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リスキーな役柄をものともせずに観るもの共々、デンジャーゾーンへと引きずり込む〜ナタリー・ポートマン〜

ACTORS PROFILE Vol. 26

ナタリー・ポートマン
「メイ・ディセンバー ゆれる真実」


1981年イスラエル生まれ。リスキーな役柄をものともせずに観るもの共々、デンジャーゾーンへと引きずり込む。

 エリザベスは実話を基にした次回作のリサーチのために、題材となる夫婦のもとを訪れる。肉体的、精神的に夫婦を分析をしていくにつれて、不均衡な関係性へと足を踏み込んでいく。

 ▲「レオン」で世界を驚かせてから30年を迎えるナタリー・ポートマン。もうすっかりとベテランの佇まいだが、チャレンジングな役柄を求める姿勢は今も変わらない。「スター・ウォーズ」シリーズや「Vフォー・ヴェンデッタ」「終わりで始まりの4日間」「マイティ・ソー」シリーズなどのファンタジックな作品で可愛らしくも力強い存在で輝くイメージがある彼女だが、「ブラック・スワン」や「ジャッキー」といった心理的なドラマでは不安定な心情のキャラクターを見事に立ち上がらせる。特に前者での「白鳥の湖」を演じるバレリーナのニナの役は、観るものすらも不安に陥らせるナーバスなパフォーマンス。ナーバスの中から色気と共に、この世のものとは思えない怪物的な存在へと昇っていく様は圧巻だ。

 ▲今作「メイ・ディセンバー ゆれる真実」でも、リサーチをする俳優エリザベスの役で、リサーチ対象の年の差夫婦の微妙な隙間に入り込んでいく。「演じる」ことを武器に彼らと自分の境界線を押し広げ、夫婦の心をかき乱していく。

 ▲あらゆるテーマを刺激する本作だけに、ポートマンの刺激的な演技は観る者の心の平穏を乱していく。行き過ぎた演技の好奇心が行き着く先とは、如何に。


ナタリー・ポートマンとアカデミー賞

・第77回アカデミー賞(2004)助演女優賞候補:クローサー

 「レオン」でブレイクし、「スター・ウォーズ」でハリウッドイチオシの若手スターに成長したポートマンは、その勢いのまま名匠マイク・ニコルズ監督作「クローサー」で初めてのオスカー候補に。屈折した大人の恋を描く今作で、ジュリア・ロバーツとジュード・ロウ、クライヴ・オーウェンらと濃厚でバチバチの演技合戦を披露した。助演女優賞は比較的、若手に優しい部門ではあったが、受賞は本命視されていた「アビエイター」のケイト・ブランシェットだった。ハリウッド黄金期を代表する俳優キャサリン・ヘプバーンをそっくりに演じ切った。

・第83回アカデミー賞(2010)主演女優賞受賞ブラック・スワン

 鬼才ダーレン・アロノフスキーの作品「ブラック・スワン」で精神を追い詰められていく劇団のトップバレリーナを演じたポートマン。バレエを実際に踊るというフィジカル面もさることながら、もう誰もたどり着けない怪物的なゾーンへと踏み込んでいく精神面をキリキリみせた。納得のオスカー受賞。おめでとう。

・第89回アカデミー賞(2016)主演女優賞候補:ジャッキー ファーストレディ/最後の使命

 チリ出身のパブロ・ララインが仕掛けるジャクリーン・”ジャッキー”・ケネディ大統領夫人の肖像を描き出す本作。すぐ隣で夫が暗殺されるというトラウマと喪失、哀しみを抱えながらファーストレディとしての残された使命をこなさなくてはならないケネディ夫人を繊細に演じた。ポートマンは特徴的なジャッキーの話し方をマスターし、がらんどうな瞳で、その絶望を語り始める。前哨戦でも存在感があったが、受賞は「ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーンだった。これは厳しい戦いだった。ちなみにポートマンは出産のため授賞式は欠席。


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