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夢はもっと夢らしくあってほしいものだ

覚醒の一歩手前で見る夢は、実際の出来事や現在自分が置かれている状況に似通った内容であることが多い。

今朝の夢はまさにそんな夢だが現実の延長線上にある夢物語などまったく夢でも何でもない。そう、夢はもっと夢らしくあってほしいものだ。

私はこの日、何か所要があったのか会社の出勤時刻をとうに遅れていた。すでに新入社員研修は始まっており、私の同僚も研修に駆り出され全体進行に追われている。その同僚は慣れない役割を担わされ、かなりテンパっている様子だ。私は到着が遅れたことを同僚に詫び、ホテルのコンベンションホールのような豪奢なシャンデリアの下がる会場で新人職員らの質問に応じ始める。

そこへ、当社のお客様の体調が悪いようだと誰からの報告を受け、会場そばのエレベーターに急行する。するとエレベーターの中には、高齢の男性が倒れており、顔面蒼白し意識があるかもわからない。エレベーターの床に敷き詰められた絨毯は男性の吐しゃ物で汚染されている。赤紫のアラベスク文様を模した絨毯が台無しであった。                

私は、お客様の身を案じることもせず、執拗にこのあとの対応に関するシュミレーションを脳内で重ねていた。当社のお客様である以上、私が会場のマネージャーに絨毯の謝罪をしなければらならいだろう、絨毯のクリーニング代は私が代わって支払うべきだろうか、これは腹を括るしかないな、などと考えている。

すると今度は、私と同期で入ったスタッフの具合が悪いとの誰からの報告を受け、その場を放り出してスタッフがいる病室へ向かう。同期は、固く目をつむり、顔も土気色に変わり果て、ベッドにぐったりと横たわっている。体はベッドの下方にずり下がり、膝を抱えるようにして寝ている。ジッと顔を見ていると、同期は口を開けた。隙間のあいた歯をのぞかせている。土気色の顔と白い歯のコントラストに何故か妙に惹かれ、私は同期の顔をじっと見ていた。

ここで目が醒めた。寝ながらにしてなお仕事をしている自分に声をかける言葉もほとほとない。あまりに現実とリンクし過ぎた夢で朝の5時から気落ちしてしまった。

毎年この時期は、次年度の新入社員の迎え入れの準備で私はあちこち根まわしに奔走している。年1の業務は担当が明確化されていない。そのため誰かがやらなきゃ回らない。目覚めたそばから「あの件、〇〇さんに連絡入れとかなくちゃ」とタスクが浮ぶ。

また、とある案件について背景および見解を私が説明をしなければならない状況となっている。夢の中のエレベーターで倒れたお客様の対応そのまんまである。私がやらなきゃならないと自身を諫めつつも、受容と回避とがせめぎ合い葛藤は一向に解消されることはない。この数日まったくもって気が晴れない。

そして体調不良の同期を見据える場面。これまで仕事で同じような立場にことごとく立たされ、共同戦線を張って来た間柄だとひっそり認識していた。しかし、同期は私を置いて戦線を離脱した。病の床に臥せる同期に小さな憤りと羨望がないまぜになった感情を私は投げつけたかったのかもしれない。

目覚めて夢の内容を反芻していたら、自分がぐっと奥歯を噛みしめていることに気がつく。寝床のなかで、顎の力を抜き、上がっていた両肩をゆっくりと下げた。

私はあれこれ考えているとき、無意識に息をつめてしまうクセがある。呼吸をしたとしても浅い呼吸であることが多い。仰向けになりながら少し息苦しさを胸に感じるあたり、おそらく夢を見ながら歯を噛みしめ呼吸も浅くなっていたのであろう。

そう思うと、私が常日頃から早朝覚醒を起こすのも、実は睡眠中の筋緊張の高さや呼吸の浅さにより、脳内の酸素欠乏が引き起こされるためではないだろうか。酸欠の苦しさから逃れるため身体が覚醒を促すのではないだろうか。

睡眠時無呼吸症候群という疾患は、肥満などが原因で舌根が下がり気道を塞いでしまい、一晩に何度も2~3分ほどの呼吸停止を繰り返す病である。結果、脳への酸素供給が低下し、日中の眠気や集中力の低下のほか、成人病、認知症といった病気のリスクを高めてしまう。

例えばこれと同様に、睡眠中の無意識の過活動状態は交感神経を優位にさせ、筋緊張を高めたり、呼吸を浅くさせる。それにより脳への酸素の供給を低下させ睡眠時無呼吸症候群と同じような事態を招いてしまうということは無いのであろうか。自分の無意識によって寿命が縮まるなんてことが果たしてあるのだろうか。

上記の呼吸状態と早朝覚醒との関連はあくまで私の内的体験からくる仮説というか思い付きに過ぎないので根拠になるようなデータは当然ない。そういえば、以前、歯科医師から睡眠中の噛みしめ行為を改善するためマウスピースの装着を提案されたことがある。そのときは、なんだか気おくれして回答保留にしたが、マウスピースで快眠が得られるなら試してみるのも良いかもしれない…。

まあ、それはともかく、やっぱり夢は夢らしく奇想天外なものであってほしい。ガリバー王国とか空中遊泳とか地球の原始の川に潜む水生生物に戻る夢とか、とにかくそんな夢みたいな夢を思う存分に見ていたいのだ。          


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