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祖母との思い出


お彼岸の時期になると、祖母が作るおはぎを思い出す。

ご近所にもお裾分けをしていたので、何個作っていたのだろう?

豆を洗い、その小豆を大きな鍋の中でゆっくり丁寧に煮て、艶やかで柔らかい餡になるまでの工程や、炊き上がったツヤツヤのご飯を器用に丸めて手早く成形していくのを幼い私は側で眺めているのが好きだった。

確か…すり鉢ですった黒胡麻ときな粉のおはぎも作っていたなぁ。

大きなお皿や重箱を幾つか用意して、出来立てを次々と並べていく。

その日のお昼かおやつ時間に、家族達は熱い緑茶を飲みながら作りたてのおはぎを美味しそうに頬張っていた。
その団欒の様子も目に浮かんでくる。(その頃はあんこが苦手で、おはぎを食べることができなかった私…今、思えばとても残念)

翌日、おはぎをお届けしたご近所の方達が重箱や皿を返しに来て『今年も美味しかったです。ご馳走様でした。』という言葉を祖母に伝えて笑顔で帰っていく。

春と秋のお彼岸で、何度も何度も何年も当たり前のように繰り返していた懐かしい光景だ。

あんこが好きになった今では、和菓子屋さんやデパ地下などで、おはぎを購入して食べることがあり、どれも本当に美味しいと思う。

それでも、祖母の作るおはぎを超えるものはない…と感じてしまうのは、人の手の温もりとそれを食べた人達の笑顔を直接的に感じたせいかもしれない。

故人を偲びながら、私の胸に残る温かい記憶と丁寧な日常の風景を懐かしむ春の彼岸。





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