第96回アカデミー賞受賞予想第4弾！

現地時間3月10日に迫った第96回アカデミー賞の受賞予想の第4弾。今回は主演男優賞と脚色賞、脚本賞、編集賞です。

主演男優賞
・キリアン・マーフィー「オッペンハイマー」

【ひとこと】今年の初めに行われたゴールデン・グローブ賞で、ドラマ部門の主演男優賞を「オッペンハイマー」のキリアン・マーフィー、ミュージカル/コメディ部門を「ホールドオーバーズ」のポール・ジアマッティが受賞した。前者はオスカー好みの歴史上の人物を肉体的にも精神的にも突き詰めて演じ、3時間にも及ぶ作品のエンジンとなった。後者は長年、「無冠の名優」リストに名を連ねるベテラン。学校中から憎まれる教師をユーモアと哀愁たっぷりに演じて、観る者の心を奪った。ゴールデン・グローブ賞に続きブロードキャスト映画批評家協会賞ではジアマッティが栄光に輝き、無冠の名優返上の盛り上がりを見せたが、続く英国アカデミー賞、重要なアメリカ映画俳優組合賞ではマーフィーが主演男優賞に輝き、一気にマーフィーが本命に躍り出る。「オッペンハイマー」は今や今年のオスカーの大大大本命で、その主演を務めたマーフィーにとっては怖いものなしだ。ジアマッティが無念なことに間違いはないが、一番無念なのは数えて12回目の候補入りなのに、今年も手ぶらで帰りそうなブラッドリー・クーパーなのではないか？

脚色賞
・アメリカン・フィクション

【ひとこと】「バービー」という大舟が脚本賞から脚色賞に渡って来た時、他候補者はぎょっとしたかもしれない。「バービー」は2023年を代表する作品。しかもノミネートの段階で監督のグレタ・ガーウィグが監督賞候補落ちしたことも話題になった。つまり作品成功の立役者である彼女にオスカーをもたらせるのは、この部門しかないからだ。でも今ノリにノッているのは「アメリカン・フィクション」だ。ウィットに富んだセリフが繰り出される社会風刺で観る者を笑いの渦に巻き込むことに成功した。「バービー」全体の勢いが落ち着いた状況で、英国アカデミー賞やUSCスクリプター賞、ブロードキャスト映画批評家協会賞など重要な賞を手堅くとっている。やっぱり勢いをどの時点に持ってくるかって大事だ。

脚本賞
・落下の解剖学

【ひとこと】非英語の作品が脚本賞に輝いた例は、片手で数えられるほどしかない。それでもフランス映画の「落下の解剖学」が強い。監督賞や編集賞にも候補に挙がり、オスカーに愛されているのが分かる。前哨戦では「ホールドオーバーズ」と「パスト ライブス/再会」も存在感をみせたが、ゴールデン・グローブ賞や英国アカデミー賞を受賞した今、「落下の解剖学」がオスカーに最も近い作品だろう。それに監督のジュスティーヌ・トリエが共同脚本を務めているのも、ここ十年ほどの「脚本部門、監督が兼ねていると強い」の流れに乗っている。

編集賞
・オッペンハイマー

【ひとこと】実は作品賞を予想するうえで重要な編集賞。ここも向かうところ敵なしの「オッペンハイマー」が受賞するだろう。編集監督組合賞も獲得済み。編集のジェニファー・レイムは「マリッジ・ストーリー」や「へレディタリー」、「TENET」など近年、目覚ましい活躍をしている。初ノミネート初受賞に期待したい。