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やっちゃば一代記 実録(38)大木健二伝

やっちゃばの風雲児 大木健二の伝記
 スーパーマーケット
サンフランシスコ講和条約以降、小売業界ではスーパーマーケットが登場。大量販売、セルフ方式へと大きく転換しつつあった。日本で初のスーパーマーケットは昭和二十八年港区青山に出店した米軍御用達の【紀ノ国屋】である。大木はそこに新時代の匂いを嗅ぎ取ると、米軍の伝手を頼って、いち早く紀ノ国屋に検分に行ったものだ。紀ノ国屋の斬新なディスプレーや豊富な商品群は圧倒的だった。クレソンなどは寝かせて売るのが普通なのに、ここでは直立の状態にしてあった。これだと茎も葉も瑞々しく、獲りたての感じがする。単なる効率化の追求という欧米方式とは一線を画す売り方に、大木は新鮮な感動を覚えた。紀ノ国屋の経営者は【ワシントンハイツ(米軍官舎)】の納入業者で、そこの米国人を通してアメリカのスーパーマーケットを知ると、すぐに紀ノ国屋を興した。軍納家業に見切りをつけ、新しい事業にすぱっと切り替える進取の精神に、大木は心を打たれた。その一方で紀ノ国屋への対抗心もメラメラと燃え上がらせていた。紀ノ国屋は新野菜の品揃えの豊富さでは群を抜いていた。大木はその紀ノ国屋と細々ながら取引を成立させ、西洋野菜に関わる先端の知見を得ることができた。

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