き!そして「はじまりのうた」も見逃せない。鳴かず飛ばずの音楽プロデューサーとして憎めないダメンズの真骨頂をみせていた。音楽シーンも楽し気そのものだ。

 ▲「哀れなるものたち」でのラファロはある意味、未体験の領域に足を踏み入れる。彼が演じる弁護士ダンカンは、最初こそベラとの手軽な関係に満足していたが、段々と本当に好きになり彼女を束縛し始める。彼女が知識を手に入れるごとに、思い通りにいかなくなっていき、その恥さらしな本性を晒していく。

ベラ〜〜!

 ▲悪い奴かもしれないが、ラファロが演じることでなんとも言えないユーモアが吹き込まれていく。ダンカンがベラに振り回されれば振り回されるほど面白い。ラファロが裸一貫で挑んだ新境地を見守るしかない。


マーク・ラファロとアカデミー賞

・第83回アカデミー賞(2010)助演男優賞候補:キッズ・オールライト

 2000年の「ユー・キャン・カウント・オン・ミー」でブレイクしてから10年が経ったこの年に「キッズ・オールライト」でレズビアンカップルの子供たちの生物学上の父親役で見事オスカー初ノミネートを飾る。その大らかな性格と欠点もある人物像が目を引いた。だが受賞は「ザ・ファイター」のクリスチャン・ベールに渡った。髪を抜き、歯並びを変えるなどの大胆な役作りと魂のこもった演技は納得と言わざるを得ない。

・第87回アカデミー賞(2014)助演男優賞候補:フォックスキャッチャー

 ベネット・ミラー監督の「フォックスキャッチャー」で弟思いの温厚なレスリングコーチを演じた。悲劇的な展開の作品だけにラファロの温かな存在は癒しだ。この年の受賞は「セッション」のJ・K・シモンズだった。スパルタな音楽教師の役は助演男優賞の歴史の中でも上位にくる一世一代の名演技だった。これも納得。

・第88回アカデミー賞(2015)助演男優賞候補:スポットライト 世紀のスクープ

 この年のオスカー作品賞受賞作「スポットライト 世紀のスクープ」で2年連続3度目の候補入りを果たしたラファロ。前哨戦で票が割れたため本命不在の助演男優賞だったが、イギリスの知る人ぞ知るベテラン、マーク・ライランスが「ブリッジ・オブ・スパイ」での老スパイ役で妙演を魅せて、賞をかっさらっていった。この年は「クリード」からスタローンもいたし、ベールハーディ兄さんもいて豊作だった。

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